プラセンシアの講堂と会議場(Conference Centre and Auditorium in Plasencia)

「プラセンシアの講堂と会議場」のご紹介

 

現代は環境に悪影響を与えるとして、プラスチック製品に対して悪い感情を持つ人が多く存在しています。一般的にプラスチックと呼ばれる合成樹脂は、発明されてから100年ほどの素材ですが、現在でも次々と新しいものが開発されています。新素材と言われる多くの化学物質は、適正に扱えば環境に対する負荷の少ない素材となります。「プラセンシアの講堂と会議場(Plasencia Auditorium & Congress Centre)」は正に新素材の塊と言える未来的な外観の建造物です。

「プラセンシアの講堂と会議場」の設計者

 

「プラセンシアの講堂と会議場」の設計を担当したのは、スペインの建築事務所「セルガスカーノ」です。ホセ・セルガスとルシア・カーノの二人が経営する事務所で、スペインの首都マドリードの郊外に社屋があります。彼らは共に1965年マドリードで生まれ、同じくマドリードの工科大学で建築を学びました。大学を卒業後しばらくはそれぞれで活動していましたが、1998年に共同で建築事務所を開設しました。彼らの建築物に対するいくつかの理念は、近代に於いて考えさせられる事柄があります。特に挙げられる事の一つは、建築を作る時に使用される材料に新しく作り出されたものを積極的に使うことです。合成樹脂はその中の一つで、価格が安く安定していて、何より重量が少ないことが利点と彼らは言っています。それらの素材はエネルギー効率もよく、適切に扱えば再生することも可能で多様なアイディアに答えることが出来ます。また、彼らの作り出す建物は非常にカラフルなものが多く、漫画や広告などに使われているような斬新な色使いがなされています。特に明るい色使いが多く、その建物を利用する人の視覚を刺激して、活性化する効果があるとされています。

「プラセンシアの講堂と会議場」の所在地

 

スペイン王国の西部、エストレマドゥーラ州カセレス県に属するプラセンシアと言う街に「プラセンシアの講堂と会議場」が建てられています。隣国ポルトガルの国境まで約70kmに位置する内陸の街です。12世紀に要塞都市として築かれた街で、現在も多くの城壁が残されています。それ以前も、シルバールート(ルタデラプラタ)と呼ばれる古代の交易や巡礼の為の道沿いで、都市としての機能はありませんでしたが人々が暮らしていた痕跡が見つかっています。街が作られてからすぐに開催されるようになった「火曜市場」は、現在も毎週火曜日に街の中心部にあるマヨール広場で開かれていて、800年以上の歴史を持っています。プラセンシアは山に囲まれた盆地のようになっていて、街を出るとすぐに豊富な自然に囲まれます。街の南東およそ20kmには、広大なモンフラグエ国立自然公園があります。モンフラグエとは「密な山」と言う意味があり、多種多様な生物が生息しています。大型の動物はいませんが、絶滅が心配されているイベリア山猫やカワウソ、マングースなど中型や小型の肉食動物が暮らしています。また、黒ハゲタカや数種のワシなど猛禽類も多数生息していて、1988年に欧州連合の各国で定めた、鳥類の為の特別保護区であるZEPAと宣言されています。

 

「プラセンシアの講堂と会議場」の特徴

 

「プラセンシアの講堂と会議場」は、形容しがたい形をした建造物です。半透明の角ばったシャボン玉のようでもあり、海洋生物のようにも見え、何かの巣の様でもあります。壁と表現するのは少し違うようですが、建物全体がETFEと言う新素材で覆われています。ETFEとはフッ素樹脂の一つで、フッ素系プラスチックとも呼ばれています。水を通さないので対候性があり、薄くても強度が高く、弾力があるのでキズが付きにくいなどの長所があります。複雑に組まれた鉄製のパイプが骨組みを形成していて、それに沿ってETFEが張り巡らされています。建設場所の土地を最小限にするために、建物の三分の一の付近の高さから土台のコンクリート部分より大きく張り出しているのも特徴の一つです。そばの道路から少し下った場所に基礎部分があるので、出入り口は建物の最下部から17mも上にあり、建物全体の高さの中央より少し上の部分に作られています。道から鮮やかなオレンジ色の斜路を通って、建物内部に入ることが出来るようになっています。屋内は、セルガスカーノの特徴と言える鮮やかな色使いがなされていて、黄色や鮮やかなオレンジの壁や通路があります。また、建物全体が二重にラッピングされたような構造になっていて、一番外側と建物本体と言える内部との間にはいくつもの通路が設置されています。その通路から内部に入る扉は、透明の大きな丸い形をしていて、公共の建物ですが豊かな色どりと相まってかわいい雰囲気のある建物となっています。

「プラセンシアの講堂と会議場」のまとめ

 

「プラセンシアの講堂と会議場」の設計者の二人は、この建物は自然と街の境界に建っていると言っています。建物の東側からはプラセンシアの街を見ることが出来、西側からは穏やかな山並みを望むことが出来ます。建物は半透明なので、天気や時間によって様々な姿を見せてくれます。夕陽に照らされて朱く燃えるように見えたり、曇り空の下では建物全体が透けて見えたり、夜間では屋内の照明が巨大なカンテラのように見えます。2017年に完成した「プラセンシアの講堂と会議場」は、遠くの高速道路からも見えるこの街の新しいランドマークとなっています。

 

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