ゲートウェイ アーチ(Gateway Arch)

「ゲートウェイ アーチ」のご紹介

 

建国間もないころのアメリカ合衆国は現在よりずっと小さい国でした。発見されたばかりの新大陸はヨーロッパの国々が領土を主張し、植民地として管理していました。18世紀の初めに、アメリカ合衆国がフランスから買い取った広大な土地を調べるために探検隊が結成されました。大きな成果を携えて探検を終えた彼らを称える目的で建設されたのが、世界最大のアーチ建築である「ゲートウェイ アーチ」です。

「ゲートウェイ アーチ」の設計者

 

「ゲートウェイ アーチ」は建築設計競技会で担当する建築家が決められました。170件以上の応募の中から、最終的に満場一致で採用された案を提出したのが、エーロ・サーリネンです。彼は、フィンランド南部のキルッコヌンミと言う街で1910年に建築家の父の元に生まれました。キルッコヌンミは現在のフィンランドの首都ヘルシンキの近郊にある街です。10代の始めに父親が大学で教鞭をとるために家族で渡米しました。20歳になる前には、美術を学ぶためにフランスの学校へ入学して、彫刻と家具のデザインを勉強しました。その後、アメリカの大学で建築を学び、本格的に建築家として活動する前に2年の間ヨーロッパや北部アフリカを旅してまわっています。旅行から帰ってから、父親の経営する建築事務所で働き始めました。彼は、建築設計だけでなく、椅子やテーブルなどの家具のデザインでも高く評価されています。彼にはたくさんのエピソードがあります。例えば、オーストラリアにあるシドニーオペラハウスは、彼がいなかったら建設されていませんでした。当時の技術では到底無理だと言われていたデザインを最終的に押し通したのがエーロ・サーリネンで、ヨーン・ウツソンの名を世界的に広めました。また、「ゲートウェイ アーチ」のコンペには父親も参加していて、番号だけで最終の5件が選ばれた時に最終選考に残ったとの知らせは、間違って父親に届き、その後訂正され、彼らは2回お祝いをしたと言われています。彼は、「ゲートウェイ アーチ」が完成して14年後の1961年に、脳腫瘍のために51歳と言う若さでこの世を去っています。

「ゲートウェイ アーチ」の所在地

 

アメリカ合衆国の西部開拓への出発点となったのがミズーリ州のセントルイスです。「ゲートウェイ アーチ」は、この街の入り口とも言えるミシシッピ川の西岸に建設されています。セントルイスは、アメリカ合衆国のほぼ中央に位置する内陸の大都市です。アメリカで2番目に長いミシシッピ川と、その支流で国で1番長いミズーリ川が合流する地点の南側に広がる街で、ミシシッピ川の対岸はイリノイ州になる州境でもあります。内陸の都市ではありますが、ミシシッピ川の水運による商業の要所なり、港湾都市として発展してきました。1803年に当時のフランス第一共和国からアメリカ合衆国が領土のルイジアナを買収して、西部開拓の探検が行われ、その出発点がセントルイスでした。発見隊と呼ばれた陸軍の「ディスカバリー軍団」と民間人の有志、合計30名からなる探検隊は、2年の歳月をかけて太平洋岸にたどり着き、セントルイスまで帰ってきました。動植物や地形、地質の調査と先住民との交易を目的とした探検でした。そのような歴史からこの街は、「西部へのゲートウェイ」や「ゲートウェイ・シティ」と言うニックネームが付けられ、街のシンボルマークには「ゲートウェイ アーチ」を意匠化したものが使われています。

 

「ゲートウェイ アーチ」の特徴

 

1965年におよそ2年半の月日をかけて完成したのが、現在も世界で1番高い記念碑である「ゲートウェイ アーチ」です。高さが192mで、南北の脚元間も192mあります。カテナリー曲線と呼ばれる、紐の両端を持ってたわませた時にできるカーブの形状を基本とした、とても自然体に近いアーチになっています。断面は正三角形で下部から螺旋を描くように徐々に細くなっています。1番下の地上部分の三角形の1辺が16.5mで、最上部の1番細いところは1辺が5mです。基礎部分はそれぞれ18mの深さまで掘られ、コンクリートが充填されています。地上から91mまでは鋼の骨組みをコンクリートで覆っています。外壁はステンレス鋼で覆われていて、その部品はおよそ1,000km離れたペンシルベニア州ウォーレンの工場で作られ、鉄道で運ばれてきました。シンプルな形ではありますが、少しずつ傾斜して頂上で1つに繋げるには綿密な計測と計算が必要でした。現代ではコンピューターを使えば済むことですが、当時は、気温でわずかに伸び縮みする金属の調査を行いながら、人の手で計算していました。形状の計算はもちろんですが、耐震や風による耐性も考慮され、秒速70mの強力な嵐にも耐えるように作られています。アーチの中は中空になっていて、最上部にある展望エリアまで登ることができます。1,000段以上の非常階段とゴンドラのようなトラムシステムが利用できます。展望エリアは長さ20m、幅2mで、細長い窓からセントルイスの街並みやもっと遠くの風景を見ることができます。

「ゲートウェイ アーチ」のまとめ

 

陽光に輝く巨大なアーチが半世紀以上も前に建設されたとはとても思えません。シンプルな見た目ですが、建設に当たっては非常に難しい部分もあって、60階建ての高層建築物の方が簡単に建設できるとも言われていました。足場も少なく作業をする人も危険を伴うことが分かっていましたが、当時、ささやかれていたような作業中の死者を出すことなく、作業の安全を最重視して建設されたことも評価されました。完成してすぐに街のランドマークとなった「ゲートウェイ アーチ」は、これからも西部への入り口として建ち続けるのではないでしょうか。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。