コッパーハウス2(Copper House 2)

「コッパーハウス2」のご紹介

 

どのような分野でも実験的な事柄には様々な不安要素があります。南米チリの都市郊外に建つ「コッパーハウス2」も実験的な建物ですが、この家が作られる前に同じような概念で建てられた家がありました。どちらも薄い銅が貼られた建物で、名前が表す通りの家です。

「コッパーハウス2」の設計者

 

建築家のロックスターとも言われる、スミルハン・ラディックが「コッパーハウス2」を設計しました。彼は、最近まで生まれ育ったチリ国内以外での知名度は高くありませんでした。20世紀の終わり頃にオフィスを構えて建築家として活動していますが、ほとんどが個人宅や小規模の店舗などを作っていました。それでも母校の大学からは、当時の若手建築家の中でとても優秀だと評価されています。また、2000年代に入ってからは、アメリカの建築家協会や他の様々な建築家に授けられる賞を受賞しています。現代に於いては個人でもインターネットを介して様々な情報を発信していますが、彼はその様な手段は使っていません。従って、オフィスは構えていてもホームページなどは作っていません。加えて、SNSなどで情報を発信することもありません。そのような事から、彼の名を知る人は国外ではあまり居ませんでした。彼が世界的に有名になったのは、毎年ロンドンで開催されるイベントが発端でした。ロンドンにある小さな美術館のサーペンタイン・ギャラリーが、2000年から毎年夏に開催している「サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン」に彼が作品を披露したのは2014年のことでした。半年で完成できて、夏の間の3か月間、訪れた人々が見学できるような構造物を作って、ギャラリーのそばにある芝生の上に展示されています。このイベントは、ギャラリーからの招待形式となっていて、誰もが知る有名な建築家から、このイベントがきっかけで世界に名を知られるようになった建築家もいます。ただし条件があって、招待される時点でイギリス国内で建物を作っていない建築家に限られています。

 

「コッパーハウス2」の所在地

 

チリ共和国の首都サンティアゴから南へ約250kmの所にある、タルカと言う都市の郊外に「コッパーハウス2」が建っています。タルカ州の州都であり、州のあるマウレ地方の行政の中心でもあります。この街は国内のほとんどの都市と同じく、スペインの貴族が興した街で、18世紀の中頃に作られました。タルカと言う地名は、原住民族の言葉で雷や爆音と言った意味があり、街から数十㎞東にそびえる火山が由来と言われています。タルカはチリが独立した時に重要な役割のあった場所でもあります。19世紀の初め頃に、スペインの王国軍と独立を求める軍との最後の戦いがこの地で起こりました。王国軍はタルカの街を要塞化しましたが、独立軍の勝利で戦いは終わりました。その後、この街で双方の軍がチリの独立宣言に署名して、正式に独立国家となりました。街が作られた最初から、この地域の中心的な場所でしたので、教会や行政の建物などがありましたが、この地域も日本と同じく地震の多い場所で、特に1928年の推定マグニチュード7のタルカ地震によって多くの歴史的建造物に被害がありました。また、2010年のチリ地震もこの地域が震源であったことから、80年前の地震で持ちこたえた古い建物の多くが倒壊してしまいました。現在は重要な歴史的建造物など、多くの建物の再建が果たされています。

 

「コッパーハウス2」の特徴

 

地域の中心的な都市の郊外に建てられている、銅箔で覆われた住宅が「コッパーハウス2」です。コッパー(copper)は英語で銅を意味する単語です。また、チリの公用語であるスペイン語ではcasa de cobre(カーサ・デ・コーブレ)と言います。どちらも銅の家と言う意味で、名前の通り、壁や屋根が銅で覆われた住宅です。外壁を被う銅板は厚みが約0.5mmの箔に近いもので、サビを防ぐために亜鉛メッキが施されています。外壁を銅で覆った理由は、この地域で古くから作られていた教会などの建築方法を一部なぞった事が挙げられます。また、設計者のスミルハン・ラディックの建築物に於ける主義の一つにある、「景観を損ねない」と言う理由から、家が建てられた土地の地面の色合いと符合する色合いであった事です。外壁の色は、新品の十円玉のようなキラキラした色ではなく、長い年月流通していた十円玉のような感じの色で、黒っぽく霞んだようになった部分もあり、和布の絣のような温もりのある落ち着いた雰囲気があります。建物の北側はスペインの中庭や裏庭を指す、パティオのようになっています。パティオに面した広いガラス戸が壁のようになっていて、夏季には解放できるようになっています。また、家の中央部はくり抜かれたような空間があり、日中は人工照明が不要なほどの明るさがあります。東側には変わった形の天窓と言える明かり取りのような窓が、屋根に対して垂直になるような感じで付けられています。「コッパーハウス2」は、日本の住宅の広さの換算で約50坪の家で、公式のサッカー場のおよそ三分の二もある広い敷地の中に建っています。

「コッパーハウス2」のまとめ

 

「コッパーハウス2」はスミルハン・ラディックの2番目の実験的な家です。最初のコッパーハウスは、太平洋沿岸に浮かぶチロエと言う島に建っています。この島は、日本の瀬戸内海にある直島(なおしま)と似ていて、多くの建築家や芸術家が腕を振るっている島です。実験的な住宅と言っても、そこに住む人が快適な暮らしを送ることが出来るのならば、その実験は成功したと言っても良いのではないでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。