AUB(アーツユニバーシティ ボーンマス)のイノベーション スタジオ(Arts University Bournemouth Innovation Studio, UK)

「AUB(アーツユニバーシティ ボーンマス)のイノベーション スタジオ」のご紹介

 

イギリス南部の街に未来に向けた様々な事柄を考え出すための施設があります。芸術系大学の施設で、その大学の卒業生であり、現在は教授も務めている人物がデザインと設計を担当しています。新しいものを生み出そうとしている人々を受け入れている「AUBのイノベーション スタジオ」は、明るい未来を象徴するようなポップな色合いの建物です。

「AUBのイノベーション スタジオ」の設計者

 

「AUBのイノベーション スタジオ」を手掛けたのは、この大学の卒業生で、建築の教授を務めているピーター・クック卿です。彼は、1936年にイギリス南東部の街、サウスエンド=オン=シーで生まれました。1961年からおよそ10年間に渡って活躍していた前衛的な建築家の集団「アーキグラム」の創設メンバーの1人で、同名の雑誌編集も行っていました。アーツ芸術大学で建築を学びましたが、芸術系の学校だった為に彼の周りには様々な芸術を生み出す人々がいて、彼の建築に対する理念に影響を与えたようです。近年ではコンピュータを使った建築デザインや設計が主流となりつつありますが、彼は依然として手書きのスケッチからデザインに入ります。元々絵を描くことが好きだった彼には芸術の才能もあったようで、彼の多くの描画はそれだけで素晴らしい芸術品と言えます。手描きの場合はコンピュータを使った時より数倍も時間がかかるけれど、その過程で多くのアイディアが生まれているようです。彼の作品は、彼らしいと言われるような似通ったものはありませんが、常に時代を切り開くような建築物が作り出されています。高齢の域に達した今でも、若々しい感性で斬新なアイディアを生み出しています。

「AUBのイノベーション スタジオ」の所在地

 

イギリス(正式名称は、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)の南部にある港湾都市プールに「AUBのイノベーション スタジオ」が建設されています。プールは、構成国の1つイングランドのドーセット州に含まれる街で、海に関する様々な国や民間の重要な拠点が置かれています。また、隣の市のボーンマスの名前が付けられている大学や楽団も実際はこの街にあります。元々天然の湾があったことから、中世前期には羊毛を主体とした交易が行われていて、アメリカが国として確立された頃にはアメリカとの貿易拠点として大きく発展してきました。18世紀の頃には国で一番活気のある港として名を馳せ、19世紀の頃には街に住む9割の人が港湾関係の仕事をしていたと言われています。船舶の大型化によってこの港では対処しきれなくなり、一時の賑わいはなくなりましたが、隣のボーンマスがリゾート地として発展してきたことで、その街を支える役割をするようになりました。また、世界遺産にも登録されている、約150kmにも及ぶ「ジュラシック・コースト」の東端の玄関口になっていて、この街も観光地となっています。「ジュラシック・コースト」は、海岸の浸食作用によって2億年弱にわたる様々な時代の地層が見られる場所で、世界でも珍しく地質学的にも重要な場所です。それに加えて、浸食作用によって出来た自然の素晴らしい造形を望む事も出来ます。

 

「AUBのイノベーション スタジオ」の特徴

 

「AUBのイノベーション スタジオ」は大学の1施設として2021年に完成しました。設計者のピーター・クック卿によると、「学ぶ場所、工房、実務をこなす場所などが一体となったハイブリッドな建物」また、「この建物は、創造性と革新の為の豊かな器」とも言っています。基本的には四角い建物ですが、オレンジ色を基調としたとても明るい色合いで、色々な場所に曲線が使われています。各所に取り付けられている窓も、1つの正方形を基本として、2つ3つと組み合わせた形になっていて違う窓のように見えます。窓の横には「まぶた」と呼ばれている半円形の穴あき金属で作られたパネルが取り付けられています。このパネルは、屋内で作業をしている人がプライバシーを求めるときや、日よけの為、明るさや屋外との繋がりを求める時など様々な場面で開閉できるようになっています。パネルの色はグレーで外壁のオレンジや黄色にゆるやかなアクセントをつけています。屋内は比較的簡素な作りで、倉庫内のような雰囲気があります。しかし、各所に置かれている調度品や内壁の所々に外壁と同じ色合いが使われています。平らな屋根の中央には三角柱を横にした形の天窓が作られていて、自然光がふんだんに入るようになっています。

 

「AUBのイノベーション スタジオ」のまとめ

 

「AUBのイノベーション スタジオ」は、設計者の母校に建設されたピーター・クック卿の手による2つめの建物です。この学校で建築はもちろんですが、それ以外にも多くの事柄を学び、吸収した彼は、後進を育てる為に様々な活動も行っています。彼は建築家を目指す学生に、2つ以上の学校で学び、少なくとも2つ以上の国で働くように勧めています。そして、自分を含む世界の著名な建築家を手本にしないようにとも言っています。そんな助言をしているピーター・クック卿が手掛けたこの建物は、自分の頭で考え、自分の力で新たな時代を作り出そうとしている人々の手助けとなっているのではないでしょうか。

 

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