北ドイツ州立銀行本店(Norddeutsche Landesbank)

「北ドイツ州立銀行本店」のご紹介

 

古い歴史を持ち、その時々に於いて重要な役割を果たしていた街には多くの建物が建設され、現在も残されています。ドイツ北部の都市も交易の拠点として栄え、教会や役所、邸宅などが建設されました。中世の面影を色濃く残している街の中心地に1区画を丸々使って建てられたガラス張りのビルは、その街の過去と未来を映し出したような印象があります。「北ドイツ州立銀行本店」は、市民に憩いの場所も提供している大規模な建築物です。

「北ドイツ州立銀行本店」の設計者

 

「北ドイツ州立銀行本店」の設計を担当したのは、ドイツの南西部にあるシュトゥットガルドに本拠地を置く、ベーニッシュ・アーキテクテンの創設者シュテファン・ベーニッシュとそのスタッフです。シュテファン・ベーニッシュは1957年にシュトゥットガルトで生まれました。彼の父親はドイツの高名な建築家だったギュンター・ベーニッシュです。ミュンヘンの大学で哲学と経済学を学んだ後に、南部の都市カールスルーエにある工科大学で建築を学びました。大学を卒業してからの2年間は、父親が共同設立者となっていた建築事務所で働き、実務経験を重ねました。1989年に独立して、建築事務所のベーニッシュ・アーキテクテンを開設し、本格的に活動を開始しました。彼は建築家として活動し始めた当初から、持続可能な建物を作る事に重点を置いていました。現在ではよく聞く環境に配慮した様々な事柄も、1980年代には公害問題などがあっても広く知れ渡っていませんでした。そのような時代に未来を見据えた持続可能な建築を志した彼は、先見の明があったと言えるのではないでしょうか。今では当たり前と思われる事柄も、1から考えていて、誰も思いつかなかった方法を編み出し、当時は革新的とも言われていました。現在はアメリカにもオフィスを置き、複数の大学で教鞭も取っています。

「北ドイツ州立銀行本店」の所在地

 

「北ドイツ州立銀行本店」が建てられているのは、ドイツ連邦共和国の北部にある都市、ハノーバー(ハノーファー)の中心部です。この街は、ドイツに16ある州の内、2番目に広いニーダーザクセン州の州都を務め、国の北部を流れる主要な河川のライネ川が作り出した渓谷に街が広がっています。ライネ川は水上輸送にも使われ、川沿いに街道も作られたことから、この街は交易の拠点となって栄えてきました。繁栄する街は様々な権力者が欲するようになりますが、早くから城壁で囲んで街を守っていました。城壁の一部は現在も残っています。商業が盛んになって、中世ヨーロッパのバルト海に面した多くの街の商人たちが作った、ハンザ同盟にも参加していました。そのような当時を偲ばせる、16世紀に建てられた木造5階建ての建物が現存しています。現在も商業はこの街の重要な産業で、世界で2番目の広さを誇る展示場があり、大規模な見本市が頻繁に開催されています。また、文化振興にも力を注いでいて、21世紀に入ってユネスコが企画した、創造都市ネットワークの中の音楽都市として登録されています。30以上の劇場やコンサートホールがあり、古典音楽から最新の曲まで多様な音楽を鑑賞することが出来ます。また、400年の歴史を持つ、州立の管弦楽団の本拠地もこの街です。

 

「北ドイツ州立銀行本店」の特徴

 

「北ドイツ州立銀行本店」は、2002年に完成した18階建てのかなり大きな建物で、100m×150mの街の1区画のほとんどを使用しています。建物そのものはコンクリート製で、ガラスの外壁が建物を覆っています。住宅地と商業地の境に建っているので、周囲の道に沿うように作られていますが、住宅がある面は4階建てで、大通りに面している方は7階になっていて、周囲の建物と高さを合わせるように作られています。その中央に近い場所に、思い思いの方向に突き出たような18階建ての銀行の建物があります。中心部の建物の周りには、中庭が作られていて、更に中庭を囲むように複合施設となっている建物があります。中庭に作られている水盤のような池は、いくつかの役割があります。雨水をためる事と、夏季の気温が上がる頃に建物を冷却する為です。周囲の低い建物には店舗やレストラン、様々なオフィスが入っていて、中央の建物を通って行き来できるように、2本の連絡用通路が作られています。ガラス張りのチューブ状になっているので、空中散歩のような印象があり、天候を気にすることなく通行できるようになっています。ガラスで囲われている理由は、日中の人工照明を減らす事と、四方を道路に囲まれていることの騒音を軽減する事です。加えて、比較的冷涼な気候であるための暖房を控える目的もあります。

「北ドイツ州立銀行本店」のまとめ

 

「北ドイツ州立銀行本店」の周りには古い建物もたくさん残されています。「北ドイツ州立銀行本店」の建物そのものは近未来的な印象がありますが、様々な部分で周囲との協調が図られています。大通りに面しているガラスはよく反射するので、周りの街並みや空が見えます。しかし、住宅地に面している方は、普通の窓ガラスです。設計者は早くから持続可能な建物を作ることを考えていましたが、周囲の街並みに配慮した建物にすることも重要と考えているようです。「北ドイツ州立銀行本店」は、歴史ある街でも、近未来的なガラスの建物が街並みに馴染める良い例と言えるのではないでしょうか。

 

 

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