エッツィ峰 3251m 展望台(Ötzi Peak3251m)

「エッツィ峰 3251m 展望台」のご紹介

 

およそ1万年前に終わったと言われる氷期の名残りを見せている山々には、多くの人を魅了させる風景が広がっています。人類の祖先が暮らしていた渓谷を見下ろす山の頂きに建設された「エッツィ峰 3251m 展望台」は、年月と共に景色に溶け込むように配慮された建築物です。

「エッツィ峰 3251m 展望台」の設計者

 

「エッツィ峰 3251m 展望台」を手掛けたのは、イタリア北部の街ボルツァーノに拠点を置く「ノア・ネットワーク オブ アーキテクチャ」です。この建築事務所は、2人のイタリア人建築家が2010年に開設した比較的新しい事務所です。1977年に生まれたルーカス・ルンガーは、オーストリア南部のグラーツで建築を学び、ベルギーのブリュッセルで更に研究を重ねました。もう1人は、1979年に生まれたステファン・リエルです。彼はイタリア国内でインテリアデザインを学んだ後に建築を学んでいます。彼らは、それぞれ大学を卒業してからの10年間は、イタリアやドイツなどヨーロッパは元よりアメリカの建築事務所でも働き、実務経験を積んできました。イタリアの建築家、マッテオ・トゥーンのミラノの事務所で彼らは出会い、故郷の南チロルへ戻って建築とデザインの会社を立ち上げました。この事務所は、建築だけでなく、造園や家具のデザインなどのインテリアも手掛けていて、「創発(そうはつ)」と言う概念で建築全般に向き合っています。「創発」とは簡単に説明すると、1つ1つの物事が合わさった時に相互作用によって、全体に思いもよらない特性が現れたり、大きな成果を上げたりすることです。また、彼らの育ってきた環境や土地柄も根底にあって、伝統的な工法や意匠を取り入れた上で、新しい形を作り出しています。現在はボルツァーノを拠点として、ミラノとドイツのベルリンにオフィスを構えています。

「エッツィ峰 3251m 展望台」の所在地

 

東アルプスの一角には、イタリア共和国とオーストリア共和国にまたがるチロル地方と言われる地域があります。イタリアのボルツァーノ自治県はその地方でも南部に当たる為、南チロルと呼ばれる事もあります。ボルツァーノ自治県はオーストリアとスイスに国境を接していて、アルプス山脈に由来する多くの川や渓谷があります。「エッツィ峰 3251m 展望台」は、それらの渓谷を見下ろす山の頂に建設されています。この地域の地名は川や渓谷に同じ名称がつけられていることが多く、展望台が建つ場所はセナーレスと言う小さな村の近郊です。セナーレスとは、古い言葉で「農場」を意味していて、小さな複数の農場と、14世紀に建てられた修道院があります。この地域にはセナーレス氷河以外にも、いくつかの氷河があり、その中のエッツィ氷河で1991年に発見されたミイラは世界を驚かせるものでした。ドイツからの登山者が見つけた当初は、遭難した人の遺体ではないかとの見方が大半でした。しかし、ミイラの近辺には見慣れない道具がいくつも見つかって、詳しく調べた結果、5,000年以上も前の物だったことがわかりました。発見当初はオーストリア国内と思われていましたが、詳しい測量をしたところ、国境から100m弱イタリアに入った所だとわかりました。現在、「エッツィ(または、エッツィ・ジ・アイスマン)」と名づけられたこのミイラは、ボルツァーノの考古学博物館に収蔵されています。

 

「エッツィ峰 3251m 展望台」の特徴

 

「エッツィ峰 3251m 展望台」は、標高3,000m以上の高地に建設されている鉄骨製の展望台です。骨組みには、コルテン鋼と言う気候変化に強い鉄骨が使われています。コルテン鋼は耐候性鋼と呼ばれる建材で、あらかじめ特殊な錆を浮かせ、風雨によってそれ以上劣化しにくくなるように加工されています。劣化を防ぐ事ももちろんですが、設計者は年月と共に周囲の風景に溶け込むことも想定して、この鋼材を使っています。最初は赤味を帯びた褐色ですが、経年によって次第に濃い灰色から最終的には黒い色になると予想されています。それによって、この展望台は山々の1部と化すと設計者は言っています。床は、そら豆を少し丸くしたような変形の楕円で、金網のような素材で作られています。床部分は半分以上が頂から突き出るようになっているので、空中を歩いているような感覚になります。また、1部に箱状の構造物が設置されていて、四角い箱から出るとアルプスの絶景を見ることが出来る、透明なガラスが柵の代わりをしている場所が作られています。周囲の柵は、たくさんの細長い鋼板が並行に並べられていて、その隙間からも景色が見られるようになっていて、訪問者が歩く速度でスライドショーのように、周囲の風景が現れては見えなくなっていくような印象を持たせています。

「エッツィ峰 3251m 展望台」のまとめ

 

展望台のすぐ下にあるホテルから、展望台と同じ鋼材の階段と遊歩道が取り付けられています。訪問者はそこを歩いて山頂に到達し、眼下に広がる風景を存分に堪能することが出来ます。ここからは、エッツィ・アイスマンが発見された氷河も見られます。標高3,000m以上の高地に建造物を作ることは様々な困難もありますが、このような場所があるからこそ、長い時間をかけて出来上がった自然の驚異を存分に味わうことが出来ます。設計者が思い描いた様に「エッツィ峰 3251m 展望台」は、いずれこの山々と一体化するのではないでしょうか。

 

 

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