フェリペ王子科学博物館(Museodelas Ciencias Príncipe Felipe)

「フェリペ王子科学博物館」のご紹介

 

巨大な深海魚の精巧な骨格標本の様にも見える、非常に美しい外観をした博物館が地中海沿岸の都市に建設されています。芸術科学都市と名付けられている敷地内の文化や芸術の為の複数の建造物群の1つです。プラネタリウムや劇場、水族館、この地域固有の植物と共に展示されている彫刻が鑑賞できる庭園などが備えられています。その中でも、現在のスペイン国王の名が冠されている「フェリペ王子科学博物館」は、ひときわ目を引く建物となっていて、地元出身の建築家が手掛けています。

「フェリペ王子科学博物館」の設計者

 

「フェリペ王子科学博物館」を含む芸術科学都市の複数の建物を手掛けたのは、スペイン人のサンティアゴ・カラトバ(サンティアゴ・カラトバ・バイス)です。1951年にスペインのベニマメットと言う町で生まれました。ベニマメットは現在、バレンシア市に併合されています。彼の苗字のカラトバは中世の貴族にもあった苗字で、騎士団にもその名が連ねられていました。初等教育は生まれた町で受け、絵画も習い、中等教育の頃には、交換留学生としてフランスの学校に通っていました。その後フランスの美術系の学校へ進学しようとしたのですが、社会的混乱の為に断念しています。その頃に、モダニズムの巨匠と謳われるスイス人建築家のル・コルビュジエの作品に触れる機会があり、芸術と建築を同時に職業とすることが出来ると確信しました。スペインやスイスの大学で建築や土木工学を学び、学校を卒業してすぐに自らの建築事務所を開設しています。彼はまた、19世紀から20世紀に活躍したスイスの土木技師の作品にも影響を受け、その成果がいくつもの美しい橋となって実現しています。彼の作り出す建造物は視覚的な美しさがあり、1つの作品で自分が希望した通り芸術家と建築家を同時に遂行していると言えます。

「フェリペ王子科学博物館」の所在地

 

スペイン王国の地中海沿岸にあるバレンシアに「フェリペ王子科学博物館」を含む芸術科学都市が建設されました。この街はバレンシア州の州都であり、国内で3番目の都市です。地中海に注ぐトゥリア川の河口に当たる地域で、良い港があったことから太古より地中海沿岸の交易拠点として栄えてきました。現在もヨーロッパ屈指の貨物量の取り扱いがあり、地中海沿岸ではバレンシア港の貨物取扱量は最大量を誇っています。このような地形の利をもたらしたトゥリア川ですが、古くから度々氾濫を起こしてきた川です。街の中心部を蛇行するように流れていたため、何度も洪水の被害にあってきました。近年では1957年に大洪水があって、街のほとんどが浸水し、多くの人的被害も引き起こしました。この大洪水の後に将来的な防災の為に、川の流れを変える計画が持ち上がり、街の西側で2つに別れる水路が作られました。街の南側に作られた水路は通常は水が無く、氾濫の恐れがある時に活用されるようになっています。もう1本の水路は、街の近郊に広がる農地に灌漑用として使われています。元々の川床は広い緑地公園となっていて、自動車を使わずに街の中心部を移動することが出来るようになっています。かなりの広さがある緑地帯なので様々な開発計画もあり、芸術科学都市もその1つとなっています。


 

「フェリペ王子科学博物館」の特徴

 

緻密な立体パズルのような印象がある「フェリペ王子科学博物館」は、芸術科学都市の一部として2000年に開館しました。高さは最高点で55m、幅が80mで長さが250mもある桁違いに大きな建物と言えます。建物の南側には水盤のような池が作られていて、水に映る姿は非常に美しいと定評があります。「フェリペ王子科学博物館」は、コンクリートとアルミニウムとガラスで出来ている建物です。現地ではクジラの骨格とも言われている外観は、コンクリート製の柱が支えています。建物の全体が見えるくらい離れると、繊細な感じがしますが、5本あるコンクリート製の柱は巨大とも言えそうな太い柱です。上に行くに従って樹木が枝分かれするように、この柱も上部に行くに従って幾本にも枝分かれして、アルミニウム製の屋根を支える21本のアーチと繋がっています。柱の中にはエレベーターと階段が設置されています。北側のアーチには、それぞれを繋ぐ事と横方向の強度を上げる為に桟のような構造が取り付けられて、全面がガラスで覆われています。このような作りになっているので、広大とも思える屋内空間は人工照明を使わなくても日中は自然光で明るくなっています。貯水池は建物の周辺の気温を下げる効果があり、環境に負担を掛けないようになっています。また、万が一の火災の時には消火活動に使用することも想定されています。

 

「フェリペ王子科学博物館」のまとめ

 

木や竹ひご、金線、銀線など様々な素材を使った細工物が古くから世界中で作られています。「フェリペ王子科学博物館」を始め、サンティアゴ・カラトバが生み出す建築物は正に建物の細工物と言っても過言ではない作品がたくさん作られています。「フェリペ王子科学博物館」を含むバレンシアの芸術科学都市は、有名なサグラダファミリアなどと共にスペインの12の宝物と呼ばれる国民投票で選ばれています。「フェリペ王子科学博物館」は、世界に自慢できる建造物と多くの国民にも認められています。

 

余談ですが、このような美しい外観で近未来的とも取れる建造物なので、「フェリペ王子科学博物館」はアメリカのSF映画のロケ地になった事があります。

 

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