マクナマラ・アルムニセンター(McNamara Alumni Center)

「マクナマラ・アルムニセンター」のご紹介

 

アメリカ合衆国の北部ミネソタ州立ミネソタ大学は大変長い歴史があります。その間には多くの卒業生を送り出してきました。その卒業生達が寄付をして建設にこぎつけたのが「マクナマラ・アルムニセンター」です。アルムニとは同窓生を意味する英語で、センターの名称は卒業生の一人で、「マクナマラ・アルムニセンター」建設のために多額の寄付をした元フットボール選手のリチャード(ピンキー)マクナマラの名前が付けられています。

「マクナマラ・アルムニセンター」の設計者

 

「マクナマラ・アルムニセンター」のデザインと設計を依頼されたのは、1936年にアメリカ中西部のミズーリ州で生まれたアントワン・プレドックです。母親は教師をしていましたが、父親は技術者で彼も大学に進学した時には工学を専攻していました。しかし、1年ほど学んだ頃に自分には向いていないと判断して、建築の勉強を始めました。進路の方向転換は両親に反対されたようですが、彼にとっては最高の選択だったようです。大学に進学するためにニューメキシコへ行った彼はこの地に魅了され、「生まれたのがミズーリだっただけで、精神の故郷はニューメキシコだ」と後に言っています。彼は世界的にも名声の高い建築家ですが、とても庶民的な所もあります。自身でチョコレート中毒と言うくらいチョコレートが好きで、子供の頃にはアレルギーがあるからと言う理由で食べさせてもらえなかったのですが、現在の言い訳は「カカオには抗酸化作用があるから体に良い」という事らしいです。また、若いころからオートバイに乗ることが好きで、高齢と言われるようになった現在でもバイクに乗る事が楽しいと言っています。バイクに乗ることは彼の建築に対する考え方に大きな影響を与えています。自動車に乗るのとは違って、体で風や風景や走っている土地を感じることが出来るからです。「建築は乗り物だ。物理的な乗り物であり精神の乗り物だ」と言うのは彼の名言の一つです。

「マクナマラ・アルムニセンター」の所在地

 

アメリカ合衆国北部のカナダと国境を接するミネソタ州最大の都市がミネアポリスです。「マクナマラ・アルムニセンター」は、ミネソタ大学のツインシティーズキャンパスに建てられています。ツインシティーズとは、ミネアポリスと隣接する州都のセントポールを一緒にして呼ばれる名称で、ミネソタの大都市圏を構成している中心的な地域です。ミネアポリスもアメリカの他の都市と同様に17世紀頃に植民が始まりました。カナダと同じくこの地域にはフランスからの入植者がやってきましたが、この地には先住民のダコタ族が住んでいました。五大湖の近くで、ミシシッピ川が街の中心部を流れています。また、20以上に及ぶ大小の湖があり、このような地理的特徴があったので、街が建設された時にダコタ族の言葉で水を表す「ミネア」とギリシア語の都市と言う意味の「ポリス」を合わせた名称が付けられました。この街はミシシッピ川唯一の滝があったことで発展してきました。滝を利用した発電が早くから行われ、その電力を利用した産業が大きく成長しました。近隣の森から伐採された木を木材にする製材業と小麦粉の生産が主な産業でした。特に小麦粉の生産量は半世紀にわたって世界一を誇っていました。また、水力発電は、19世紀の終わり頃から20世紀の初めにかけて世界で最大の発電所でした。


 

「マクナマラ・アルムニセンター」の特徴

 

「マクナマラ・アルムニセンター」は、ミネソタ大学の施設として2000年に完成しました。大学のオフィスなどが入るセンタービルと、その隣には「ジオード」と呼ばれるホールが作られています。7階建てのオフィスビルは通常の四角い建物ではなく、北東側から南西側に向かって高くなるように作られています。従って最上階の床面積は1階よりかなり狭くなっています。この建物はコンクリートで作られていますが、外壁は銅板で覆われています。その為、年月が経つと緑青が発生して味のある外観に成長しています。天井高が26mあるメモリアルホールは、ミネアポリス近郊で採石されているピンク系の花崗岩(御影石)で覆われたドーム型の建物です。500本の鋼の柱で支えられた、17種類の様々な多角形を繋ぎ合わせてドーム型に作られています。繋ぎ合わせた所は隙間が作られていて採光窓の役割を果たしていますが、一部の面はガラス窓になっています。ホールには会議室などに利用される部屋も作られていて、ホールの1面は壁になっています。この壁はセンターと同じく銅板で覆われ、意識的に不規則な凸凹が形作られ、出窓のようになっています。その他の内壁はベイツガと言う針葉樹で作られた木材が使用されています。外から見るホールは、薄い赤茶でガラスが入っている所が青く見えるので、川と湖をイメージしたと言っている設計者の意図したとおりの外観となっています。

「マクナマラ・アルムニセンター」のまとめ

 

「マクナマラ・アルムニセンター」は、ミネソタの自然を強く意識して作られ、多くの寄付によって完成にこぎつけた建物です。数十年も前から多くの卒業生が望んできた建物、特にホールは様々な目的で使われています。例えば各種パーティやイベント、結婚式も執り行われています。ホールの愛称である「ジオード」とは岩石の中にある空洞の事で、たいていの場合はその中に水晶やカルサイトなど様々な結晶鉱物が密集して形成されています。多くの卒業生が切望していた「マクナマラ・アルムニセンター」は、キラキラとした鉱物を内包している晶洞と似た意味があるのではないでしょうか。

 

余談ですが、「マクナマラ・アルムニセンター」の空調設備は日本の企業が関わっています。その設備を導入したことで、電力消費が大変少なくなっているとのとこです。

 

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