NMAAHC(National Museum of African American History and Culture)

「NMAAHC(スミソニアン国立アフリカ系アメリカ人歴史博物館)」のご紹介

 

どこの国でも長い歴史の中では良い事ばかりがあったわけではありません。現代の文明社会に於いて、反省すべき史実もたくさんありました。しかし、その様な史実を隠すのではなく、広く知らしめる事は大事な事ではないでしょうか。「NMAAHC」は、アフリカからやってきた祖先を持つ人たちの目を通して見たアメリカ合衆国と、祖先が持っていた様々な文化を紹介する博物館で、その文化の一端を見せる事の出来る外観をしています。

「NMAAHC」の設計者

 

「NMAAHC」を手掛けたのは、ガーナとイギリスの国籍を持つデイヴィット・アジャイです。彼は、1966年にアフリカの南西部にあるタンザニアの元首都で、最大の都市ダニエスサラームで生まれました。父親が外交官だったことから、西アフリカや西アジアのいくつかの国で幼い頃を過ごしていました。9歳の時にイギリスに移住し、ロンドンの大学で建築を学びました。大学在学中から素晴らしい才能を見せていた彼は、王立の建築家協会が優れた建築学生や卒業間もない若手に送る賞を受賞しています。大学卒業後は、イギリスやポルトガルの建築事務所で実務を経験し、日本にもやってきて、いく人かの著名な建築家の作品に触れ、日本の仏教文化も勉強していました。イギリスの美術大学の大学院を卒業した後に、自らの建築事務所「アジャイ・アソシエイツ」を開いたのが2000年でした。独立した当初は、民家や家具のデザインなどを手掛けていました。現在は、ガーナの首都アクラとロンドン、ニューヨークにオフィスを構えています。「建築は全ての人に平等に役立つべき」と言っている彼は、2007年と2017年にイギリス女王から勲章を授けられ、「サー(または、卿)」の称号を付けて紹介されるようになっています。

「NMAAHC」の所在地

 

アメリカ合衆国の政治の中枢はワシントンDCにあります。その中でも国立公園に指定されているナショナルモールには、ホワイトハウスや議事堂もあり、有名な石造品のワシントン記念塔も建っています。ワシントン記念塔のすぐそばに建設されたのが、「NMAAHC」です。ここには「NMAAHC」の外にも、スミソニアン学術教会が管理、運営する博物館や美術館がいくつも建設されています。合衆国議会議事堂からリンカーン記念堂までの間が一番長く、3km以上の距離がある広い公園です。大統領公邸のホワイトハウスを背にして南に建つワシントン記念塔は、アメリカ建国の父と言われたジョージ・ワシントンを記念して建てられた石造りの建造物です。全て国内で採石された大理石と花崗岩、片麻岩で作られている、世界一高い記念碑です。ワシントン記念塔の西側にはリフティング・プールと言う長方形の浅い池が作られています。この池は水に周囲の風景を映すために設置されていて、リンカーン記念堂から東に建つワシントン記念塔が水に映る美しい姿を見ることが出来ます。政治の中心としての重要な機能を持つ場所ですが、多くの木や芝生も植えられている緑地帯でもあるので、市民の憩いの場も提供している公園です。 

 

「NMAAHC」の特徴

 

「NMAAHC」は、雅な雰囲気のある透かし模様が建物全体を取り囲んでいるように見える建物です。階段状のピラミッドを逆さまにしたような形状で、この形はヨルバ文化の王冠を模していると言われています。「ヨルバ」とは、1500年以上の歴史を持つ西アフリカの民族の名前で、安定した都市と華やかな文化を育てた人々の事です。特に、青銅を使った工芸品は美術的にも価値のあるものが作られています。それを再現するように、透かし彫りのようなカーテンウォールが取り付けられました。当初は、銅と錫の合金であるブロンズ(青銅)を使用する計画でしたが、費用が掛かりすぎる為、銅をコーティングしたアルミパネルで作成されることになりました。このパネルを間近で見ると、絡まる蔦若しくは、幾重にも重なる花びらを持った花のように見えます。しかし、建物全体で見ると、草を編んで作った籠の様にも見えます。また、野外が暗くなる時間には、パネルを通して漏れる屋内の光によって、建物が薄いレース生地で作られたベールを纏ったような雰囲気があります。平面図で見るとほぼ正方形の建物で、正面入り口の上に設置されている広い庇は建物の幅と同じ長さがあり、その上には植物が植えられていて庭を形成しています。3層に作られている外観は、太陽を取り巻く希薄なガスの層の太陽コロナをイメージした形とも紹介される事があり、赤味のある銅の色と下から吹きあがるような形は、アフリカ大陸を彷彿とさせる形状と言えるのではないでしょうか。

「NMAAHC」のまとめ

 

「NMAAHC」は、スミソニアン学術協会が運営する19番目の博物館で、2016年に開館しました。「アフリカ系アメリカ人のレンズ越しに」を旗印にした博物館で、アメリカの歴史を違う視点から観察できる2番目の博物館です。また、「NMAAHC」は初めての試みとして、建物が完成する前にウェブ上でオープンしています。この博物館の趣旨に合致する事柄であれば、誰でも写真などを投稿できるようにしていました。著名なアフリカ系アメリカ人の中には、多額の寄付をした人もいて、この博物館の完成を心待ちにしていたことが伺えます。

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