モンテレイ大学RGSセンター(University of Monterrey Roberto Garza Sada Center)

「モンテレイ大学RGSセンター」のご紹介

 

ある物の一面だけを見るのではなく、様々な方向から見ると表面だけではわからない事柄が見つかることはよくあります。単純に見えても、実はとても複雑であったり、逆の場合があったりします。メキシコの大学に作られた建て物はモダニズム建築に見られるシンプルな形をしていますが、複雑な幾何学模様を生み出している部分もあります。「モンテレイ大学RGSセンター」は「創造の門」とも呼ばれ、簡素な美しさを持つ建物です。

「モンテレイ大学RGSセンター」の設計者

 

「モンテレイ大学RGSセンター」の設計、デザインを担当したのは、大阪で生まれた建築家の安藤忠雄です。 1941年に双子の兄として生まれ、幼いころに母親の実家を継ぐために母方の祖父母の養子として安藤の姓を名乗ることになりました。経済的に恵まれていなかったことから、建築の専門的な教育は受けていません。しかし、努力の人である彼は、わずか1年の独学で建築士の資格を取得しています。若いころに様々な仕事で得た資金を元に世界中の多くの国を訪れ、見聞を広めました。その旅行の時にモダニズムの巨匠たちの作品に触れた事が、その後の彼の建築に大きな影響を与えています。帰国した後の1969年に自らの建築事務所「安藤忠雄建築研究所」を開設しています。活動を始めたころは個人宅などの小規模の仕事が主でしたが、次第に評価され、公共の施設や企業の依頼をうけるようになってきました。規模の大小に関わらず、彼の生み出す建築はシンプルな美しさがあります。モダニズム建築の特徴であるコンクリートを使用した建物が多く、コンクリートは誰でも手に入れることができる素材だけど、その普通の素材を使って自分にしか出来ない空間を作りたいと考えているようです。建築家としての初期はあまり評価されませんでしたが、建築家に授けられる世界中の様々な賞を受賞し、最終学歴が高等学校の彼が東京大学で後進のために教鞭もとっていました。

「モンテレイ大学RGSセンター」の所在地

 

「モンテレイ大学RGSセンター」は、北米大陸の南部に位置するメキシコ合衆国にあるモンテレイ(モンテレー)市に建設されています。この街はメキシコの北東部にあり、アメリカとの国境に近い場所で、首都のメキシコシティに次ぐ、国で2番目に大きな都市です。比較的乾燥した気候で気温も高く、冬季でも1日の平均気温が10℃前後あります。降水量は少なく、年間の雨量は日本の梅雨時期の平均を少し上回る程度です。メキシコには太古より栄えていた文明がありますが、この地域にも多くの先住民が住んでいました。16世紀にスペインからの植民が始まって間もなく、この地に町が建設されましたが、先住民との間に幾度も争いがありました。19世紀の初めに独立を求めてスペインとの間に戦争が始まって、この街も激戦地の1つになりました。独立を勝ち取った後に、アメリカとの国境が近いことから、鉄道による貿易の拠点となって発展してきましたが、近年では観光に力を入れるようになっています。人気の観光場所としては、建物が立ち並ぶ街の中に小高い丘があり、街が一望できる頂上にはアメリカとの壮絶な戦いを記念した国で1番大きな国旗が掲揚されています。街の周囲には自然も多く、国立公園やユネスコの生物圏保護区に指定された地区もあります。

 

「モンテレイ大学RGSセンター」の特徴

 

2012年に完成した「モンテレイ大学RGSセンター」は、巨大な四角い建物に見えます。単純でシンプルに見える外観ですが、とても複雑な部分を内包している建物です。設計者が得意とする打ち放しコンクリートの建物で、灰色の四角いブロックに見えます。直方体のブロックの対角線で切り取ったような形を、反対側は向きを逆にして組み合わせ、建物の下部に三角の隙間ができるように作られています。この隙間に建物の下を通れる通路があり、出入口も作られてます。斜めに切り取られた下の部分にはギザギザになるような装飾が施されていて、光のあたり具合で様々な模様を生み出しています。建物そのものは巨大に見えますが、中央部分には開口部があり中空になっていて、短い方の壁にも大きく開けられた部分が作られ、明るさと換気を提供しています。長い方の壁には細長い窓がありますが、この窓があるためにシンプルさが強調されているようにも感じます。屋内には円形の階段状に作られたホールが2つあって、この建物の中にある数少ない曲線を見ることができます。下層階は床面が狭く、三角になっている部分もありますが、上層階は非常に広くなっています。単純な四角い建物ではないために階層が複雑に混じりあっているところもあります。屋内の壁や天井の素材もコンクリートがほとんどですが、一部には床に花崗岩などの自然素材も使用されています。

 

「モンテレイ大学RGSセンター」のまとめ

 

「モンテレイ大学RGSセンター」のRGSは、モンテレイの実業家であり慈善家でもあったロベルト・ガルサ・サダの頭文字をとったもので、この大学の設立に経済的に尽力した人物です。芝生と樹木が植えられている、まるで街の中の公園のような敷地に建つ「モンテレイ大学RGSセンター」は、かなり大きな建物でありながら、簡素な形であまり威圧感を感じません。下部の三角形の開口部は「創造の門」と設計者は言っているようですが、学生たちにとっては未来へ続く門とも言えるのではないでしょうか。

 

 

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