ボルウォニンゲン

「Bolwoningen (ボルウォニンゲン)」のご紹介

 実験的な建築物は時間を経ても古さを感じさせないものがあります。オランダの街に建つ50軒の家々は完成から約40年が経過しようとしていますが、今でも斬新な住宅です。そこに住む人々もこの家が気に入っているようなので、実験は成功と言ってもよいのではないでしょうか。「Bolwoningen」は、異惑星に建っているような雰囲気のある住宅です。

「Bolwoningen」の設計者

「Bolwoningen」のプロジェクトを考案し設計したのは、オランダ人のドリス・クレインカンプです。彼は多才な人で、建築家であり芸術家、彫刻家、工業デザイナーでもあります。加えて音楽の才能も持ち合わせていました。1937年にオランダの南部にあるセルトーヘンボスで生まれ、いくつかの学校で美術を学びました。1964年には19世紀に操業を開始したガラス工房で水晶玉のような球形のガラス作品を作成していましたが、その時に球形は一番自然な形だという事に気づきました。更に彼は、白い色は全ての色を秘めていて一番自然な色だと言っていました。そのことから、球形の住宅を考案したようです。球形の住宅を最初に試作したのは、木材とアルミを素材としてデンマークに建てられましたが、現存はしていません。その後、オランダ王国を構成しているカリブ海に浮かぶキュラソーと言う島で彫刻家を目指す人々の指導にあたっていました。彼の指導を受けた彫刻家の中には大きな才能を花開かせた人もいます。3年間キュラソーに滞在した後、故郷に帰り、複数の学校で美術を教えていましたが、数年後に「Bolwoningen」の為に会社を立ち上げました。多岐にわたる才能を持っていた彼は、2014年に故郷の街で77年の生涯を終えています。

「Bolwoningen」の所在地

オランダ王国の南部に位置する北ブラバント州の州都であるセルトーヘンボスに「Bolwoningen」が建ち並んでいます。街の正式名称はセルトーヘンボスですが、一般的には古くから使用されている名称のデン・ボス(または、デン・ボッシュ)と呼ばれる事が多いようです。街の愛称は「マーシュドラゴン(沼ドラゴン)」と言いますが、中世ヨーロッパで起こった戦いに要因があります。16世紀から17世紀にかけて戦われた80年戦争で、重要な要塞だったこの街は周囲を湿地帯に囲まれていたことから難攻不落の要塞都市として名を挙げていました。12世紀頃にはすでに大きな街として発展していて、交易の要所となっていました。その為、いくつかの権力に支配され、首都としての役割を果たしたこともあります。また、カトリック教会の拠点となり、荘厳な教会がいくつも建てられたことで、塑像や彫刻などの芸術も花開き芸術の都としての一面もあります。このような歴史があることで、街の周りにめぐらされた市壁の外に建築物を建てることは19世紀の終わり頃まで禁止されていました。1880年に壁が取り壊されてからは建築も進みましたが、現在でも近代的な建物は街の中心部には建てることが許可されていません。


「Bolwoningen」の特徴

「Bolwoningen」は、テン・ボスの球形住宅と言う事務的な呼び方がされる事もありますが、電球の家やボールハウスまたは、地球型の家など、その形状に合わせ様々な呼び名もあります。円筒の上に球を乗せた形で、船舶に見られるような丸い窓が取り付けられています。実験的な住宅建設のために、自治体から助成金を受けて1984年に完成した50軒の住宅群です。運河に沿った敷地にランダムに建てられた白い「Bolwoningen」は、遠くから見ると、森の小さな精霊が寄り集まっているようなイメージがあります。近くで見るとどこかの星の住人のようで、いずれにしても設計者の言う「球形は有機的で一番自然な形」を実現している、ある種の生き物のように見える建物です。最初は球をポリエステルで作りたかったようですが、消防の規則で許可が下りず、最終的にグラスファイバーをコンクリートで固めた球を使用しています。しかし、コンクリートが滑らかにできなかったことから、年月と共に手入れを怠った家は、風雨による汚れが目立ってきています。基本的に2部構成で、円筒状の基礎部に出入口が作られ、収納スペースと電気や上下水道の配管の元が設置されています。そこから中心部に作られた、らせん状の階段で上の階に移動できるようになっていて、通常の建物の3階分の高さがあります。最上階はキッチンやリビングがあり、かなりの高さがあるので、窓から360度の街の景色を眺めることが出来ます。あまり広い家ではないので、単身かカップルなどのコンパクトファミリー向けとなっています。

「Bolwoningen」のまとめ

歴史のある街に実験とは言え、このように変わった建物が作られたことは周囲の住民に賛否が巻き起こったのは仕方のないことです。しかし、完成後40年が過ぎようとする現在でも、この家に住み続けている人もいれば、新たに入居したいと考える人もいます。オランダには、「Bolwoningen」の対極とも言えるキューブ状の住宅がロッテルダムに作られていますが、その住宅も実験的な建設でした。年月が経ってもそれぞれの家を高く評価する人がいるという事は、「Bolwoningen」の建設は功を奏したと言っても過言ではないでしょう。