冷却された温室(Cooled Conservatories, Gardens by the Bay)

「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイの冷却された温室」のご紹介

 

世界でも最大規模の植物園が南国の海沿いに作られています。広大な敷地は3つのエリアに分けられていて、それぞれのテーマに沿った様々な展示やアトラクションが楽しめるようになっています。国立公園でもある「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」の中で最も広いベイ・サウス・ガーデンには、ギネスブックにも掲載されている温室があります。「冷却された温室」を訪れる人は、その場所に魅了されずにはいられない、驚きの空間を体験することが出来ます。

「冷却された温室」の設計者

 

「冷却された温室」を手掛けたのはイギリスのロンドンに本拠地を置く「ウィルキンソンエア」と言う建築事務所です。クリス・ウィルキンソンとジム・エアの二人の建築家が共同で運営していた会社です。クリス・ウィルキンソン(クリストファー・ジョン・ウィルキンソン)は1945年にイギリス南部の街で生まれました。中等教育の頃に芸術と絵を書くことに惹かれるようになりました。ロンドンの大学で建築を学び、1970年に卒業した後、十数年間は幾人かのイギリスの著名な建築家の元で働いていました。1983年に彼は独立して自らの建築事務所、クリス・ウィルキンソン・アーキテクツを設立しました。4年後にジム・エアと共に事務所の運営を行うようになって、1999年に会社の名称を「ウィルキンソンエア」に変更しました。ジム・エアは、オックスフォード大学のボドリアン図書館が授けるボドリーメダルを建築家としては初めて授与されています。17世紀半ばに、図書館を建設するために貢献したトーマス・ボドリー卿を称えてメダルが作られましたが、一端休止していました。約400年間の休止の後、再開されましたが、2019年までにわずか27名しか授与されていない名誉ある賞です。また、彼らは共に大英帝国勲章も授けられています。ロンドンと香港、シドニーにオフィスを構え、多くのスタッフを抱える「ウィルキンソンエア」ですが、創設者のクリス・ウィルキンソンは2021年の暮に76歳で亡くなっています。

「冷却された温室」の所在地

 

シンガポール共和国は一つの都市が国を構成する都市国家です。マレーシアが大部分を占めるマレー半島の先にあるシンガポール島と60以上の小さな島々が国を形作っている島国でもあります。「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」は、シンガポール島の南側に作られた広大な埋め立て地に建設されています。この国には地方自治体が無く、5つの社会開発協議会がその役割を務めています。「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」がある埋め立て地は、中央社会開発協議会が担当する地区です。この国は面積の割に人口が多く、人口密度は世界でも上位に入るほど多くなっています。古くからアジアとヨーロッパを結ぶ交通の要所となっていた事から、交易で栄えていました。現在も海運や航空の中継点となってヨーロッパやオーストラリアとアジアを結ぶ重要な地点となっています。多民族国家でもあることから、公用語は英語ですが、中国語を始めこの地域の様々な言語が使える為に、交通の要所と言う点も含めて世界の多くの大企業が重要な拠点を置いています。このような事から、国民総生産や国民総所得が世界でもトップクラスとなっています。近年では観光業にも力を注いでいますが、カジノなどのリゾートだけでなく、植物園や動物園、水族館など環境保全なども視野に入れた開発が行われています。


 

「冷却された温室」の特徴

 

「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」の3つのエリアのうち、敷地の約半分の広さがあるベイ・サウス・ガーデンは、東京ディズニーランドと同じくらいの面積があり、「冷却された温室」と呼ばれる大きな2つのガラスの温室があります。この温室は、平面図で見ると扇のような形になっていて、陸側が要の位置になり、海側に広がっています。要の方が低く、海側の方は地上高の最高地点は58mあります。立体的な形はハマグリのような二枚貝の形に似ています。鋼鉄製の骨組みに格子状の外郭が取り付けられて、この骨組みがガラスを吊り上げているような構造になっています。1本の柱も無い自律型のガラスドームは、透明で巨大な2つの二枚貝が並んでいるような印象があります。熱帯のこの地域は陽射しが強いので、太陽の動きに合わせたコンピュータ制御の日よけシェードが取り付けられています。このシェードは切り紙細工のような美しい形をしています。2つある温室の内、低い方は地中海地方の気候に合わせられています。高い方の温室は、熱帯や亜熱帯地域にある湿度が高く、霧の発生率が高い森の雲霧林(うんむりん)を再現しています。こちらの温室には30mの高さがある滝が作られていて、その高さから流れ落ちる水は圧巻です。この滝を取り巻くように遊歩道が取り付けられていて、高い位置から温室内の俯瞰を眺めることが出来ます。20,000㎡の広さがあるこの温室は、世界一大きなガラスの温室として2015年にギネスブックに記載されています。

「冷却された温室」のまとめ

 

ベイ・サウス・ガーデンには「冷却された温室」の外に、「スーパーツリー」と呼ばれる巨大樹を模した構造物がいくつか建っていて、ウィルキンソン・エアと同じ、イギリスの建築事務所が手掛けています。他の2つのエリアは未完の部分もありますが、近い将来に完成する「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」は、シンガポールの新しい観光拠点となるのではないでしょうか。

 

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