ヘザーウィックのローリングブリッジ(Rolling Bridge)

「ヘザーウィックのローリング・ブリッジ」のご紹介

 

 

 

 

 

 

 

 

 イギリスのロンドンは、「川のあるところ」を意味する単語が地名の由来となっています。有名なテムズ川をはじめ、いくつかの川と多くの運河が街の中を流れています。そこに架かる橋も大小様々で、「タワーブリッジ」は世界的に有名な歴史ある橋です。「ローリング・ブリッジ」は、今世紀になって作られた小振りですがユニークな橋です。 

「ヘザーウィックのローリング・ブリッジ」の設計者

 1970年にロンドンで生まれたトーマス・ヘザーウィックが、この橋をデザイン、設計しました。イギリスの国立大学を卒業後、1994年にヘザーウィック・スタジオを開設しました。彼は建築家と言うより、芸術家で、自ら「三次元デザイナー」と称しています。建物だけでなく、家具などのインテリア、オブジェなど様々な物をデザインして世に送り出しています。例えば、2010年にロンドンで有名なルートマスターと呼ばれる2階建てバスが新しく形を変えることになった時に彼のデザインが採用されました。このバスのモデルチェンジは50年ぶりのことでした。また、2012年のロンドンオリンピックの時に作られた聖火台も彼のデザインによるものでした。彼の設計する建築物には奇想天外な外観の物が多いのですが、単に奇抜な外観と言うだけでなく、環境や使い心地など様々な事柄を考慮したうえでの見た目となっています。2004年には王立芸術協会により、史上最年少で王室工業デザイナーに選ばれました。現在、彼の元では建築家やエンジニア、デザイナーなど多彩な能力を持った200人以上のスタッフが活躍しています。 

「ヘザーウィックのローリング・ブリッジ」の所在地

 イングランドの首都ロンドンの東部に位置するパディントンの運河に架かる橋の一つが「ローリング・ブリッジ」です。ロンドン市内には有名なテムズ川が流れていますが、多くの運河が19世紀には開通していました。グランド・ユニオン運河は、支線も含めて総延長が200km以上もあり、当初は石炭や貨物を運搬することが目的でした。この地域の運河を航行する船は、特徴的な形をしています。ナローボートと呼ばれるこの船は、狭い運河で、すれ違うために細い船体をしています。運河の水運は時代が進むにつれ、鉄道が整備され、トラックなどの自動車などに押され次第にさびれてきました。しかし、現在では観光の目玉となり、屋根付きの船は宿泊することができるものがあり、カフェや運河のクルージングも行われています。 

「ヘザーウィックのローリング・ブリッジ」の特徴

 運河や川に架かる橋は、下を通る船の大きさによっては構造に大きな要求が求められます。有名なタワーブリッジは開閉式で、この方法は世界で多く採用されています。しかし、「ローリング・ブリッジ」は誰も思いつかなかった方法で船を通すことができる橋です。橋の奥側にある、運河を利用したレジャーの為の店舗から船が出入りできるように作られました。2004年に完成した歩行者専用の12mほどの橋ですが、くるくると巻き取ってしまう橋です。巻き取られた形は、八角形をしていて馬車の車輪のようにも見えます。そのような見た目なので、ちょっと押すと転がって行きそうな印象があります。歩道部分は木製のデッキで、橋げたは鋼鉄で作られ、油圧で作動しています。欄干部分に当たる所に油圧シリンダーが等間隔で取り付けられ、欄干を押し上げるような形で橋が巻き取られています。巻き上がる時はゆっくりですが、下がる時は比較的早く下がります。油圧ポンプやその他の機器類は、隣接する建物の地下に設置してあるので、「ローリング・ブリッジ」の周りにはそのような周辺機器がありません。その為、動いている時も作動音がほとんど無く、どのような仕組みで稼働しているのかわからず不思議な感じがします。この橋が動いている所を見ると、少し楽しい気分になるのではないでしょうか間違いなく作動しないといけないので、毎週金曜日の正午頃に動作確認とメンテナンスを行っています。 

 

 

 

 

「ヘザーウィックのローリング・ブリッジ」のまとめ

 何事も当たり前と言ってしまえば前進することはできません。「ローリング・ブリッジ」の設計者は当然を当然としない、なにか良い方法はないだろうかと常に考えているのでしょう。そして、橋をこのような形で稼働する方法を考え出し、実現していることは、何事にも囚われない柔軟な発想と技術の賜物と言えるのではないでしょうか。 

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