ミルウォーキー美術館(Milwaukee Art Museum)

「ミルウォーキー美術館」のご紹介

 

幾何学的で精巧なペーパークラフトのような美しい形の美術館が大きな湖の湖畔に建っています。湖面から今にも飛び立ちそうな巨大な白い鳥を思わせる姿をした「ミルウォーキー美術館」は、そこに収められている美術品に負けない繊細な美しさがあり、近未来的な装いも持っています。

「ミルウォーキー美術館」の設計者

 

「ミルウォーキー美術館」の設計とデザインを担当したのは、1951年にスペインの東部、地中海沿岸のバレンシアで生まれたサンティアゴ・カラトバ(正式名 サンティアゴ・カラトバ・ヴァイス)です。彼は、スペインの大学で建築や都市計画を学び、スイスの大学で土木工学を学びました。その当時、20世紀の初め頃に活躍していたスイス人の土木技術者に影響を受けたと言っています。学校を卒業してすぐの1979年に建築と土木技術の会社を立ち上げ、活動を開始しました。当初から大規模な建築を行っていて、特に鉄道駅や橋を多く手掛けていました。彼は、重力と言う概念に魅了され、重力に逆らうようなイメージのある建物や、巨大であっても重さを感じさせないような軽やかな建築物を作り上げています。また、曲線を多用してシンプルな建築物ではないものの、優美でシャープなイメージを持った建築物も多く作り出しています。このような建築物を作ることが出来るのは彼が建築家だけでなく、彫刻家としての芸術家の面も持っているからです。彼は、建築に対して、重力を考える土木工学と彫刻の両方を使える仕事として捉えています。現在、彼の事務所はチューリッヒとアメリカ、中東にオフィスを置いています。

「ミルウォーキー美術館」の所在地

 

アメリカ合衆国の北東部にあるウィスコンシン州で最大の都市、ミルウォーキーは五大湖の1つミシガン湖の西岸に位置しています。「ミルウォーキー美術館」は、その湖の湖畔に建てられています。ミルウォーキーの地名は、17世紀にフランスの宣教師や商人がこの地にたどり着いた頃に、この地域に住んでいた先住民の言葉で、「良い土地、または、良い所」と言う意味があります。元々この地には先住民が交易の拠点としていた町がありましたが、フランスの商人が更に多くの取引をするために街を大きくしました。アメリカが独立した頃には、ミルウォーキーが国で一番大きな都市に成長していました。この街が正式な自治体として登録されたのは18世紀の中頃です。19世紀に入ると、ドイツからの移民が増えてくるようになりました。政治的な不安定によって生活が苦しくなった多くの人々がドイツからやってきて、20世紀に入る頃にはドイツ人は街の人口のおよそ三割に達していました。彼らは、ドイツの様々な文化も持ち込み、真っ先に行ったのがビール工場を作る事でした。一時は世界で最大量のビール生産を誇っていましたが、現在は世界的に名高いビールメーカーは1社のみとなっています。このような経緯があったことから、この街はアメリカ国内でも特に、多様な民族とそれに伴う文化が混在している街となっています。

 

「ミルウォーキー美術館」の特徴

 

「ミルウォーキー美術館」は設計者が得意とするような形をした建築物で、2001年に増築された部分が完成しました。湖の湖畔から今にも飛び立ちそうな白い鳥のイメージがある外観をしています。設計者はこの湖にふさわしい何かを追加したいと考えて、ヨットの帆や水鳥、それに加えて湖の刻々と変わる景色をこの建物に取り込みたかったと言っています。基礎と建物の屋根や側面を支えるアーチ型の梁はコンクリート製で、収蔵品の為にも、湖畔の埋立地である敷地の湿気を取り込まないようになっています。一番目立つ白い翼は、48度の傾きがある船のマストのような柱に、長さが8mから32mの72枚の鋼鉄の板で成り立ち、日よけの役割があってブラインドのように稼働するようになっています。また、嵐などの悪天候の時には完全に畳めるようにもなっています。入り口ホールは天井が高く、白い鋼の骨組みにガラスがはめ込まれて大聖堂のような雰囲気があります。また、ホールの湖側の先端からは、まるで船の船首から見えるような湖の風景が広がっています。そばを通る幹線道路を渡る橋は、斜張橋(しゃちょうきょう)と言って塔からケーブルを張って橋を支える構造です。「ミルウォーキー美術館」の翼の中心部と重なる位置に斜めに建つ塔から、9本のメインケーブルと18本のバックアップケーブルによって支えられ、美術館を訪れる人を招き入れています。

「ミルウォーキー美術館」のまとめ

 

「ミルウォーキー美術館」に入館するために作られている橋は歩行者専用の橋で、橋の魔術師とも呼ばれている設計者の代表作の1つである、スペインのアラミロ橋に似た雰囲気の橋です。この橋の上から「ミルウォーキー美術館」を見ると、橋と一体化した美しい姿を見ることが出来ます。伝統工芸と最新の技術を融合させた「ミルウォーキー美術館」は、設計者が意図したとおり湖に新しい風景の1ページを加えることが出来たのではないでしょうか。

 

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