人々の集会のドーム(Peoples Meeting Dome)

「人々の集会のドーム」のご紹介

 

ヨーロッパ北部の国々に囲まれたバルト海には、属する国の大部分から遠く離れた場所に浮かんでいる島があります。2012年に重大な会議がその島で開催されることが決まった時に、多くの人が一堂に会する場所がなかったことから、一時的なテントや仮設の建物ではなく、その会議の議題に沿った建物が作られました。人々が十分に議論できる場所の提供と、持続可能な建築を表現し、尚且つ美しい外観も持つ建物が「人々の集会のドーム」です。

「人々の集会のドーム」の設計者

 

「人々の集会のドーム」を手掛けたのは、デンマークのコペンハーゲンを拠点として活動しているクリストファー・テイルガードと、芸術家であり哲学者、探検家など多くの職業を自身が語り、しかも、そのどれでもないとも言っているベニー・ジェプセンです。クリストファー・テイルガードは1979年生まれのデンマーク人で、王立の芸術学校で建築を学びました。大学を卒業して建設会社に就職して建築家としての経験を積み、2011年にコペンハーゲンに「アトリエ・クリストファー・テイルガード」を開設しました。彼の建築に対する考えに影響を与えたのは、学生時代に「ジオデシックドーム(測地線ドーム)」と言う幾何学を活用したドームの概念を発表したバックミンスター・フラーの考えに触れたことでした。加えて、バックミンスター・フラーは、現在ではよく耳にする持続可能性を模索していた事も、彼の建築理念に関わっています。また、建築に関わる建設や保守、使用は、二酸化炭素の排出量が非常に多いことが懸念材料の1つであることも唱えています。そのとこから彼は建築資材に木材を使っています。コンクリートや鉄骨などは地球の資源で、増やすことは出来ません。しかし、木材は育てることが出来、再利用も可能であると考えていて、彼の作品には様々な木材の加工品も使われています。

「人々の集会のドーム」の所在地

 

デンマーク王国の飛び地とも言える島が、バルト海南部に浮かぶボーンホルム島です。淡路島より少し小さいこの島の北部にあるアリンゲの町に「人々の集会のドーム」が建設されています。この島はデンマークの首都地域圏に加えられていますが、首都のあるシェラン島から東におよそ150km離れています。「バルト海の宝石」や「岩の島」とも呼ばれている島で、20近い町や村があり、4万人に満たない人々が暮らしています。島の周囲はポーランドやスウェーデン、ドイツに囲まれ、それらの国と航路で結ばれています。17世紀にわずかの間スウェーデン領になった歴史がありますが、紀元前から島に人が住んでいた痕跡があり、バイキングの時代には王がいて一つの国を形作っていました。島にあるほとんどの町や集落は海沿いに点在していて、「人々の集会のドーム」が建つアリンゲは、島で5番目に人口の多い町です。この町の周辺には花崗岩の露頭があり、以前は花崗岩の採石が盛んに行われていました。ここで採石された花崗岩は、首都コペンハーゲンの中心部に立つお城にも使われています。また、青銅器時代のものと思われる、船や人などが刻まれた岩壁があります。マドセバッケ岩石彫刻は国内でも最大規模であることも含めて、20世紀になって保護の対象にされました。

 

「人々の集会のドーム」の特徴

 

2012年に完成した「人々の集会のドーム」は、木材とガラスで出来た半円のドームのような形をした建物です。20世紀の半ばにアメリカの発明家が考案した、測地線ドーム(ジオデシックドーム)が基本の形になっています。測地線ドームは、20世紀末まで富士山の山頂に設置されていた富士山気象レーダーの形です。球体の任意の点を繋ぎ合わせ、直線を使って球体を表す方法で、三角形が多用されて多角形を構成しています。この形は柱が無いので、小さい建物でも大きな空間を作り出すことができると設計者は考えていて、その通りの建物が出来上がっています。また、このような単純な作りでも非常に頑丈な建物になることも証明されています。「人々の集会のドーム」は、その測地線ドームを1つの基本の大きさから均等に拡大した部分を繋ぎ合わせたような形になっています。ドームが部分的に大きくなっていくような動的な印象を与えています。骨組みや床には地元の島で育った松材が使われ、外壁には再利用の木板が使用されました。三角形に組まれた骨組みを互いに止める金具は、通常より分厚いものが使用されています。これは、海からの強い風によってドームが浮き上がらないようにするためで、金具の重さは全部で18tにもなります。外壁の一部は樹脂ガラスが使われ、日中の屋内に明るさを提供しています。

「人々の集会のドーム」のまとめ

 

一時的な建物として使われることが想定されていたので、廃材になる予定だった板が使われましたが、「人々の集会のドーム」は2023年現在も島の海岸のそばに建っています。ドームの東側には扇形に広がっているウッドデッキも設置されていて、地域住民の憩いの場になっています。巨大な二枚貝のようでもある「人々の集会のドーム」は、持続可能な建築物でもあり、この島の別名のように真珠のような宝を内包しているようにも見える建物です。

 

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