ウンテリエズハイム礼拝堂(Wooden Chapel)

「ウンテリエズハイム礼拝堂」のご紹介

 

大規模な宗教建築は荘厳で堂々とした建物が多く建てられています。そこには様々な絵や彫像、意匠を凝らした浮彫など美術品としての価値もあります。しかし、住む人の少ない田舎に作られる小さな礼拝堂などは逆にシンプルな建物もあります。建物がどのような形であろうとも神様に祈りをささげる場所であることには変わりはありません。ドイツの森のそばに建てられている「ウンテリエズハイム礼拝堂」は自然に溶け込む礼拝堂です。

「ウンテリエズハイム礼拝堂」の設計者

 

「ウンテリエズハイム礼拝堂」の依頼を請け負ったのはイギリス人建築家のジョン・ポーソンです。1949年にイングランドの北部にあるハリファックスと言う町で、5人兄弟の末っ子として生まれました。彼の父親が繊維工場を営んでいたので、比較的裕福な家庭で育ち、全寮制の男子校で基礎教育を受けました。ジョン・ポーソンは日本と強いつながりのある建築家です。子供の頃にテレビで日本を紹介する番組があって、それを見てからは日本に対して大きな興味を抱いていたようです。学校を卒業してからしばらくは工場の手伝いをしていましたが、20代の半ばで日本にやってきました。工場で働いていた頃に近くで空手を教える日本人がいて、彼は仕事の合間に空手を習っていました。日本にあこがれて来日したようですが、色々な人との縁で、4年間は大学で英語を教えていました。在日最後の頃に、東京のデザイナーで建築家の倉俣史朗の作品に感銘を受け、彼のアトリエに通うようになったようです。そんな彼に倉俣史朗は建築の道を勧めたそうです。帰国した彼は、イギリスの有名な建築専門学校で学び、1981年に事務所を開設しています。彼の作品はシンプルで、光と素材にこだわったものが多く、日本の「わびさび」を思い起こさせるような建物もあります。20代で家を飛び出すようにして日本に来たことを彼は、「若気のいたり」と言っていますが、日本に来たことで今の彼があると言っても過言ではないのかもしれません。

「ウンテリエズハイム礼拝堂」の所在地

 

ドイツ連邦共和国の南部、バイエルン州に属するルッツィンゲンと言う村から少し離れた森の入り口に「ウンテリエズハイム礼拝堂」が建っています。11世紀に小さな修道院がこの地に建てられたことが、集落の始まりだったようで、この村を含む4つの村と1つの町でホーホシュタットと言う郡が構成されています。ドイツの有名な黒い森を源流とするドナウ川の上流地域で、自然が豊かな田舎の地域です。ドナウ川の支流や沼地などが点在していて、様々な動植物が生育しています。その中でも、淡水のムール貝と呼ばれる、カワシンジュガイが生息している川があることは特筆できることです。この淡水の二枚貝はヨーロッパの各地で生息していますが、非常に数が少なく絶滅危惧種となっています。綺麗な水と一定の急流、川底に砂がある事、サケやマスなどの淡水魚がいる事などの条件が整わないとこの貝は生息することができません。この貝がいる川は、豊かな自然があることの証明となっています。ドイツは環境を大事にする国で、全国に自転車の専用道路が整備されていますが、この地域にも最近新しい自転車道が作られました。その道沿いに「ウンテリエズハイム礼拝堂」を含む7つの礼拝堂が建設され、新しい名所となっています。

 

「ウンテリエズハイムの礼拝堂」の特徴

 

「ウンテリエズハイム礼拝堂」は森の入り口に積み重ねられた丸太のように見える建物です。いわゆるログハウスのような、丸太を積み重ねて建造された礼拝堂で、小さな入り口と小さな窓が一つ作られています。もちろん人工の照明は無く、わずかな開口部から入る自然光だけが屋内の明かりとなっています。9mの長さの丸太を高さ7mまで積み上げて作られています。61本の松の木(ベイマツ)が使用されていて、その中の半数以上は依頼者から提供されています。屋外の側は、大まかに木の皮を削ぎ落しただけですが、屋内側は平らに切り落とされています。コンクリートの基礎と台座に乗せられるようにして、丸太を積み重ね、高い天井部分は平らになっています。天井に近い場所に明り取りの為の開口部が作られていて、間接照明のような柔らかな光を取り入れられるようになっています。入り口と反対の方の壁には細く十字に切り取られた部分が作られ、黄色の色付きガラスがはめ込まれています。入り口は少し狭く作られていますが、これは、木立の並ぶ森に入っていくような感覚を創り出すためです。「ウンテリエズハイム礼拝堂」が建っている地域は冬になるとかなりの積雪がありますが、生の木に含まれる空気が断熱材の役割をするので、暖房が無くても野外よりはかなり暖かいという事です。

「ウンテリエズハイム礼拝堂」のまとめ

 

ドイツのバイエルン州に住む起業家が興したプロジェクトの一端として建設されたのが「ウンテリエズハイム礼拝堂」です。プロジェクトを推進した起業家は、何十年も木材関係の事業を行っていたことから、「ウンテリエズハイム礼拝堂」を含む7つの礼拝堂は全て木造で建設される事が条件でした。その為、これらの礼拝堂は「木製チャペル」と呼ばれていて、年を追うごとに趣のある外観になる事が予想されています。

 

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