持続可能パビリオン エキスポ2020ドバイ(Sustainability Pavilion Expo 2020 Dubai)

「持続可能パビリオン エキスポ2020ドバイ」のご紹介

 

日本でも地球の事を「テラ」と言い表すことがあります。「テラ」は、ラテン語で地球を意味する単語で、英語のアースと同じです。中東で開催された万国博覧会の主要な展示場所となっていた建物は、「テラ」と名付けられています。「持続可能パビリオン エキスポ2020ドバイ」は、地球の将来を鑑みて建設されました。

「持続可能パビリオン エキスポ2020ドバイ」の設計者

 

「持続可能パビリオン エキスポ2020ドバイ」の企画を手掛けたのは、イギリスのニコラス・グリムショウ卿が1980年に開設した建築事務所グリムショウ・アーキテクツです。彼は、1939年にイギリス南部のホーブと言う街で技術者の父親と芸術家の母親の元に生まれました。父親は彼が幼いころに亡くなり、母や祖母、姉妹と共に生まれ故郷の近くの街で育ちました。小さい頃の彼は、組み立て式のおもちゃに夢中になっていたようで、その頃から建築に興味を持っていたという事です。ロンドンにある有名な建築の専門学校に奨学金を得て通い、建築を学びました。優秀な成績で学校を卒業した後、同じくイギリスの建築家と2人で事務所を開設し、2年後にはイギリスの建築家協会に所属しました。15年間2人で協力して活動した後に、それぞれ独立した建築事務所を創設しています。独立してからも彼の活躍は続き、1993年には大英帝国勲章を授与されて騎士の位を得て、「サー」の称号を付けて紹介されるようになりました。彼の作品は、公共施設や駅、空港など大規模なものが多く、合理的な建築とも言われるモダニズム建築でありながら美しい外観をしています。彼の率いる事務所はイギリス、アメリカ、オーストラリアにオフィスを構え、多くのスタッフと共に活動を続けています。

「持続可能パビリオン エキスポ2020ドバイ」の所在地

 

エキスポ2020が開催されたのは、アラビア半島の東側、ペルシャ湾の入り口に位置する7つの首長国で構成されるアラブ首長国連邦の中のドバイ首長国でした。200を越える国や地域、企業が参加して、2021年10月から2022年3月の約半年間の開催でおよそ2,400万人の入場者がありました。この国は1つの都市で形成されています。200年前までは、漁業と真珠の採取で生計を立てていた小さな漁村でした。1929年に真珠の養殖技術が確立されるまでは真珠の採取はこの街の重要な産業の1つでした。19世紀の初め頃にドバイが首長国となりましたが、19世紀の中頃からはイギリスの保護下に置かれ、ペルシャ湾の入り口であったことから貿易の拠点として発展してきました。真珠の採取では経済が賄われなくなってからは、隣国の石油発見に触発されて、石油の探査が行われました。数年の探査の結果、石油が発見されましたが埋蔵量は少なかったようです。20世紀の中頃に、当時の支配者が少ない資金を道路や通信、電気などの経済基盤を整備する事に使ったことが、この街を大きく発展させることになりました。現在は貿易や高級リゾート、金融業がこの国の経済を支えています。特に高級志向の観光に力を注ぎ、世界でもトップクラスの5つ星ホテルが複数あり、世界一高いビルも建っています。

 

「持続可能パビリオン エキスポ2020ドバイ」の特徴

 

「持続可能パビリオン エキスポ2020ドバイ」は「テラ」と名付けられ、この建物で使用する電力と水は全て自足出来るように設計されています。このパビリオンの地上部分は、ほとんどが太陽光から電気エネルギーを作り出すための施設となっています。1番の特徴は、大きな「じょうご」のような形をした屋根のような部分です。長い方が130mもある楕円形の構造物は、ガラスに埋め込まれた太陽光発電のパネルで覆われていて、じょうごのような形で空気の流れを作り自然光が入るようになっています。この巨大な天蓋の周りには「エネルギー ツリー」と呼ばれる直径が15~18mの樹木のような構造物が建てられています。この人工の樹の形はドバイの隣、イエメンのインド洋に浮かぶソコトラ島だけで育つ「竜血樹」を模しています。これらの発電施設は植物の光合成を意識していると設計者は言っています。鋼鉄の柱に軽くて丈夫な炭素繊維を使用して作られ、ひまわりのように太陽を追いかけ、約180度回転するようになっていて、夜間に元の位置に戻るようになっています。また、気温の高い日中に日陰を提供する役目も果たしています。水も自給自足しています。空気中の水分や砂漠地域特有の寒暖差によってもたらされる結露による水分を集め、ろ過して消毒し、飲料水などに利用されています。その他の雑用水は排水を浄化して使用されています。展示施設はほとんどが地下に作られていて、設計者は、「地球が屋根となって覆い、室内を涼しくしてくれる」と言っています。「エネルギー ツリー」の周りには、地元で採石される赤味のある石で小道が作られ、この地域で生息している植物もたくさん植えられています。

「持続可能パビリオン エキスポ2020ドバイ」のまとめ

 

エキスポ2020ドバイには、「サステナビリティ」と言うサブテーマがあり、「テラ」はメインパビリオンの1つでした。サステナビリティ(持続可能)とは環境に負荷をかけないで永続的に利用できることを指していて、この施設は今後50年でも100年でも使用に耐えると言われています。万国博覧会が終了した後この建物は、若干の改装を行ってから博物館として使用されます。

 

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