KMYF透析センター(KMYF Health Clinic)

「KMYF透析センター」のご紹介

 

古い歴史のある都市には長い年月をかけて育まれた文化が息づいています。芸術や文学、食や娯楽など多岐に渡り、その中には宗教も含まれています。インドの南部に建設された医療関係の施設は、地元に密着した寺院の向かいに建設されています。「KMYF透析センター」は、寺院の神々を象った美しさを損なわないように配慮された、別の美しさを漂わせる白い建物です。

「KMYF透析センター」の設計者

 

「KMYF透析センター」はインド南部の都市ベンガルールに拠点を置く「ケイデンス アーキテクツ」が手掛けました。「ケイデンス アーキテクツ」は、2005年に3人のインドの建築家によって共同で開設された、住宅や公共の施設などを手掛ける事務所です。共同創設者のナレンドラ・ピルガルとヴィクラム・ラジャセカールはベンガルールの大学で建築を学び、スマラン・マレシェはアメリカの大学で建築を学び、現在は地元の建築学校で教鞭も取っています。彼らは学生だった頃に知合い、古い伝統や文化を大事にしつつ、国際的な展望と最新の技術や考えを取り入れることが大事だと感じていました。反面、建築に対し「決まり文句に疑問を投げかけ、新たな体験や効果を生み出せる」とも考えていて、古い文化や風土、歴史などを大事にしながらも、因習にとらわれない見方をしています。また、彼らは建築を通し、喜びや楽しさなどの感情豊かな空間を創造することを目指しています。その建物を使う人の心理も設計やデザインをする上で考慮する重要な点としています。開設当初から注目を浴び、様々な賞も受賞しているこの事務所は、現在30名の建築家や技師、デザイナーと共に大小の企画を通して地域の発展に貢献しています。

左からヴィクラム・ラジャセカール、ナレンドラ・ピルガル、スマラン・マレシェ

「KMYF透析センター」の所在地

 

「KMYF透析センター」は、インド共和国南部の中心的な都市であるベンガルールの中心部に近い所に建設されています。この地域はインド亜大陸の南部に広がるデカン高原の一部で、街は1,000m近い標高があります。デカン高原は、6,000万年以上前の地球活動によって形成された巨大な玄武岩で構成された比較的平らな台地です。日本よりはるか南に位置する低緯度の地域ですが、標高が高いために気候は1年を通して温暖ではありますが、非常な高温になることは稀です。最も暑いのは、乾季の終わりに差し掛かる頃の3月から4月で、平均的な最高気温でも35℃を大きく上回ることはありません。年間の最低気温も乾季に現れますが、15℃を下回ることはほとんどありません。8月から10月にかけて雨季になり、季節風のモンスーンによって雨が降っています。しかし、近隣に大きな川が無いので、16世紀に街が建設された時には、都市に必要な水を確保する為に多くの貯水池が作られました。現在はそれらの貯水池と共に、カルナータカ州の高地を源流とするカヴェリ川からの取水によって都市の水を賄っています。それでも乾季になると毎年水不足が起こっています。市内にある多くの貯水池の中には、周囲が整備されて市民に涼と憩いの場を提供する公園になっている所もあります。

 

「KMYF透析センター」の特徴

 

風にそよぐ真っ白なカーテンを想起させるような建物が「KMYF透析センター」です。この建物を建設するにあたってはいくつかの制約がありました。1つは敷地がとても狭いことです。建設用地は街の中心部に近い所で、「KMYF透析センター」を作るための敷地はシングルのテニスコートほどしかありませんでした。その為に、30床は必要とされていた建物は縦に細長くするしかありませんでした。2つ目は、敷地の正面にはこの地区にあるヒンズー教の寺院があることで、設計者は、この寺院に敬意を表した外観にすることを考えました。医療施設であることから、建物の外側も内側も白い色が使用されていますが、この施設を利用する人の心理と、向かいにある寺院の神聖さを損なわないように配慮した外観が優しい雰囲気を作り出しています。加えて、白い外壁は太陽熱を反射して室内温度が上がりすぎないようにもなっています。また、大胆でありながら柔らかい印象は、この建物の役割が寺院と同じくらい神聖であると考えられているからです。外観のデザインはその為だけでなく、強い日差しが直接屋内に入らないように、それぞれの襞の間に細い隙間のような採光窓が作られています。建物の基本はコンクリートで、ドレープのような外観は白い漆喰で仕上げられ、2階以上を覆っているので、建物が浮いているような印象も与えています。床などは近隣で採石されている花崗岩やコタと呼ばれる安価な石灰岩が使用されています。

 

「KMYF透析センター」のまとめ

 

KMYFは1980年に結成された「カルナータカ・マルワリ青年連盟」の略で、地域の貧困層の人々の支援や、災害時の救援など様々な専門知識を持つ人や志のある多くの人が会員となっているNPOです。「KMYF透析センター」は、透析を受ける必要のある貧困層の人の為に開設されました。このような目的と潤沢ではない資金で建設されているので、建設費用も抑える必要がありました。「KMYF透析センター」は、いくつもの課題を抱えていましたが、見事に解決できた建物と言えるのではないでしょうか。

 

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