グランドワールド フーコック ウエルカムハウス(GrandWorld PhuQuoc WelcomeCenter)

「グランドワールド フーコック ウエルカムハウス」のご紹介

 

食料を自分たちの住んでいる地域で調達することを地産地消と言い表しますが、建築に於いても地産地消と言えるような建物が南アジアの国に建設されています。太古の時代では、人々が住む家や生活に必要な建物などは身近な材料で作るのが普通でした。それは建設される場所の気候などを考慮すると当然であり、最善の選択でもありました。「グランドワールド フーコック ウエルカムハウス」は、南国の島に作られた複合商業施設を訪れる人を迎える、全て近隣で調達された天然の素材で作られた美しい建物です。

「グランドワールド フーコック ウエルカムハウス」の設計者

 

「グランドワールド フーコック ウエルカムハウス」のデザインと設計を手掛けたのは、ベトナムの建築家、ヴォ・チョン・ギアです。彼は、1976年にベトナムのほぼ中央に位置する、クアンビン省の農村で7人兄弟の末っ子として生まれました。決して裕福な家庭ではなかった様ですが、彼らの両親は兄弟全てにしっかりした教育を受けさせました。その成果があって、進学のために建築や工学、土木関係の大学を3校受けて全て合格した彼は、昔のように崩れ落ちない小学校を作りたいという理由から、首都ハノイの大学で建築を学ぶことを選びました。成績の良かった彼は、在学中に日本の奨学金を受けて名古屋の大学へ留学し、その後、東京大学で更に建築を学び、研究を続けました。2006年にベトナムへ戻り、ヴォ・チョン・ギア アーキテクツ(VTNアーキテクツ)を開設しました。彼の作り出す作品は、日本で研究していた事柄がそのまま反映されています。風や水、光など自然を取り込み、建築費用も抑えられ、その後の維持費用も少なくて済む方法を考えています。その結果、身近な素材を利用することで材料が安価で済み、自然のエネルギーを利用することで、光熱費などを抑えることができます。また、伝統的な技法や意匠を取り入れて地域に密着した建物を作り出しています。

「グランドワールド フーコック ウエルカムハウス」の所在地

 

ベトナム社会主義共和国のフーコック島に開業した複合商業施設の入口に当たる建物が「グランドワールド フーコック ウエルカムハウス」です。この島は、隣国カンボジアとの国境に近いハティエン市から西におよそ45km離れたタイランド湾に浮かぶ、国で最大の島です。面積は淡路島より少し小さく、比較的なだらかな地形で高い山はありませんが、99の丘や山があると言われています。ベトナムで1番美しいと称されるビーチもあって、リゾート地として人気があります。気候は年間を通して温暖で、季節は夏の雨季と冬の乾季に分かれています。複数の川と綺麗な滝もありますが、乾季には水量が極端に減って滝が干上がることもあります。経済は観光の他に、農業が盛んで、特に「フーコック ペッパー」と呼ばれる胡椒が特産になっています。他には、豊富な海の幸を使った料理に欠かせない、カタクチイワシの1種アンチョビだけを使って作られる魚醤は世界中に輸出されています。この島には世界でも珍しい固有種の犬が生息しています。フーコック犬は非常に優秀な猟犬で、忠実で頭も良い性質を持っています。1番の特徴は背中の中央部の毛が逆向きに生えていて、たてがみのように見えることです。もう1つの特徴は足に水かきがあることで、泳ぎも得意です。一時は絶滅の危機に瀕しましたが、島の人々の保護活動によって頭数も増えています。

 

「グランドワールド フーコック ウエルカムハウス」の特徴

 

「グランドワールド フーコック ウエルカムハウス」は、束ねるために使用されるロープなどを除くと、素材は竹だけで作られています。釘の代わりも竹のピンが使われています。高さが15mもある大きな建物で、外観の形状は、ベトナムの伝統的な青銅で作られた銅鼓と言う名の太鼓を横から見たような感じになっています。出入口などの開口部は、蓮の花びらを模したような形になっています。この建物を建設するために使用された42,000本の竹は、ホーチミンの北部に位置するタイニンで伐採されたものが使われています。竹には油分などが含まれていますが、化学薬品などを一切使わない処理が施されています。壁や窓は無く、全て竹で組まれた格子で成り立っています。屋内空間はとても広く、大広間のような印象があります。天井も高く、屋内側はドーム状になっていて、竹を編んで作られる伝統的な方法も取り入れています。加えて、設計者は竹を組んで様々な形状を作り出す新しい手法も考えました。大きな建物ですが、空調など人工的なものはほとんど使われていません。編まれた竹の間を通り抜ける風が屋内の温度を外気より低く保ってくれます。また、建物の周りを囲むように設置されている水盤のような池の水が、更に気温を下げる役を果たしています。照明も日中は太陽光で十分な明るさがあり、竹の格子を通して差し込む光は、時間と共に移り変わります。夜間のみ、わずかな人工照明が使用されています。

「グランドワールド フーコック ウエルカムハウス」のまとめ

 

竹が生息できる地域は意外と少なく、地球上の竹の生息域の8割がアジアです。筍として地上に現れてから24時間で1mも伸び、竹に成長する時に吸収する二酸化炭素の量も特段に多い優れた植物です。柔軟で強度も高く、伐採後も腐りにくい特質もあり、竹が生息する地域では古来より利用されてきました。南アジアに生える竹は大きなものが多く、「グランドワールド フーコック ウエルカムハウス」のような大きな建築物を作るのに最適な素材であり、かつ、安価で入手できることも大きな利点となっているようです。

 

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