マタン・パビリオン(MATAO PAVILION)

「マタン・パビリオン」のご紹介

 

もてなす気持ちは方法は違っても世界中の人が持っているのはないでしょうか。それぞれの国や地域で作法や習慣が違うので、多様なもてなし方があるでしょう。メキシコの大農園には、訪れた人をもてなすために作られた「マタン・パビリオン」があります。

「マタン・パビリオン」の設計者

 

「マタン・パビリオン」の建設を手掛けたのはメキシコ人のリカルド・レゴレッタ(リカルド・レゴレッタ・ヴィルチス)です。1931年にメキシコの首都メキシコシティで生まれました。銀行家だった父親は、建築に興味を持った息子が17歳で設計技師としてメキシコの建築事務所で働き始めた時に、畑違いの道に進むことを快く思っていなかったようです。しかし、彼は最終的にその事務所で責任の重い仕事に付くようになりました。その後、30歳を過ぎた頃に二人のビジネスパートナーと共に建築事務所「レゴレッタ・アーキテクト」を開きましたが、30代の半ばに差し掛かった頃、重い内蔵の病気にかかってしまいました。その頃に、後の彼の人生を大きく変えた仕事が舞い込んできました。メキシコでオリンピックが開催されることになり、海外からの来客を迎える為のホテル建設が彼の名前を世界中に広め結果となりました。そのホテルは鮮やかな色彩と幾何学的な形を駆使した、メキシコを象徴するような素晴らしい建物で、以降の彼の作品を象徴しています。健康に不安を抱えながら仕上げた作品は、半世紀以上に渡った彼の建築家人生を成功に導いたようでした。彼には6人の子どもがいますが、一番彼に反抗的だった末の息子だけが建築家になりました。メキシコ人の建築家で初めて受賞したいくつかの名誉ある賞や、スペインの勲章も授けられた彼は、2011年に80歳で人生の幕を下ろしています。

「マタン・パビリオン」の所在地

 

「マタン・パビリオン」は、ブラジル連邦共和国の南部に位置するサンパウロ州に属するマタンと言う自治体にあります。サンパウロ州は明治時代に多くの日本人が移民した地域です。現在でも日系人の多い地区で、友好都市や姉妹都市を締結している日本の自治体もたくさんあります。州都のサンパウロは国内第一の都市であり、南半球で最大級の都市です。また、世界規模でも十指に数えられています。マタンは州の中ほどにある内陸の街で、周辺にはブラジル国内で多く栽培されているコーヒーやオレンジに代表される柑橘類などの果樹が栽培されています。また、日常生活でなにかと便利な輪ゴムや、使い捨て手袋の原料となるラテックス(ゴムの木の樹液)を得るためのゴムの木も多く栽培されています。19世紀の終わりに入植が始まり、最初はコーヒーの栽培が行わていた小さな集落でした。入植後数年で近くのアララクアラと言う街に併合されました。アララクアラは非常に気温の高い地域で「太陽の住処」と言う別名が付けられています。マタンは現在、独立した一つの自治体となっています。

 

「マタン・パビリオン」の特徴

 

東京都の目黒区の面積とほぼ同じくらいの広さがある、ハシエンダ・マタンのゲストハウスとして2013年に建てられたのが「マタン・パビリオン」です。ハシエンダとは、スペイン語やポルトガル語で、大規模な農場やその母屋などを示す単語です。湖のそばに建てられていて、横から見ると細長い三角形の細い部分を中心として互い違いに組み合わせたような形になっています。そのうちの半分は水の中に入っているようになっていて、パーゴラと呼ばれる陽射しを遮るための大きな庇が取り付けられたテラスになっています。陸側に「マタン・パビリオン」の建物があり、キッチンやバスルーム、寝室などが作られています。建物自体はコンパクトなものですが、湖に突き出しているテラスに続く通路と一体化したデザインなので、実際よりは大きく見えます。建物の屋根には、強い日差しの影響で室温が上がることを防ぐために芝のような背の低い植物が植えられています。外壁はポルトガル産の天然石が使われていて、レンガ色の石垣のような外観になっています。屋根に植えられている植物の緑と外壁の赤茶が、湖と南国の空の青さに映えて素晴らしいコントラストを映し出しています。玄関口の地面には、壁に使われているものと同じ石材と白い石とでモザイク模様が描かれています。

「マタン・パビリオン」のまとめ

 

「マタン・パビリオン」は、日本で見られる「離れ(はなれ)」のような建物で、母屋から少し離れた所に建てられるこじんまりした家です。日本でも昔は広い敷地を持つ豪農と呼ばれていた家がありましたが、敷地の中に作物を収納する蔵や、道具などを保管する倉庫などがあり、来客が宿泊できる別棟の小ぶりな家も作られている所がありました。現在でも有名な旅館では、静かな時間が過ごせるようにわざわざ離れを設けているところもあります。国が違っても同様の環境で、似たような仕組みが考案されているという事はその方法が最善だという事ではないでしょうか。「マタン・パビリオン」は全てのシステムが整ったコンパクトな家で、ブラジルの大農園の離れと言える建物です。

 

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