ラ・セーヌ・ミュージカル(La Seine Musicale)

「ラ・セーヌ・ミュージカル」のご紹介

 

地球上のどこにいても音楽はあります。多様な旋律やリズムは古来より人々の心に響いてきました。音楽を聴く場所も多岐に渡っています。近年では音響設備もどんどん良くなり、ホールを納める建物は個性の光る物がたくさんあります。「ラ・セーヌ・ミュージカル」は、大都市に流れる川を下る船に似た近未来的な外観の音楽ホールです。

「ラ・セーヌ・ミュージカル」の設計者

 

「ラ・セーヌ・ミュージカル」の設計、デザインを手掛けたのは、フランスと日本の2人の建築家です。ジャン・ド・ガスティーヌは、1957年にヨーロッパとジブラルタル海峡を挟んだ対岸のモロッコ最大の都市、カサブランカで生まれたフランス人です。彼は、フランスの大学で経済学と歴史を学んだ後、国立の美術学校に入学して映画を学んだ後に建築を学びました。アメリカの著名な建築家、フランクゲーリーのオフィスで経験を積んでから、フランスの建築士の資格を取得して建築家として本格的に活動を始めました。1985年に自らの建築事務所を開設しています。2003年からは、板 茂のヨーロッパオフィスと協力していくつかのプロジェクトを遂行しています。日本人の板 茂(ばん しげる)は1957年東京生まれです。小学生の頃からラグビーを始め、高校時代には全国大会で花園ラグビー場にも出場していて、現在でもラガーマンのような雰囲気を漂わせています。中学時代にはすでに建築家を目指していて、高校を卒業後に単身アメリカへ渡り、最終的には憧れの学校で建築を学ぶことが出来ました。彼の建築家としての活動には特筆する点があります。1995年に起こった震災をきっかけに快適に暮らせる仮設住宅を考案し、建築で被災者を助けるためのボランティア組織を作ったことです。この運動は世界中に広がりを見せ、現在でも様々な災害に対して活動しています。

「ラ・セーヌ・ミュージカル」の所在地

 

「ラ・セーヌ・ミュージカル」はフランス共和国を流れるセーヌ川に浮かぶセガン島に建設されています。セーヌ川には多くの島があり、セガン島は首都パリの南西およそ10kmの近郊にあります。20世紀の初頭から60年以上は、島のほとんどがフランスの自動車メーカー「ルノー」の自動車製造工場でした。20世紀の終わり頃に工場の操業が終了して、21世紀に入ってすぐに、工場の建物は解体されて再開発される事になりました。この島は長い間、修道院の所有で希望する人に農作地として貸し出されていました。17世紀に当時の国王ルイ14世がベルサイユ宮殿を建設してからこの島は、首都であるパリの中心地からベルサイユ宮殿までの中間地であったことから、急に脚光を浴びるようになりました。ルイ15世の治世になると国王は娘たちの為にこの島を購入し、貴族たちが集う「マダムの島」となりました。フランス革命の前に売却されましたが、その後は様々な所有者の手を渡っていました。18世紀の末にこの島の名前の元となった科学者で起業家が島に革のなめし工場を建設し、産業地帯となりました。また、島の一部は当時の洗濯業の本拠地でもありました。このように産業地となっていて島ですが、一角には釣りやクレー射撃場などの娯楽施設も作られていました。再開発の計画は芸術や文化の為に整備することになり、フランスの著名な都市計画家で建築家のジャン・ヌーヴェルが先頭に立って行われるようになりました。

 

「ラ・セーヌ・ミュージカル」の特徴

 

「ラ・セーヌ・ミュージカル」は、セガン島の約三分の一の広さがあり、下流側の端まで続く島の形に添った細長い三角形のような形です。船のような形と形容される事がありますが、この建物の一番の特徴であるドーム型のコンサートホールは船の船首部分と言える場所にあります。球体を上から押さえて少し潰したような楕円のドームは、アメリカの建築家が考案した測地線ドーム(ジオテックドーム)のような形になっています。測地線ドームは、三角形を基本とした多角形を組み合わせて球体に近づけるようにつくられていて、以前稼働していた富士山レーダーに似ています。綺麗な球体に近づける上に強度も高い建造物となっています。このドームが他と違う所は、基本の構造が木材で組まれていることです。屋内側から見ると、まるで巨大な日本建築のような雰囲気があります。太い木枠にガラスが張り付けられていて、外からは多面にカットされた宝石のようにも見えます。もう1つの特徴は、ドームを覆うように設置されている太陽光パネルで、まるでベールの様にドームの周りを回ります。ドームの南側におよそ90mのレールが取り付けられていて、毎分5mの速さで太陽を追いかけます。ドームの中には6,000人を収容できるホールがあります。その他の様々な施設が入る建物は、船の船体部分に当たる所に入っています。その建物の屋上は広い庭園になっていて、建物の横にある大きな階段から上がれるようになっていて、遊歩道も作られています。

「ラ・セーヌ・ミュージカル」のまとめ

 

2017年に完成した「ラ・セーヌ・ミュージカル」は、セーヌ川に浮かぶバナナの形に似た島に建設されています。現在も再開発の途中ですが、すでに市民の憩いの場も提供してます。今後も芸術や文化の振興のための開発が続き、スポーツ施設も建設される予定です。

 

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