アビタ67(Habitat 67)

「アビタ67」のご紹介

完成から半世紀以上経っても外観はもとより、システムも素晴らしい集合住宅が北米の都市に建っています。「アビタ67」は、1967年にモントリオールで開催された万国博覧会のメイン会場の一つとして建設されました。現在は団地として多くの住人が暮らしている集合住宅です。「アビタ」はアルファベットの綴りにすると「habitat(ハビタット)」で、多くの生物が生息する場所、または、居住環境を意味する単語です。

 

「アビタ67」の設計者

「アビタ67」の設計者は、イスラエルとカナダ、アメリカ合衆国3か国の国籍を持つモシェ・サフディです。1938年に現在のイスラエル北部にある都市、ハイファで生まれました。子供の頃にイスラエルが独立しましたが、経済の悪化によって父親の事業がうまくいかなくなって、彼が15歳の時にカナダのモントリオールに移住しました。大学生の頃に国の機関から奨学金を得て、様々な住宅を見学するために北米の各地を回りました。大学を卒業後、アメリカの著名な建築家の元で働いていました。その後、学位を取得するために提出した論文が話題を呼び、論文を書くために助言を得ていた人物から、モントリオール万博の企画に参加するよう誘われています。この論文が「アビタ67」の元となっています。26歳で自らの事務所を開設して、「アビタ67」をさらに良いものにするために研究を重ね、その成功が彼の名を広く世界に知らしめる事となりました。以来、彼は空港や美術館、博物館などの公共の大規模なプロジェクトをこなすようになっています。彼が建築家として活躍し始めた頃は、カナダ国内や北米の建築物が多かったのですが、現在はシンガポールや中国などアジアでも数々のプロジェクトを進めています。

「アビタ67」の所在地

カナダの南東部、アメリカ合衆国との国境に近いケベック州の州都であるモントリオールに「アビタ67」が建っています。トロントに次ぐ国内第二の大都市です。16世紀半ばにフランス人の探検家が初めてこの地に足を踏み入れ、17世紀に植民が行われて街が作られました。モントリオールは、北米五大湖の一つ、オンタリオ湖から北大西洋にそそぐセントローレンス川とオタワ川の合流する所に浮かぶ大きな島が街となっています。モントリオール島には標高233mの山があって、この山をフランス語で「モン・ロヤイヤル(山の王)」と呼んだことが、街の名前の語源となっていると言われています。この地は、数千年前にはすでに人が暮らしていた痕跡があり、ヨーロッパから人々がやってきたときにも、インディアンの一部族であるイロコイ族の「オシュラガ」と言う名の砦に囲まれた村がありました。また、イロコイ族がこの地域を「カナタ(集落や定住を意味する単語)」と呼んでいたことから、「カナダ」と呼ぶようになったとフランス人探検家が記しています。モントリール市は最大の島、モントリオール島を始め、大小約70の島で成り立っています。寒冷な気候の地域なので、冬になると島々の周辺の川は凍り付いてしまうようです。

「アビタ67」の特徴

「アビタ67」は、ランドマークにもなりえる大変大きな建築物です。モントリオール島の東側、ほぼ中央に細く突き出た半島のような岸壁に沿って建てられています。長い方が約300m、短い方側でもおよそ60mの長さがあります。このように大きな建物なので、セントローレンス川の対岸からは要塞のようにも見える建物全体を見ることができますが、近くからは全体像を把握することが難しいくらいです。遠くから見る「アビタ67」と、近くで見上げる「アビタ67」では印象が全く違ってきます。12階建てですが、一見して階数がわかるような建物ではありません。設計者のモシェ・サフディが大学生の頃に書いた論文を元に改良が加えられて建設されました。思い思いに組みあげられた積み木のようで、様々な方向に突き出ています。コンクリート製の一つの部屋を工場で作り、建設現場で組み立てていく方法が採られています。365個の部品とも呼べる部屋を積み重ねて、1部屋から5部屋の15種類の住居が作られ、158軒の家になっています。無造作に積み上げたような形なので、部屋と部屋の間に空間のある所もあります。その隙間から、空や遠くの景色を望むこともできます。集合住宅と言っても、1戸建ての要素が多く盛り込まれていて、それぞれの家には庭も付いています。建設当初は、万国博覧会に訪れた高官の為の宿舎として利用されていました。建築から半世紀以上も経っていますが、現在も多くの住民が住んでいて満足度の高い集合住宅になっています。見ごたえのある建物ですが、多くの人が住んでいるので、通常は部外者が敷地に立ち入ることが禁止されているようです。しかし、5月から10月の間には予約すればガイド付きのツアーに参加して、この素晴らしい建物を間近で見ることができます。

 

「アビタ67」のまとめ

設計者のモシェ・サフディは、最初に「アビタ67」の論文を書いた時に、「全ての人に楽園の断片を提供したい」と言っていたようです。モントリオール万国博覧会のテーマは「人間と世界」でしたが、一番身近な世界(空間)は住宅と言えるでしょう。都市の中でありながら、狭さを感じさせない、ゆとりさえあるような集合住宅は、都市の中の理想の住環境の一つではないでしょうか。

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