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カルカッタホワイト(Calacatta White)のしらべ
世界中で使われている大理石の中で、様々な種類と量を産出しているのがイタリアです。その中でも随一の生産地と謳われている地域からは、多くの白い大理石が切り出されています。
多種にわたる白大理石の中で、希少な白い大理石がカルカッタ ホワイトです。
「カルカッタ ホワイト」の原産地
イタリア共和国の中部にティレニア海に面したトスカーナ州があり、「カルカッタ ホワイト」の採石場は州の北部に位置するマッサ・カッラーラ県にあります。
主要な都市は県都のマッサ市とカッラーラ市です。二つの街を中心として十五世紀から十九世紀にかけての時期に、マッサ・カッラーラ公国として栄えてきました。その頃にはすでに大理石の産地として有名な地域で、文化復興と言う意味合いのあるルネサンス期に、彫刻などの芸術作品の素材として人気が高まっていました。
大理石は高級な石材として流通していますが、この地では普通の建築材料として昔から使われてきました。現在でも石段や石畳、家屋の建築資材として使われています。この地域の特産品として有名な物に「ラルド」と言う豚の背油を使った食品があります。塩漬けや燻製にしたものをワインと一緒に供されていますが、特に有名な「ラルド・ディ・コロンターナ」は大理石製の桶を使い半年以上かけて塩漬けにされています。
「カルカッタ ホワイト」の特徴
大理石の「カルカッタ ホワイト」は、世界中に多く流通している白大理石の「ビアンコ カラーラ」が採れる場所と同じ地域の山から切り出されています。基本的には濁りの無い白い地色の大理石です。
白地に薄い灰色の部分が帯のように大きく入っていて、幅広い部分から枝分かれした細いグレーのスジが繊細な模様を織りなしています。灰色の部分が広く大きく大胆に入っているところもあり、そこだけを切り取るとグレーの石のように見えます。まれに、灰色の帯に添うような薄いベージュから茶色のスジが見える物もあります。灰色の部分は薄い色がほとんどですが、中には濃くはっきりとした色になっているものもあります。
また、灰色の部分が青味を帯びているものもあり、色味に違いの見えるものが幾つかあります。模様は大変大きく入っているのが一つの特徴で、この模様の違いと色味の違いが「ビアンコ カラーラ」と区別がつけられている理由です。このように大きくはっきりとした模様の入っている大理石はあまり多くは採れないので、希少価値が出てきているようです。
「カルカッタ ホワイト」を取り扱う時の留意点
岩石ですが繊細な点もあります
大理石は緻密な石ですので、磨けばとても美しいツヤのある鏡面になります。しかし、石としてはやわらかい部類に入ります。そのことから言えるのは傷が付きやすい事、欠けたり割れたりする可能性が高いという事です。特に鏡面に加工された物は少しの傷でも目立ちます。床面に使用する場合は多少ツヤを抑えた加工にすることで、傷を目立ちにくくする事と、滑りにくくする利点があります。美しい床面でも、安心して歩けなかったら台無しになってしまいます。
汚れについて
どんなものでも白は非常に汚れが目立つ色です。大理石は、太古の海洋生物が残した骨格などが降り積もって固まり、マグマなどの高熱によって結晶化した石灰岩です。その為、化学作用に弱い欠点があり、特に酸性に弱く、果汁などが付着しただけでもシミになります。また、金属のサビなども吸収してしまう事があります。このような特性を知った上で、シミ等の原因になりそうな物を付着させないように注意してください。
「カルカッタ ホワイト」に適した製品
まさに、建築物の内側を装う事のできる材料です。
壁に
大きなサイズのカルカッタ ホワイトを、そのまま壁に貼り付けるように使われている例があります。モノトーンに近い色で大きく描かれた絵画の様に見える大胆な使用方法です。大きな柄が豪奢なイメージを持たせ、清楚な色合いが上品さを演出できるので、ホテルなどのロビーにふさわしい素晴らしい素材と言えるでしょう。無彩色の石なので、室内空間に置かれている調度品など、インテリアの色を引き立てる事も出来るでしょう。
床に
大きな模様のある「カルカッタ ホワイト」をある程度の大きさのタイル状にして、わざと模様をランダムにして敷き詰めている所があります。元から入っている模様を違うように見せることで、天然の石であることを前面に押し出している使い方です。天然の産物なので、一枚として同じ柄はありません。
「カルカッタ ホワイト」は、モノトーンであるが故に、使う人の感性によって様々な表情を引き出せる石材と言えるでしょう。
浴室に
洗面台に
天板に
「カルカッタ ホワイト」のまとめ
大理石の「カルカッタ ホワイト」が採石される地域は、イタリアで最大の白大理石の産地で、種類、量共に多く産出している場所です。そのため、採れる時期と場所で見た目の色が違うものがあります。模様を引き出している部分の色合いの違いで「カルカッタ ゴールド」または、「カルカッタ ブルー」などの別名もあります。白大理石と言っても純白に近い石は少なく、その中にはっきりとした模様が浮かび上がっている石は更に産出量が少なくなっています。このようなことから、魅力ある大理石の「カルカッタ ホワイト」は、貴重な石材の一つと言えるのではないでしょうか。
2022年11月のしらべ
大理石や木目をペイントで表現するデコラティブペイントの仕事をしています。今回あまり資料がないカルカッタホワイトの指定があり、大変参考になりました。ありがとうございました。