バリン スキーリゾート(Barin Ski Resort)

「バリン スキーリゾート」のご紹介

 

世界には多くのリゾート地があります。そのほとんどは非日常を味わうことのできる場所ではないでしょうか。日頃の喧噪を忘れてゆったりとした時間を過ごすことが出来る所や、ワクワクした活動的な体験ができる場所、趣味を満喫できる所などリゾートの種類は様々です。しかし、どのようなリゾート地でも必ずと言ってよいほどその場所に応じた宿泊施設が建設されています。中東のスキーリゾートに建てられているホテルは、風景に溶けこむような建物です。

「バリン スキーリゾート」の設計者

 

「バリン スキーリゾート」のデザインと設計を手掛けたのは、イランの首都テヘランに事務所を構えるRYRAスタジオ(ライラスタジオ)です。2000年に開設されたこの建築事務所は、アッバス・リアヒ・ファードとファリナズ・ラザビ・ニクーの共同経営です。アッバス・リアヒ・ファードは1978年にテヘランで生まれ、テヘランのイスラム・アザド大学で建築を学び、2010年に博士号を取得して卒業しています。ファリナズ・ラザビ・ニクーは1981年に同じくテヘランで生まれました。彼女も同じ大学で建築を学び、2007年に卒業しています。彼らの作り出す建築物は白い物が多いのですが、形のイメージは様々です。外観は建設される場所の地域性を重視しています。地域の伝統や周りの風景との調和などを大事にしたうえで、様々な要求を解決に導く方策を考えています。最新の素材を利用しながら、その地域で古来より使用されている材料も使うような建築方法をとっています。屋内は周りの自然環境に合わせたデザインで、独特な雰囲気を醸し出す空間が作り出されています。設立してまだ日が浅い事務所ですが、すでに世界のあちらこちらで高い評価を受けている作品もあり、いくつかの賞も受賞しています。

「バリン スキーリゾート」の所在地

 

「バリン スキーリゾート」は、イラン・イスラム共和国の首都テヘランから北東に約60kmの位置にあるシェムシャクと言う村に建設されています。標高が2,500mから3,000mの高地で、大都市に近いことから、20世紀の中頃からスキーリゾートとして開発が始まり、20世紀が終わりに差し掛かる頃には国際的な競技も行えるようなコースも作られました。このスキー場がある山は、イランの北部を横断するアルボルズ山脈の一部です。アルボルズと言う名称は、イランの主な宗教であるゾロアスター教の聖なる山に因んだ名前です。全長が600kmにも及ぶこの山脈には国の最高峰であるダマヴァンド山もあります。ダマヴァンド山は標高が5,600m以上あり、アジアで最も高い火山です。この地域は宗教的に重要な場所ですが、豊かな自然が残された所でもあり、いくつかの国立公園や自然保護区があります。比較的乾燥した気候なので、大規模な森林などはありませんが、ヒノキ科の植物であるジュニパー(セイヨウネズ)などの低木を主体とした独特の植生が広がっています。ヒョウや狼などの肉食獣やタカやワシなどの猛禽類が多く生息していることは、動物相も豊かだと言う証になっています。また、この地域では数千年前の遺跡がいくつか発見されていて、紀元前から複数の集落があったことがわかっています。


 

「バリン スキーリゾート」の特徴

 

「バリン スキーリゾート」は、正に雪山そのものの様な外観をした建物です。2011年に完成した地上10階のホテルで、67ある客室は全て形や広さが違います。元々は普通の四角い建物になる予定だったのですが、設計を担当したRYRAスタジオの二人は周りの風景との調和が取れていないことを理由に手を加えました。その結果、まるで四角い建物が吹き付ける雪に埋もれたような外観になりました。外壁はランダムに湾曲した形で屋外彫刻のような雰囲気があります。各部屋の室内は、北極圏に住む先住民の移動式住居である「イグルー」を参考にした形となっていて、曲線を多用した設計になっています。「イグルー」は、雪を固めてブロック状にしたものを螺旋を描くように積み上げて半球型にした狩猟用の仮住居で「スノーハウス」とも呼ばれています。天然の洞窟を思わせるような半円を描く室内で、天井に繋がる柱も上に行くにしたがってゆるやかなカーブを描くようになっています。窓の形も川の流れや海の波に洗われた小石と形容される事もある、不規則な楕円の様になっていて、洞窟の奥から外をうかがうような印象があります。建物の内も外も白く、各部屋だけでなく階段や廊下も湾曲した部分がふんだんに取り入れられて、不思議な空間が演出されています。

「バリン スキーリゾート」のまとめ

 

設計者の理念の一つにある、建設する建物を建築場所の周りの風景を模倣するようなデザインにしている「バリン スキーリゾート」は、スキーシーズンになると雪をかぶった山の斜面と一体化したように見えます。夏場の山が緑になる季節では、逆に存在感のある建物となっています。いずれの季節でも、良く晴れた青空の下で見る「バリン スキーリゾート」は非日常を演出できる素晴らしい建物と言えるのではないでしょうか。

 

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