ING ハウス(ING House)

「ING ハウス」のご紹介

 

変わった形の建物に周辺の人々が愛称をつけることはよくあります。ヨーロッパの都市に建設されたオフィスビルは、その建物を見た人の感性によって様々なニックネームで呼ばれています。「ING ハウス」は、靴やボート、アイロン等と呼ばれ、それらによく似た形に見えます。

「ING ハウス」の設計者

 

「ING ハウス」を手掛けたのは、オランダのアムステルダムに本拠地を置く建築事務所、「MVSAアーキテクツ」です。この事務所は、南米大陸の入り口の国コロンビアの首都ボゴタで1959年に生まれたロベルト・マイヤーと、アムステルダム近郊のアムステルフェーンで1960年に生まれたイェルーン・ヴァン・スホーテンが共同で創設しました。1989年にマイヤー+ヴァン・スホーテン アーキテクテンと言う社名で活動を開始しました。彼らは自動車や飛行機など他の機械の構造や設計も取り入れて、通常の建物の可能性の幅を広げています。また、近年よく耳にする持続可能な建築物に関しても独特な意見を持っています。例えば、周辺地域との関連性や、当該の建物の使用について常に柔軟性を持たせることが挙げられます。デザインに関しては上品でありながら、実用性の高い物や、視覚的だけでない透明な構造を目指しています。オランダの主にアムステルダムを中心として様々な企画を手掛けていますが、2013年にイェルーン・ヴァン・スホーテンが会社を去って、「チームVアーキテクチャー」と言う別の事務所を新たに開きました。創設者2人の名前を取って「MVSAアーキテクツ」と改名していましたが、ロベルト・マイヤーが会社を引き継いで事務所の名称はそのままにしています。

「ING ハウス」の所在地

 

「ING ハウス」はオランダ王国(正式名称はネーデルランド王国です)の首都、アムステルダムのザイダス地区に建てられています。この街の歴史は古く、13世紀に洪水を防ぐ目的でアムステル川に堤防(ダム)が建設されたことから街の名称がアムステルダムと付けられました。交易の拠点として発展してきた街ですが、歴史に名を遺す芸術家や作家もいました。抽象的な絵を数多く描いていたヴィンセント・ファン・ゴッホの作品を納めたゴッホ美術館は世界で最大のコレクション数を誇っています。また、ユダヤ人のアンネ・フランクが第二次世界大戦中に、この街で隠れ住んでいた時に書き記した「アンネの日記」はユネスコの世界遺産の中の世界の記憶に登録されています。「ING ハウス」が建つザイダス地区は、市の中心部から南に広がる地域が開発された地区です。この地域を開発する案は20世紀の初頭には出されていましたが、世界規模の戦争などによって実際に開発が行われるようになったのは1950年代の終わりころからです。主要な鉄道や高速道路を中心として広がり、地区の南西には空港もあります。ビジネス地区としての役割が大きいところですが、学校や病院、裁判所など様々な公共施設もあり、高層建築物にはオフィスだけでなくショッピング街や住宅などが入り、高密度で多機能な建築物を推進しています。

 

「ING ハウス」の特徴

 

2002年に完成した「ING ハウス」には、スポーツカーやスニーカーなど多くの愛称があります。細く見える鋼鉄製の柱の上に透明な物体が乗っているような見た目は、どうかすると何かの生物のように思えます。左右それぞれ8組のV字型になっている9から12mの高さの鋼鉄製の柱が建物を支えていて、建物全体が空中に持ち上げられているような印象があります。柱はコンクリート製のブロックの土台に繋がれていますが、橋梁の構造に使われる揺れを抑える工法が組み込まれています。建物の外壁はほぼガラスで、下部やカンチレバーと呼ばれる片持ち梁の講堂部分は外壁にアルミニウムが使われています。屋内の壁や仕切りなどもほとんどがガラスで、非常に透明感のある建物です。高床式と形容されることもある建物で、1階の地上部分はエントランスに使われ、各部屋は全て地上高9m以上の高さから始まっています。これは、すぐ横を走る高速道路より高くなるようにと考えられた結果で、建物内で働く人々が閉塞感を味わわないようにと考えられています。また、同じくこの建物を利用する人に安息感を与えるために、建物内には6個所の庭が作られています。この庭も地球上の様々な地域からやってくる人を考慮して、ジャングルを思わせる樹木のようになるシダや南国のヤシの木、アジアなどに生息する竹、松の木も植えられ、6カ所それぞれに違うテーマで作られています。換気なども極力自然を利用するようになっていて、この建物で働く人が気持ちよく過ごせるような工夫が盛り込まれています。

「ING ハウス」のまとめ

 

長さが140mで、幅が28mの「ING ハウス」は、その外観から実際の大きさより華奢に見えます。「ING ハウス」は多国籍の金融企業が依頼して本社として建設されましたが、2014年にこの建物から本社業務を撤退して、現在は多くの企業が入るオフィスビルとなり、「インフィニティ」と名称が変わっています。名前が変わっても、人が働く場所であることには違いは無く、見かけは未来的で工業的ですが、使う人を思った温もりのある建物となっています。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。