国際バロック博物館(Museo Internacional del Barroco)

「国際バロック博物館」のご紹介

 

ヨーロッパから大洋を越えて新しい大陸を発見したのが、大航海時代です。その大陸に植民し、次々に町が建設されていた頃に花開いたバロック文化は、様々な分野に広がっていきました。その作品や資料を納めるために建設された「国際バロック博物館」は、そこに展示されている様々なバロック文化を表している品々とは対照的なシンプルな美しさのある建物です。

「国際バロック博物館」の設計者

 

「国際バロック博物館」のデザインと設計を担当したのは東京に事務所を構える伊東豊雄(いとう とよお)です。1941年に現在のソウルで生まれ、間もなく母親と共に日本へ帰りました。父親が仕事の関係で日本と当時の朝鮮を行き来していた事から、生まれたのはソウルでしたが、彼が生まれた後に様々な情勢が不安定になってきた事を憂慮した父親が、早めに日本に返したということです。日本に帰ってからは父親の故郷である長野県の諏訪湖の畔で育ちました。比較的恵まれた環境で幼少期と少年期を過ごし、成績も優秀であったことから東京の高校に進学し、大学へと進みました。彼は子供のころから建築家になりたいと思っていたわけではなく、消去法で建築の勉強を始めたと言うことですが、次第に建築に対して面白味を見出すようになってきたそうです。大学時代に短期間ではありましたが、福岡出身の建築家の元でアルバイトをしたことが更に建築に対する興味を大きくしたようです。大学を卒業してすぐにその建築家の元で働くようになり、大きな企画にも参加していました。30歳の時に独立して自らの事務所を開設しましたが、当初は仕事の依頼が少なかったようです。正に大器晩成と言える彼が、初めて大きな企画を依頼されたのは50歳になった頃でしたが、それからは世界に名を馳せるようになるまでに長い時間は掛かりませんでした。そして、世界的に権威のある建築家に授けられる様々な賞も受賞しています。

「国際バロック博物館」の所在地

 

「国際バロック博物館」はメキシコ合衆国の南部にある都市、プエブラに建設されました。街の正式名称はエロイカ プエブラ デ サラゴサと言い、プエブラ州の州都です。首都のメキシコシティから南東に約120kmに位置し、「天使の町」とも呼ばれています。伝説によると、後にこの地域に赴任した司教が2人の天使が現れて、町を建設する場所に案内したという趣旨の夢を見たと伝えられています。この街はメキシコ南部を横断する火山帯の一部にあり、プエブラ・トスカラ渓谷の中にあります。周囲を活発な火山に囲まれている渓谷で、プエブラに1番近い火山は街の西側、約40kmにあるポポカテペトル山です。この山の名前は、先住民族の古い言葉で、煙を意味するポポカと山を表すテペトルを組み合わせた名称です。国で2番目に標高が高い山で、現在も活発な火山活動が確認されていて、近年でも大きな噴火が起きています。街にも降灰などの被害がありますが、とても美しい山体をしていることから日系や日本の人からは「メキシコ富士」とも呼ばれています。メキシコにスペインからの植民が始まった当初に作られた街なので、古い建築物が多く残されています。17世紀に建てられた大聖堂などが街の中心部にあり、歴史地区としてユネスコの世界遺産に登録されています。

 

「国際バロック博物館」の特徴

 

2016年に開館した「国際バロック博物館」は、白いカーテンが風に翻るような、シンプルではありますが優美な印象のある建物です。色合いと装飾の少ない簡素な見た目のために小さく見えますが、通常の建物で6階から7階建ての高さがあります。周囲を柔らかな白い紙か布で囲んだように見える、四角いブロックを繋げたような平面になっています。建物の中央部分には中庭のような空間があり、アメーバのような不定形に見える浅い水盤と渦を巻く噴水が作られています。建物の周囲にも池があって、まるで水の中から浮かび上がってきたような印象を与えています。外壁も内壁も白いコンクリートで作られ、屋内の空間もほとんどが白い色で統一されていて、中に納められている美術品などの作品と対をなすようになっています。壁は細長いコンクリートの板を繋ぎ合わせたようになっていて、各部屋を作るためにパズルのように組み合わせてあります。フロアは1階と中2階、2階で、1部には吹き抜けの部分も作られています。一見すると窓のような開口部は見えませんが、2階部分の高い位置に横に細長く見える窓が作られています。そこから差し込む日の光が、時間と共に屋内の空間に光が作り出す影が白い壁に様々な模様を描いています。

 

「国際バロック博物館」のまとめ

 

設計者は、この建物が大地から生えてきたようなイメージを持つようにデザインしています。幼いころに生活していた場所は自然が豊かだったことから、彼の作り出す作品は自然と融合したような建物になっています。「国際バロック博物館」は周囲を水に囲まれていて、水面に移る姿もこの建物の一部になっていて、建物の内側も太陽光が作り出す影の模様で彩られています。「国際バロック博物館」は、バロックの概念と自然を混ぜ合わせ、その中に埋め込まれていると言える建物と言えるでしょう。

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