VIKワイナリー(The Winery at VIK)

「VIKワイナリー」のご紹介

 

ワイナリーとはワインを醸造する施設や建物を指しています。それぞれの醸造所が自慢のワインを作っている場所を公開したり、訪問客が試飲を楽しめたりするようなツアーを行っている所も数多くあります。南米のチリにあるワイナリーは比較的新しいメーカーですが、独自のこだわりを持っています。「VIKワイナリー」の建物もここで醸造されるワインに負けない、こだわりのある作りになっています。

「VIKワイナリー」の設計者

 

チリの首都サンティアゴで1965年に生まれたスミルハン・ラディックが、「VIKワイナリー」の設計とデザインを手掛けました。彼の祖父はクロアチアのブラチ島からチリに移民してきました。ブラチ島は、イタリア半島とヨーロッパ大陸の間にあるアドリア海に浮かぶ島です。彼自身はチリの生まれで、チリ人ですが、根源にクロアチアの血が流れていることも彼を紹介する時によく取り上げられています。チリの大学で建築を学び、その後ヨーロッパに渡り、イタリアの大学で更に研究を重ねていました。母国に帰国してから1995年に自らの事務所を開設し、建築家としての活動を始めました。世界中の多くの著名な建築家は大規模なプロジェクトをこなしていますが、彼は個人の住宅や小さな店舗など小規模な建築物を手掛けています。芸術家としての活動も行っていて、特に、近年盛んに行われるようになった体感型や体験型の芸術であるインスタレーションに携わっています。これには彼の妻が彫刻家であることも重要な要素となっているようです。現在でも大規模なプロジェクトはほとんど受けておらず、「VIKワイナリー」は彼の作品の中でも規模の大きなものとなっています。

「VIKワイナリー」の所在地

 

南米大陸の太平洋側に位置する、南北に細長い国土を持つチリ共和国のほぼ中央部にあるミラウェ(または、ミラヒュー)と言う、小さな町のそばに「VIKワイナリー」があります。この町はオイギンス地域に含まれ、近くには大きな街のサン・ビセンテ・タグア・タグアがあります。ミラウェは元々この地に住んでいた人々の言葉で「神の地」と言う意味で、以前は金鉱があったと言われている場所です。この地域には、最後の氷河期が終わった、およそ1万3千年前にはすでに集落と呼べるような痕跡が残されています。中心的な街のサン・ビセンテ・タグア・タグア周辺には、石や鉱石で作られた道具や動物の骨などが見つかっていて、狩猟や農耕で人々が暮らしていたことが分かっています。歴史的に重要な役割を果たしていた地域でもあり、インカ帝国が拡大していた頃の最南端に位置する所であった事が残された遺跡で確認されています。また、スペインから人々がこの地にやってきたのはインカ帝国を征服した後のことでした。この地域には比較的大きな川が流れていて、肥沃な土地があり、太平洋から吹く風によって夏は乾燥し、冬も大きく気温が下がることはありません。このような条件が整っていたことから、ワイン用のブドウはもとより、レモンやオレンジなどの柑橘類、サクランボなど様々な果樹が植えられ、この地域の特産となっています。

 

「VIKワイナリー」の特徴

 

ヨーロッパには良いワイナリーがたくさんあって、ワインと共にワイナリーの建物にも力を注いでいる所がたくさんあります。南米にも、ワインを醸造するための土地や気候などの条件が整っている場所がいくつもあります。近年ではワイナリーの建物にも重点を置くようになっていて、2014年に完成した「VIKワイナリー」もその一つです。外観のデザインは設計者のスミルハン・ラディックのこだわりが大きく影響していて、周囲の自然や景観を損ねないようになっています。特に、正面入り口の前方に広がる前庭のような部分は、日本庭園で見られる形式の枯山水を彷彿とさせる作りになっていて、静寂な雰囲気を漂わせています。元は沼地であった場所に作られたブドウ園で、水とは切り離せない立地を、非常に美しく再現しているように思えます。建物前面に広く浅い、まるで水盤のような水辺を作り、その中に大小の石が置かれています。訪れた人は、入り口に通じる水から浮かんだように見える小道を通ってワイナリー内部に導かれるようになっています。次に特徴的な事は、広い屋根です。建物は幅約40m、長さ約130mで、その大半に屋根が作られています。上下に弧を描くような形で、水をはじいて空気は通す特殊な生地と、ガラス繊維を使った特別な複合生地が使われています。この生地は、太陽の熱を反射するようになっていますが、陽の光はかなり通すようになっているので、日中の人工照明はほとんど付けられていません。この屋根は建物の両横に建造されたコンクリート製の壁によって支えられています。

「VIKワイナリー」のまとめ

 

「VIKワイナリー」が建てられた場所は大きな沼地であった場所で、海を干拓するように人工的に水を抜いて畑にされました。良いワインを作るための、良いブドウを育てることのできる肥沃な土地がこのようにして作られました。「VIKワイナリー」の一番重要なワイン醸造の為のタンクは、地面より低い位置に設置されて、温度管理は地面が行っているような印象を受けます。21世紀に入って作られるようになったVIKワインは、まだまだ歴史が浅いワイナリーです。しかし、これから良いワインに育つための「VIKワイナリー」はVIKワインの揺りかごと言えるのではないでしょうか。

 

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