ボスコ・ヴェルティカーレ(Bosco Verticale)

「ボスコ・ヴェルティカーレ」のご紹介

大都市の真ん中に高くそびえる森があったら誰しもが驚くのではないでしょうか。「ボスコ・ヴェルティカーレ」が建っているイタリアの言葉で、ボスコは樹を、ヴェルティカーレは垂直を表しています。日本語で「垂直の森」と訳される高層の集合住宅は、再開発された街に建設されました。

「ボスコ・ヴェルティカーレ」の設計者

「ボスコ・ヴェルティカーレ」を手掛けたステファノ・ボエリは、自身の思いをこの建物に全て注いでいると言っても過言ではないでしょう。1956年にミラノで生を受け、ミラノ工科大学で建築を学び、都市と自然と人の暮らしをいかに融合させるかを常に考えている建築家であり都市計画家です。2009年にステファノ・ボエリアルキテッティを開設して、ミラノとペルシャ湾に突き出た半島の国カタールの首都ドーハ、上海の3カ所にオフィスを構えています。彼は大学を卒業後、事務所を開くまでは、多岐にわたる活躍をしていました。例えば、建築に関する複合的で大規模な催し物の芸術監督や、複数の美術館でキュレーターと呼ばれる学芸員のような(学芸員は有資格職です)仕事をしていました。彼は環境問題に大きな関心を示していて、いかにして自然環境に負担を掛けない都市整備や建築が行えるかも研究しています。その成果を広く知らしめる為に、様々な大学で教鞭を取っています。このような研究は1人では出来ません。その為彼は、世界中の建築家や芸術家、経済の専門家などを巻き込んで、生物の多様性と、地球上のすべての生物の活動が永続的に活動できるように考える持続可能な都市計画を推し進めています。

「ボスコ・ヴェルティカーレ」の所在地

イタリア共和国の北部に位置するミラノは、国内で最大の都市圏を構成する地域の中心的な街です。ミラノの歴史は古く、紀元前6世紀にはこの地に町としての機能を持つ集落がありました。内陸ではありますが、広い平原と豊かな川のある所なので早くから人々が住み、栄えてきました。街の名前のミラノは「平原の真ん中」と言う意味があって、ローマ時代にもこの意味の名前が使われていました。古来より栄えている街は様々な権力者に支配され、幾たびも戦火に巻き込まれてきました。第二次世界大戦後にイタリアが現在の共和国制になってからは、ミラノは政治的に安定しました。戦後、街の再建が行われ、急速に発展してきた過程で、この街はファッションだけでなく、様々な分野の先進的なスタイルの発信地となってきました。「ボスコ・ヴェルティカーレ」が建っている地域はミラノでも経済的に豊かな地域ととなっていますが、20世紀の後半までは廃業した工場などが立ち並ぶ荒れた地域でした。ポルタヌォーヴァはミラノの経済地区として再開発が行われ、十数年かけて新しい街に生まれ変わりました。この時に自然環境との調和も念頭に入れた開発が行われ、新しい高層オフィスビルなどと共に広い緑化公園も整備されました。


 

「ボスコ・ヴェルティカーレ」の特徴

 

「ボスコ・ヴェルティカーレ」は2014年に完成した高層ビルです。その名の通り、植物に覆われたこのビルはそびえ立つ森のように見えます。敷地内に建つ2棟は集合住宅で、1棟はオフィスビルになっていて、オフィスビルには植物は植えてありません。112mで27階と80mで18階のビルには400戸の住宅が入っています。集合住宅と言っても、設計者によれば植物が主体となった建築物となっているようです。大小合わせて800本以上の樹木と15,000種以上の多年生植物や、地被植物(ちひしょくぶつ)と言う地面や壁面を被うように広がる草や低木が建物全体に植えられています。この建物は7年の歳月をかけて作られていますが、建物の規模の割に建設期間が長かったのは、植物の生長を待っていたためでした。植えられる植物が選ばれた後は、植えらる場所と条件を似せた特別な植物園のような所で希望の大きさになるまで育てられました。オリンピックやワールドカップで使用される公式のサッカー場4つ分の広さの森に相当する樹々や下生えの草が、その10分の1の広さの土地の面積で育っています。植物に必要な水は、ビルの排水をろ過したものが使われています。バルコニーのような場所に植えられた植物のメンテナンスは、特別なチームによって行われていて、屋上からクライミングしながら伸びすぎた枝などが剪定されています。

「ボスコ・ヴェルティカーレ」のまとめ

環境に負担を掛けない建物を作り出そうとしていたステファノ・ボエリが、このようなビルを作る時に発想を得た本があります。それは、イタリアの作家が書いた、木の上で一生を過ごすと決めた少年の物語を書いた小説です。「ボスコ・ヴェルティカーレ」に住むことは高層ではありますが、森の中で暮らす事ではないでしょうか。また、ここには多種の樹々が植えられているので、紅葉する木もあり、季節によって様々な色合いに変化する姿も見られます。ステファノ・ボエリは、ミラノに建つ「ボスコ・ヴェルティカーレ」を始点として、現在進行形のプロジェクトも合わせて世界中で「垂直の森」を作っています。

 

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