ホルムズ2(Hormuz 2)

「ホルムズ2」のご紹介 

 

 歴史上の重要な所であり、自然界に於いても珍しいスポットとなる小さな島が中東にあります。そこに建設された宿泊施設は、まるでおとぎ話に出てくるような建物です。「ホルムズ2」の建設は、島の活性化と自立を手助けする目的があり、島で暮らす人々の事も配慮された上で行われました。 

「ホルムズ2」の設計者 

 

 「ホルムズ2」のプロジェクトを手掛けたのは、イラン人のモハマドレザ・ゴドウシです。彼は、1976年にイランの首都テヘランで生まれました。テヘラン大学で建築を学び、学生時代にZAVと言うグループに所属して、家具のデザインやオブジェの作成、それらの展示会などを行い、小規模なプロジェクトを手掛けていました。学業を終える頃には都市計画にも興味を広げ、深く考察するようになりました。その過程で、それまでの建築に対する考えが少し変わり、建物は人々を閉じ込めるものではないと思うようになりました。近年でも戦争や紛争の起こる地域なので、都市が破壊される事を目の当たりにして、それを憂い、建築で出来る色々な事柄を模索しています。2006年にZAVはZAVアーキテクトとなり、建築事務所として正式に運営されるようになりました。学生時代の仲間や、社外の様々な知識や技術を持つ人々とも連携して、多くの問題を解決できるような建築を目指し、個人では達成できない目標も、多くの人が関われば叶うと彼は信じています。争いによって瓦礫となった都市で希望を失いかけた人々に、再び望みを持てるよう、建築で何ができるかを日々探求し、小さなことからでも可能にしていけるように務めています。 

「ホルムズ2」の所在地 

 

 「ホルムズ2」が作られているのは、ペルシャ湾とアラビア海を繋ぐホルムズ海峡に浮かぶホルムズ島の西側にある海岸沿いです。イラン・イスラム共和国のペルシャ湾とオマーン湾に面するホルモズガーン州に含まれるホルムズ島は古くから重要な島でした。この島は東京都の三宅島より一回り小さく、人口もわずかです。しかし、古代ギリシャの時代にはすでに海運による交易の重要地で、シルクロードの時代にも大事な役割を果たしていました。大航海時代の初め頃には、世界中を回ったマルコポーロもこの島を訪れています。目だった産業のない島ですが、珍しい風景が見られる島として、近年では観光業に力がそそがれるようになりました。この島にはゴラック(または、ゲラック)と呼ばれる酸化鉄を多く含む土が多く、赤い色をした砂浜があります。砂浜には様々な鉱物の粒子も混ざり、日没直前や日の出直後には赤い砂浜がキラキラと輝く様子が見られます。また、海の水と混ざり合って、一定の幅で海水が赤く染まる様子も見ることが出来ます。このほかにも様々な鉱物によって色々な色の付いた砂があり、レインボーサンドと呼ばれる天然の色がついた数種類の砂を詰めた瓶などのお土産品があります。他にも風雨や海水に浸食された奇岩が立ち並ぶ場所もあり、人々を魅了しています。赤い砂浜と青い海の美しさを指して、この島は「レインボー・アイランド」とも呼ばれています。 

 

「ホルムズ2」の特徴 

 

 「ホルムズ2」は正式名称を「マハラ・レジデンス」と言います。「マハラ」とは、ペルシャ語で冒険を意味する単語です。赤、青、黄色、緑に着色された大小合わせて200個のドームを組み合わせて作られている総合的な宿泊施設で、2019年に完成しました。このドームはアースバッグ工法と言う方法で作られているのが一番の特徴です。この工法は、イラン系のアメリカ人建築家によって編み出された工法で、古来より使われてきた工法を、近代的な建設方法と組み合わせ、「スーパーアドベ」と呼ばれています。簡単に説明すると、アースバッグと呼ばれる土嚢を積み重ねて作る家です。円形の筒状にアースバッグを積み重ねて行き、ドームの屋根に当たる部分には鉄製の骨組みが置かれ、更にその上にアースバッグを置いてドームの形にします。数日間乾かした後に仕上げの上塗りがされます。アースバッグに入れられる土は、赤土や粘土質の土がよく、「ホルムズ2」は、この島の浚渫(しゅんせつ)で出た土や砂が利用されています。「スーパーアドベ」工法には多くの利点があります。その中には、特別な技術を要しないという事があって、子供や力の弱い人でも建設に参加できると言う点があります。設計者はこの点を重視して、島に住む人々を巻き込んで「ホルムズ2」を建設しました。カラフルな色はこの島に存在する天然の色を表しています。室内の色合いも外観と同じ色が使われ、家具はこの島で作られた物が使われています。 

「ホルムズ2」のまとめ 

 

 「ホルムズ2」の周りには、他の家や建物などの人工物はありません。加えて木々や他の植物もほとんど生息していません。あるのは、背後の岩山と海と砂だけです。一見味気ないような風景の中に、色とりどりのドームの群れが見えるのは少し不思議な感じがします。「スーパーアドベ」工法には多くの可能性があります。地震などの災害にも強く、土や砂があれば作ることが出来ます。他の惑星でも建設することが可能であるとも言われています。「ホルムズ2」は火星に建設されていても違和感がないかもしれません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。