ホーリー ファミリー シュライン(Holy Family Shrine)

「ホーリー ファミリー シュライン」のご紹介

 

宗教建築には大きく分けて2種類の大きさがあります。大抵の宗教では、大規模で堂々とした建築物が建てられ、多くの人を迎え入れる中心的な場所があります。一方で、地域に根差した小規模な施設が作られています。そのような施設は、大聖堂や総本山などの畏怖を与える荘厳な建物とは違い、近くに住む人々が気軽に訪れることが出来る身近な場所になっています。小高い丘の上に立つ「ホーリー ファミリー シュライン」もその1つです。

「ホーリー ファミリー シュライン」の設計者

 

「ホーリー ファミリー シュライン」を手掛けたのは、アメリカの建築事務所BCDMアーキテクツのジム・デンネルです。彼は、ネブラスカの大学で建築を学び、卒業以降は地元の信仰や教育に関する企画に貢献してきました。BCDMアーキテクツの名称は、現在の主力メンバーの名前の頭文字をとって付けられています。この会社は、2004年に2つの建築事務所が合併した会社です。1つは、1976年にデイブ・ベリンジャーともう1人の建築家がネブラスカ州の州都オマハに共同で立ち上げた事務所で、オマハでは初めてのアフリカ系アメリカ人が運営する建築事務所となりました。もう1つは、デイブ・チャッチョが1982年に開設した造園設計の会社に、ジム・デンネルが1988年に入社して建築も業務に加えました。2つの会社は業務の理念が似ていたことから、共同で運営することに決めたようです。それは、教育の重要性と信仰の大切さです。特に教育に関する事柄に大きな関心を持っていて、地域の人々が学び、成長する事を建築の場面で貢献しています。また、信仰についても強い信念を持っていて、人々を助け、それぞれが最大限の力を発揮できるように手助けしたいと考えています。このような理念を合わせて、人々を育む環境を整える為の建築に力を注いでいます。

「ホーリー ファミリー シュライン」の所在地

 

「ホーリー ファミリー シュライン」は、アメリカ合衆国のほぼ中央にあるネブラスカ州の西の端に近いグレトナと言う町に建設されています。アメリカには、20世紀の中頃から州をまたぐ長い高速道路網の構想が立ち上がり、整備されてきました。その中の州内を東西に繋ぐ州間高速道路80号線を見下ろす小高い丘の上に、「ホーリー ファミリー シュライン」が建っています。グレトナはサーピー郡に含まれる町で、州都オマハの南西約35kmの所にあります。19世紀の終わりに、州の南からオマハへ向けて敷かれた鉄道がこの町が建設されたきっかけです。鉄道が敷かれる以前は、現在のグレトナ近郊には比較的大きな町がありましたが、鉄道の利便性の恩恵を受けることが出来なかったために衰退して、今のグレトナの町に取って代わられました。この地域は、州の西の端にあたり、ネブラスカ開拓の始まりの地と呼ばれていますが、開拓以前は、州都の名称の元となった先住民のオマハ族の領土でした。アメリカ大陸の東側に上陸したヨーロッパの人々が、西へ向けて行った探検隊(発見隊)が現在のネブラスカ州へ始めて足を踏み入れた場所と言われています。アメリカで最長のミズーリ川に沿った地域で、多くの野生動物や植物が生息している自然豊かな所です。州都から近いこともあり、休暇を自然の中で過ごす多くの人が訪れる場所です。

 

「ホーリー ファミリー シュライン」の特徴

 

「ホーリー ファミリー シュライン」はガラスの箱を木材で覆ったような建物です。高さが約14mなので、通常の建物の4~5階分ありますが、外観の形状でそれほど大きな建物には見えません。いわゆる三角屋根の四角い建物で、付近の農家にある納屋のような見た目になっています。この施設を紹介するビジターセンターは、世界の各地で遺跡として見られる竪穴式住居と同じような作り方になっていて、イエスの墓を想起させるようになっています。骨組みは鉄骨ですが、木組み細工のように、わずかなアーチを描いた木材を交互に組み合わせて美しい外観を作り出しています。使用されている木材は、アメリカ大陸の先住民が古くからカヌーやトーテムポールと呼ばれるシンボルの柱を作るために利用していたヒノキ科のベイスギの1種です。木材の組み合わせで描かれた模様は、近辺で育てられている麦の穂を模した形になっていて、収穫前の金色に実った麦を思い起こさせます。建物の入り口は、石灰岩を使ったレンガのような形の石組で作られていて、重厚な木の扉が取り付けられています。礼拝堂の正面のガラスには、この礼拝堂を表している図柄がエッチングされています。周囲の壁は全てガラスになっているので、小高い丘の上に建つ建物の屋内からは360度の風景を見ることが出来ます。

「ホーリー ファミリー シュライン」のまとめ

 

設計者が「ホーリー ファミリー シュライン」のデザインをこのようにしたきっかけは、アーカンソー州に建つ礼拝堂から発想を得たと言っています。「ホーリー ファミリー シュライン」は、簡素なデザインなのであまり大きくは見えませんが、丘の上に建つ姿は印象的な物があります。しかし大きな建物であっても、周囲の景観に違和感を持たせないのはシンプルな見た目だからなのではないでしょうか。夜間には礼拝堂の明かりが外からよく見えて、近くを走る高速道路を走る車の為の陸の灯台のような役割も果たしているようです。

 

 

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