角川武蔵野ミュージアム(Kadokawa Culture Museum)

「角川武蔵野ミュージアム」のご紹介

 

小さな布を繋ぎ合わせて模様を描くパッチワークや、細かな木切れを組み合わせて作る寄木細工など、ちいさな部分を寄せ集めて大きな作品を作り上げる手法は洋の東西を問わず古くから伝えられています。関東の街に建設された博物館は、山から切り出された石材を組み合わせて巨大な岩に作り変えたと言える建物です。「角川武蔵野ミュージアム」は、石板が巨岩に生まれ変わった石で覆われた建物です。

「角川武蔵野ミュージアム」の設計者

 

横浜出身の建築家、隈 研吾(くま けんご)が「角川武蔵野ミュージアム」を手掛けました。横浜市の大倉山にあった医師だった母方の祖父が週末を過ごすための、いわゆる別荘に使っていた古い木造の家で1954年に生まれました。彼が建築家を志したきっかけは、家庭環境にあったようです。企業に勤める父親と当時は当たり前だった専業主婦の母親、妹が1人の4人家族で、小さな古い木造の家で育った彼は、その家がみすぼらしいと感じていました。しかし、家の増築や改築をするときには、日頃は厳しい父親を中心に家族で話し合いをして進めていました。また、父親が建築やデザインに対して大きな関心を持っていたことも、彼が建築家になった要因の1つです。少年時代に父親に連れられ、新しく完成した様々な建物を見物し、その中で子供だった彼が一番気に入った建物が、東京オリンピックの為に作られた代々木の競技場でした。次に彼の建築家としての根幹となったのは、東京大学の大学院生だった時に旅した西アフリカです。サハラ砂漠に点在する集落での人々の家々や暮らしを目にして、本当の意味で自然と共に生きている人々がいることを知りました。その旅で得たものは彼の作品の随所に現れています。

「角川武蔵野ミュージアム」の所在地

 

日本のクールな魅力を海外に広く発信しようとする企画が2010年に国の対外政策の一つに取り上げられ、推進されてきたのが「クールジャパン構想」です。その企画に沿って自治体と企業が合同で運営されているのが、「ところざわサクラタウン」です。埼玉県所沢市に建設されたその複合施設の中の1つが「角川武蔵野ミュージアム」です。所沢市は東京都との県境に接する場所にあり、都心から北西におよそ30kmと近い為に都心のベッドタウンとなっている街です。関東平野を構成する武蔵野台地の北部に位置し、台地が形成される時に唯一残った狭山丘陵が南部に広がっています。1934年に東京の水瓶として建設された山口貯水池は、狭山丘陵から流れ出る川を堰き止めて作られていて、周囲は様々な樹木が植えられ、県立の自然公園になっています。この街にはいくつかの事柄の発祥の地になっています。20世紀の初頭に日本で初めての飛行場が建設されていて、航空史の始まりの地と謳われていて、所沢航空記念公園の中に「所沢航空発祥記念館」が建設されています。また、第二次世界大戦の直前に現在の保健所の役割を果たす施設が東京と所沢の2個所に設置されたことから、保健所発祥の地とも言われています。最近では、「ところざわサクラタウン」が完成した時に日本で初めての光るマンホールの蓋が最寄駅からの道しるべのように歩道に設置されました。

 

「角川武蔵野ミュージアム」の特徴

 

巨人が無造作に置いた巨大な岩のような構造物が「角川武蔵野ミュージアム」です。高さが約30mある建物ですが、通常の窓は1つも無いので、遠目では建物の大きさの見当がつきにくくなっています。建物自体はコンクリートで作られていて、外壁を覆っているのが中国の山東省で採石されている花崗岩です。この石材は、花崗岩としては珍しい大理石のような流れ模様や、縞模様のある無彩色の石で、厚さが7cmで基本的には一辺が70cmと50cmの板状になっています。1枚の平均的な重さは約60kgで、2万枚の石板が使用されています。総重量が1,200トンもあるため、その重量を支えることができるようにコンクリートで建物が作られました。外観は、直線的なデザインで、60以上の様々な三角形を組み合わせて作られているので、使用されている石板の中には三角形や台形のものも含まれています。随所に隙間ができるように組み合わされている事から、この形を作り上げるのは、まるで立体パズルを完成させるようです。建物を覆う石材は、自然にある石のようにゴツゴツしたような表面に仕上げられているので、岩の風情を一層高めています。外観のデコボコした岩の印象とは対照的に、屋内は木材がふんだんに使われています。多様な方法で展示されているたくさんの本は、木で作られた本棚に並んでいて、椅子や机などの調度品も木製のものが設置されています。最大で8mもの高さがある本棚もあり、岩の洞窟の中が木で出来ているような不思議な雰囲気を醸し出しています。使用された木材の一部は、地元の埼玉県産のヒノキが使用されています。

 

 

「角川武蔵野ミュージアム」のまとめ

 

木材建築で有名な隈研吾ですが、「角川武蔵野ミュージアム」の他にも石材を使った作品があります。それは栃木県で産出する芦野石の博物館です。その建築物で彼は、2001年にイタリアの建築家が監修して不定期で選ばれていた国際石材建築賞を受賞しています。「角川武蔵野ミュージアム」の隣には木材建築の神社が建立されていますが、その神社も隈研吾の作品です。「角川武蔵野ミュージアム」がこの形になったのは、地質学的なこの地の成り立ちを表しているそうで、不思議な形の建物ですが、そこに建っているのが自然な建物と言えるのではないでしょうか。

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