ノーチラス(Nautilus)

「ノーチラス」のご紹介

 

太古から生きている生物が現在もいくつかの種が存在しています。暖かい海に生息しているオウム貝もその一つで、ラテン語で「ノーチラス」と言い、独特の形と模様のある美しい殻を持っています。その殻に似た形の住宅が南米の街に建てられています。「ノーチラス」は美しい形と色をした生物的な建物です。

「ノーチラス」の設計者

 

「ノーチラス」の設計とデザインを手掛けたのは、メキシコ人のハビエル・セノシアイン(正式名、ハビエル・セノシアイン・アギラール)です。彼は、1948年メキシコで生まれ、1972年に建築を学んだ国立の大学を卒業しました。彼は、有機建築と呼ばれる、生物を題材とした建物を多く作り出していて、「アーキテクトラ・オーガニカ」と言う正に有機建築と言う名の建築事務所を構えています。「自然は発想の源」と言っている彼は、自然の様々な物事をじっくり観察する所からデザインを始めています。また、「自然界には直線は存在していない、微生物から銀河に至るまで」とも言っていて、彼の作る作品に曲線がふんだんに使われている事からその主旨がわかります。他にも、人間は母体から生まれた時点から死ぬまで、四角い箱から四角い箱へと身を置く場所を変えているだけで、それでは不自然だとも考えています。その様な彼の建築に対する考えは、幾人かの建築家の先人から大きな影響を受けている事が要因となっています。サグラダファミリアを手掛けていたアントニ・ガウディや、落水荘を設計したフランクロイド・ライト、母国、メキシコの建築家ファン・オゴーマンが提唱していた、有機的建築や生物的建築が彼の建築家としての考えを方向付けています。また、メキシコや他の中南米に残されている神話なども、彼の作品の参考にされています。

「ノーチラス」の所在地

 

「ノーチラス」が建てられているのは、メキシコ合衆国の首都、メキシコシティに隣接するナウカルパンと言う街です。メキシコシティの西側に位置する街で、正式名称をナウカルパン・デ・ファレスと言います。ファレスとはメキシコの先住民族から選出された初めての大統領で、第26代大統領を務めたベニート・ファレス(ベニート・パブロ・ファレス・ガルシア)の事で、彼に敬意を表した地名となっています。メキシコには様々な古代文明が存在していて、国内の他の都市と同じく、ナウカルパンも多くの王朝の支配を受けていた街でした。街の名前が最初に記されたのは、およそ3,000年前ですが、人が暮らしていた痕跡は約2万年前にさかのぼります。街の名前のナウカルパンとは「4つの家、または、4つの場所」と言う意味があるアステカの流れをくむ先住民族の言葉が由来となっています。3,000m級の山々が連なる西シエラ・マドレ山脈(西の母なる山脈)の東側の麓に位置するメキシコ渓谷に街があり、標高が2,000m以上ある場所なので、緯度は低いのですが1年を通して気温はあまり高くありません。夏季は25℃前後で冬季に氷点下になることは稀です。1957年に正式に市として宣言されて、ほぼ同時にメキシコシティのサテライト・シティとしての役割を持つようになりました。

 

「ノーチラス」の特徴

 

「ノーチラス」は名前の通り、オウム貝の形と色合いの家です。巻貝のような形と、ステンドグラスのような色とりどりのガラスがはめ込まれた壁が印象的です。建設地の形状に合わせて作られていて、外から続く石の階段がそのまま玄関口から屋内に続いています。壁や床をあいまいにしていると設計者は言っていますが、家の奥に行くにしたがって、ゆるやかにカーブした壁がそのまま床に続いているのがわかります。入り口は、虹の色を使った、少し歪んだ大小の丸いガラスがたくさんはめ込まれた壁に、同化したようなドアが取り付けられています。屋内に入ってすぐは、様々な草花が生えていて中庭のような感じで、色ガラスの壁が無ければ本当に前庭となっているようです。各部屋は外から続く螺旋をそのまま延ばした動線で作られています。壁と床の境界があいまいとなっていますが、天井もその延長で、壁から緩やかに天井部分となっています。天井には所々に天窓のような開口部が作られています。オウム貝の模様をそのまま利用した形の細長い楕円のような天窓が複数作られているので、日中の屋内は自然光でとても明るくなっています。建物そのものは設計者の得意とするフェロセメント工法と言う方法で作られています。骨組みは鉄筋で、自由に形を作ることが出来ます。その上にモルタルで肉付けをするような形となっていて、この方法で建設すると、様々な方向からの衝撃に強く、後々の補修等も少なくなります。

「ノーチラス」のまとめ

 

2007年に完成した「ノーチラス」は、近年では当たり前のようになっている持続可能な家です。外観からは想像しにくいのですが、外気と地面下の気温差を利用して、夏は涼しく冬は暖かい室内空間を作るように考えられています。生きた化石とも言われるオウム貝の形を忠実に再現した家は、そこに住む人が希望して作られたという事です。四角くない家は、人間も自然の中で生きる生物の1つという事を実感させてくれる住み心地を与えてくれるのかもしれません。

 

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