クルサール国際会議センターと公会堂(Palacio-de-Congresos-y-Auditorio-Kursaal)

「クルサール国際会議センターと公会堂」のご紹介

 

およそ100年前に建設された最初のクルサールはゴシック様式のお城を彷彿とさせる建物でした。50年後に解体された後に、次代のセンターを建設するために設計競技会が行われましたが、優勝した設計案が非常に複雑だったために建設には至りませんでした。次の建設計画に沿って工事が始まりましたが、今度は土地の所有権に問題が発生して工事は中断してしまいました。このような紆余曲折を経て完成した「クルサール国際会議センターと公会堂」は、浜に打ち上げられた岩を想定した2つの建物で成り立っています。

「クルサール国際会議センターと公会堂」の設計者

 

建設場所が空き地となってから数十年が経って、再び建設計画が浮上し、設計競技会が開催されることになり、ヨーロッパや日本からも参加がありました。2代目の「クルサール国際会議センターと公会堂」の設計を勝ち取ったのは、スペイン人建築家のホセ・ラファエル・モネオでした。1937年にスペイン北東部のナバラ州のトゥデラと言う街で生まれた彼は、父親の勧めで建築家を目指し、首都のマドリッドにある大学で建築を学びました。卒業後は、オーストラリアのシドニーにある有名なオペラハウスを手掛けたデンマークの建築家、ヨーン・ウツソンの元で働いていました。数年後の1973年に独立し、自らの建築事務所を開設しました。彼は建築に対して独自の考えを持っていて、いくつかの名言がありますが、いずれも建築物に愛着があることが伺えます。例えば、「建物は常に図面や建築モデルより優れている」と言っています。また、素材を大事にしていて、「建物は形より建築材料によって価値が変わる」とも言っています。自分のスタイルと言うものを持っていない彼は、いかにも彼らしいと言われる建築物はありません。しかし、建築場所の景観を大事にしながら、自らが手掛けた建築物によってその場所の未来が開けることを念頭に入れているので、似た雰囲気の建物があることがあります。高齢と言われる年齢に達した今でも、建築家として活躍しながら、いくつかの大学で後進の指導にもあたっています。

「クルサール国際会議センターと公会堂」の所在地

 

スペイン王国の北側、北大西洋に続くビスケー湾に面したバスク州のサン・セバスティアンと言う街に「クルサール国際会議センターと公会堂」が建っています。街の名称は、聖人の名前で、以前はサン・セバスティアンとだけ表示されていましたが、現在の正式名称は「ドノスティア--サン・セバスティアン」となっています。ドノスティアはバスク語でサン・セバスティアンと同じ意味を持っています。気候は温暖で、夏季は30℃を超えることはめったに無く、冬でも氷点下になることは稀です。古くから観光都市として栄えている街で、1年を通して様々な祭りやイベントが開催されています。歴史が古く、最大の祝祭が毎年1月20日に行われる聖セバスティアンの日で、タンボラーダと言うお祭りです。大人たちは、コックや兵士の扮装をして太鼓を打ち鳴らしながら街を練り歩きます。日本では太鼓祭りと訳されるこのお祭りの日は、一日中太鼓の音が街中に響き渡ります。毎年8月にはクラッシックの音楽週間があり、中旬には世界的な花火大会が執り行われています。国の代表や様々なチームが花火の技術を競い、期間中は毎晩花火が打ち上げられ、最終日には優勝者が発表されます。また、9月の上旬には伝統あるバスク週間が開催され、下旬には国際映画祭が開かれます。

 

「クルサール国際会議センターと公会堂」の特徴

 

「クルサール国際会議センターと公会堂」の夜間の姿は、日本古来の木や竹の骨組みに和紙を張り付けた照明器具である行燈を連想させるような建物です。ウルメア川がビスケー湾に注ぐ河口のすくそばに建設された「クルサール国際会議センターと公会堂」は、設計者のホセ・ラファエル・モネオが「海岸に打ち寄せられた岩」若しくは、「河口に取り残された岩」と言う概念でデザインした2つの建物です。見る角度によってわずかに形の違う立方体で、真四角の建物をほんの少し傾けた不均衡な形をしています。1番の特徴は、乳白色のガラスで全体が覆われていることです。日中はあまり存在感はありませんが、夜間に屋内の照明が灯ると遥か彼方からでも見える建物となっています。海上から見れば灯台のようにも見えるかもしれません。屋内の照明がよく映る事から、様々なイベントに合わせて色々な色で内側からライトアップできるようになっています。平行に渡されたアルミの桟に半透明のガラスがはめ込まれて、特殊な樹脂で接着されています。このガラスの外壁は2重になっているので、断熱の効果があります。下層階には大きな透明の窓があって西側のウルグル山と東のウリア山を望むことが出来ます。屋内の壁や階段脇、スロープなどには木材がふんだんに使われていて、温もりを感じさせるような空間になっています。

「クルサール国際会議センターと公会堂」のまとめ

 

「クルサール国際会議センターと公会堂」は、建設用地の形状が変形の3角形の為に、2つの建物で構成されています。小さい方が国際会議場で、大きい方にはコンサートホールなどが入っています。先代のクルサールとはずいぶんと雰囲気が違うために、建設当初はそのデザインに批判もあったようです。しかし、毎年行われる音楽祭や映画祭が「クルサール国際会議センターと公会堂」で開催される会場として、近年では観光名所の1つとなっています。

 

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