アトリエ(The Atelier Bangalore)

「アトリエ」のご紹介

 

世界中のどんな所でも子供たちの健やかな成長は大人達の願いではないでしょうか。様々な理由からその願いが叶えられない地域もありますが、可能な限り努力しているのではないでしょうか。人々は、多様な立場からその成長を助けていて、幼稚園などの園舎建築もその一つと言えます。インドの大都市に建設された「アトリエ」は、小規模の建物ですが大人にも様々な意識を持たせることのできる環境に大きく配慮した建物です。

「アトリエ」の設計者

 

「アトリエ」を手掛けたのは、インドで活躍するチトラ・ヴィシュワナートと彼女が率いる「バイオーム環境ソリューション」です。チトラ・ヴィシュワナートは1962年にインドの北東部に位置するバナーラスと言う内陸の都市で生まれました。初等、中等教育を終えた後、アフリカ西部のナイジェリアにあるアウチ工科大学で土木工学を学びました。その後、インド北西部にあるアーメダバードの大学で建築学の博士号を取得しました。学業を終えた後に建築事務所で短期間働きましたが、彼女の学生時代からの理念に従い1990年に夫と共に「バイオーム環境ソリューション」を創設しました。彼女の夫のS・ヴィシュワナートは、水不足を雨水を利用して解消するための様々な解決策を考える「雨水クラブ」を運営していました。「雨水クラブ」は現在、「バイオーム環境ソリューション」に併合されています。彼女の建築理念は環境重視です。特に都市環境に様々な懸念を抱いていて、資材の有効活用や、建設に於ける環境の負担などを考えていて水に関することを最重要視しています。素材に関しては、土を利用することが多く、古代の日干し煉瓦からヒントを得た土を使った圧縮ブロックなどの加工品を使用しています。土は建設用地の近くにあり、耐荷重が大きく耐火性や、再利用にも適していると言っています。彼女の活躍は広く認められ、いくつもの賞を受賞し、複数の大学で教鞭も取っています。

「アトリエ」の所在地

 

インド共和国の南西部にあるカルナータカ州の州都、ベンガルールの中心部から東寄りのドッダカンナリ地区に「アトリエ」が建設されています。ベンガルールは、インド亜大陸の南側およそ半分を占めるデカン高原の南端に近い所に広がる、国内で3番目に人口が多い都市です。この街の名称は、21世紀の初め頃まで国際的には「バンガロール」と呼ばれていました。これはベンガルールを英語読みした時の発音で、2006年に国際的にも正式な名称として「ベンガルール」と呼ぶようになりました。この街の名前が歴史に登場したのは、9世紀の頃で、国内に複数ある「英雄の石」と呼ばれる碑文に刻まれています。街の名称の由来には諸説ありますが、有名な物語として語られているのが、狩りに来た王が森で迷い困っているところを、その地で暮らしていた老婆が粗末ではあるが暖かい食べ物を食べさせてくれました。その事に感謝した王が名付けた「煮豆の町」という意味の名前が年月と共に変化してベンガルールになったと言うお話です。しかし、現在の都市の名称に使われたのは、16世紀にこの街が建設された時にこの地域にあった村の名前でした。標高が高いために比較的穏やかな気候であることから「ガーデンシティ」や、街の産業の特徴から「インドのシリコンバレー」とも呼ばれることがあります。

 

「アトリエ」の特徴

 

「アトリエ」は、建設に使用されたほとんどの材料が再利用できるように考えて建てられました。2016年に完成した幼稚園、若しくは保育園として使用される建物です。設計者が得意とする「土」を原材料として作った建材もありますが、近隣で調達できる材料が使われています。基礎はインド南東部のアーンドラプラデーシュ州のチャパディで採石されている花崗岩が使われています。骨組みは鉄骨が使用されていますが、全てボルトで止められているので、それを外せば再び他で使うことができます。屋根は大きな一枚屋根で8本の柱で支えられ、一方向に緩やかな傾斜が付けられています。この形状は雨水を集めるのに有効的になっていて、その水は建物内の様々なところで使用されています。また、インドの古くからの学習場所としての「木の下で学ぶ」と言うことも表しています。天井の素材は、成長が早く建設地近くで入手しやすい竹が使われています。竹を使った合板は腐食性や断熱効果も高く、遮音性も優れています。天井には複数の透明な開口部が作られて、屋内の明るさを保証しています。屋内は基本的に1つの大きな空間になっていて、仕切りは紙の筒を並べたものが使われています。その仕切り壁の周りには椅子や机などの家具が配置されていますが、全て素材は紙で出来た段ボールのようなハニカム素材が使用されています。小さな子供でも軽くて利用しやすく、多少乱暴に扱っても壊れない頑丈さを持ち合わせています。

「アトリエ」のまとめ

 

設計者のチトラ・ヴィシュワナートは、建物に対する要求が常に変化するのであれば当該の建物の永続性は必要ないと考えています。確かに使用しているときには、使う人の安全を最大限考慮しないといけません。しかし、使わなくなった建物をそのまま放置するのではなく、使える材料は再び他の建物を建築するときに再利用することも大事です。「アトリエ」は先のことも見越して、様々な素材が次も使えるように考えられて建設されています。地球環境を念頭に入れ、形を変えて次の建物に生まれ変わらせる事も想定した建物が「アトリエ」です。

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