ロータス寺院(Lotus Temple)

「ロータス寺院」のご紹介

 

世界で最も多くの人が訪れている建築物は中東の国イランで発祥した宗教の施設です。信者でなくとも訪問することのできるバハイ教の礼拝所は、1986年に完成してから15年で世界中の信者の数の10倍以上の人が訪れています。インドの首都デリーに建つ「ロータス寺院(ロータス・テンプル)」は、一見の価値がある水盤の上に咲く人工の巨大な蓮の花です。

「ロータス寺院」の設計者

 

「ロータス寺院」の建設に当たってはデザインと設計のコンテストが行われました。見事その設計とデザインを勝ち取ったのが、イラン人建築家でバハイ教の信者でもあるファリボルズ・サーバです。1948年にイラン北東部の都市、マシュハドで生まれ、その近辺のいくつかの町で子供時代を過ごしてきました。テヘランの大学で建築を学びましたが、建築家を目指したのはまだ小さな子供の頃でした。母親が語ってくれた素晴らしい建物の思い出話を聞いて彼は建築家を志したそうです。彼の母親は、イランの北側にある現在はトルクメニスタンの首都アシガバードで生まれ育ち、その街に建つ様々な建築物について彼に話しました。特にバハイ教の礼拝所は、彼女にとってとても大事で素晴らしいと感じていた建物でした。しかし、1948年に起きたアシガバード地震によって、その礼拝所が崩壊したことを大変悲しんだということでした。そして、彼にその様な素晴らしい建物を作ることのできる仕事についてほしいと願ったようです。大学を卒業した後は、主にイラン国内や、イラン大使館など自国に関わる建築物を手掛けていました。「ロータス寺院」の設計コンテストの為に彼は、インド中の100以上の神殿や礼拝所をめぐり、インドの古来よりの考え方や様々な宗教を観察して回りました。その過程で、「ロータス寺院」の建設計画は彼にとってかけがえのない仕事となり、結果的に彼の名前を広く世界に知らしめる事となりました。

「ロータス寺院」の所在地

 

インド共和国の首都デリー南部の広大な敷地にバハイ教の礼拝所「ロータス寺院」が建てられています。インド亜大陸の付け根に近い位置にあり、北緯は奄美大島と同じくらいです。内陸の温帯域に当たりますが、日本とは違う季節の移り変わりがあります。3月から6月にかけて非常に気温が高くなり、雨もあまり降りません。その後6月の終わり頃から季節風が吹き始め、10月の頃までは雨季になります。年間降水量のほとんどはこの頃の雨によってもたらされています。11月から2月頃までは乾季となって最高気温が20℃を少し上回るくらいで、とても過ごしやすい気候となります。この街は、およそ300km下流でガンジス川と合流するヤムナー川(ジャムナー川)の西側に開けた都市で、古くから交通の要所として重要な所でした。このような位置にあった事から様々な権力者や王朝の首都を務めてきましたが、古代の交易路である長大なシルクロードの1拠点にもなっていました。元々の街をオールドデリーと呼び、その南側に20世紀の初め頃イギリスによって建設されたのがニューデリーです。現在は、庁舎や議事堂など国の政治や経済の中心を担っているのがニューデリーとなっています。


 

「ロータス寺院」の特徴

 

誰が見ても神聖な花の1つ、蓮の花を表していると分かる建造物が名前の通りの「ロータス寺院」です。この建物は27枚の花弁で構成されています。全ての花弁は、コンクリートで作られていて、その上をギリシャで採石された白い大理石が覆っています。1番外側の9枚の花弁は外に向けて開かれ、9つのアーチ型になった入り口を作っています。2番目の花弁は内側に向けられていて、少し開いたような形になっています。中央の花弁はほとんど閉じた状態ですが、地上高が34mある天頂部は開けられて天窓になっています。9本の放射状に伸びた梁と9つの頂点がある星形のようなガラスの天窓は、中央の1,300人を収容できる礼拝所が自然光で満たされるように作られています。2番目と3番目の花弁の間も隙間が作られていて、自然の光が入るようになっています。建物を取り巻くよう設置されている9つの水盤は蓮の葉をイメージして作られていますが、大事な役割があります。この地域は外気温が40℃を超える時もあり、屋内の気温を下げる役割をこの池が果たしています。また、2組のファンが室内の気温を冷却する役目をしています。1組は排気の為に、もう1組は礼拝所から地下室に空気を送り、冷却して循環させています。建物の入り口や中央の礼拝所は地面から1段高く作られているので、池を渡る9本の橋は階段を上がって渡るようになっています。

「ロータス寺院」のまとめ

 

「ロータス寺院」が完成した時に、世界中の建築家や建築を教える大学の教授、建築雑誌の編集者など建築関係の様々な人物から色々な形で称賛されました。そして、多くの建築に関する美術的な分野の賞も受賞しています。設計者のファリボルズ・サーバは「建築は常に芸術」と言っていますが、「ロータス寺院」は正にその通りの建築物と言えるでしょう。信者以外でも訪れることのできる「ロータス寺院」は、デリーのランドマークであり、人気のある観光地の一つでもあります。

 

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