オーデマ・ピゲ美術館(Musée Atelier Audemars Piguet)

「オーデマ・ピゲ美術館」のご紹介

スイスには世界的にも有名な高級腕時計のメーカーがいくつもあります。オーデマ・ピゲもその一つで、社名は創業者2名の名前を繋ぎ合わせたものです。機械仕掛けの小さな部品がたくさん組み合わされて作り上げる時計は、その構造だけでも芸術品と言えます。「オーデマ・ピゲ美術館」は、機械仕掛けの時計には無くてはならない部品の一つ、ゼンマイを模した形の建物です。

「オーデマ・ピゲ美術館」の設計者

「オーデマ・ピゲ美術館」を手掛けたのは、デンマーク人のビャルケ・インゲルスです。彼は、エンジニアの父と歯科医の母の元に1975年デンマーク王国の首都コペンハーゲンで生まれました。幼いころから絵を書くことが好きだった彼は、10代の頃に漫画家になりたいと考えていたようです。その様な将来の希望があったことから、王立の美術学校に通うようになりましたが、2年ほど経った頃に建築に興味を持つようになり、別の学校に転校しました。スペインの工科大学で建築を学んだ彼は、卒業後オランダの高名な建築家の元で3年間実務を経験し、その事務所の同僚だったベルギー人と共同で最初の建築事務所をデンマークに開設しました。POLTと言うその事務所は、当時コペンハーゲンで開発が盛んだった地区に大型の集合住宅を2カ所手掛けたことがきっかけで、大きく名前が知られるようになりました。しかし、事務所開設から4年後の2005年に解散しています。その後、彼の名を冠したビャルケ・インゲルス・グループ通称「BIG」を開設して今に至ります。現在はコペンハーゲンとニューヨークを拠点として、ロンドンやバルセロナにも事務所を構え、数百人のスタッフと共に世界中で活躍しています。

「オーデマ・ピゲ美術館」の所在地

「オーデマ・ピゲ美術館」はスイス連邦の西、フランス国境のすぐそばにあるル・シュニと言う町に建てられています。アルプス山脈の西の端に位置するジュラ山脈の南端にあるジュー渓谷にあり、カルスト地形のポリエと呼ばれる広い平坦な窪地になっている所です。多くの国際機関が事務所を置いているジュネーブの北、約40㎞で、ジュラ山脈の周辺に設定されているジュラ・ヴォドワ自然公園に接しています。ジュネーブはスイス時計の発祥の地とも言われていて、周辺の小さな町には中世の頃から多くの時計職人が工房を開いていました。現在もこの地域には、いくつもの時計メーカーが本社を置いています。この地で時計の製造が盛んになった理由は、歴史と自然環境が大きな要因となっています。16世紀頃のヨーロッパでは宗教改革が各地で行われ、フランスから逃げ延びてきた小型の時計造りの技術を持っていた人々と、当時のスイスで贅沢品が禁じられたことによって、職を失いかけた金銀細工の職人が手を組んだ事が始まりでした。加えて、小さな部品を多く使うことから、ホコリが入り込まない清浄な空気がこの地域にはありました。また、部品を洗浄するための綺麗な水は、カルスト地形のこの地域にはふんだんにありました。このような条件が整ったことで、この地域で時計の製造が盛んになったようです。

「オーデマ・ピゲ美術館」の特徴

2020年に完成した、機械仕掛けの時計をそのまま表しているような建物が「オーデマ・ピゲ美術館」です。複雑な迷路の中心部だけを切り取ったようで、上から見ると渦巻のような屋根が特徴的ですが、意外と複雑な構造になっています。時計のゼンマイに見立てた形で、平らな屋根には芝生が植えてあります。周囲は全てガラスで、本来の意味での壁と柱は設置されていません。屋内も全てガラスが壁の代わりをしていて、一番外側からでも中心部を見ることはできます。ガラスの外側には、真鍮製の網が上から半分ほど、すだれのように下げられています。これは、太陽光をある程度遮る事と、室温の調整をする役割を持っています。半分ほど地面に埋もれているようにも見えますが、土地の傾斜にそって建物の床が傾斜している為で、建物全体がゆるい螺旋を描く形になっています。訪問客は、中心部に向かってゆるやかに下り、そこから逆にゆるやかに登って出口に向かうようになっていて、時計の中にいるような感覚に陥るようです。床が傾斜しているので、屋根も穏やかな傾斜があって、横から見る冬の雪が積もった「オーデマ・ピゲ美術館」はクルクルと舞う白いリボンのようです。隣に建つ、復元された古いオーデマ・ピゲの作業所から「オーデマ・ピゲ美術館」に入館できるようになっていますが、古く威厳も見られる建物と優しい形状の「オーデマ・ピゲ美術館」は素晴らしい対比を描き出しています。

「オーデマ・ピゲ美術館」のまとめ

1875年にジュール・ルイス・オーデマとエドワード・オーギュスト・ピゲが創設した時計工房がオーデマ・ピゲです。「オーデマ・ピゲ美術館」の中心には、「ユニバーセル」と呼ばれるオーデマ・ピゲで一番複雑な時計がガラスの球の中に展示されています。その周りには、機械時計の重要な機能の内3つ以上を搭載している「グランドコンプリケーション」と言う時計が8個展示されていて、ユニバーセルを太陽に見立てた太陽系を模しているようです。古代の人々が、太陽や星の動きで時間を計っていた史実を表すように展示されています。

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