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ブレッチアオニシアータ(Breccia Oniciata)のしらべ
アルプス山脈の一角にある地域から採掘されている、柔らかい色の大理石があります。昔から珍重されてきた「ブレッチア」と言う種類の大理石の名を持つ石です。イタリアの内陸から掘り出されている、「ブレッチア・オニシアータ」をご紹介します。
「ブレッチア・オニシアータ」の原産地
ロンバルディア州はイタリア共和国の北部中央にあります。アルプス山脈の一角に位置する内陸部の地域です。山岳部は州の面積の約三分の一で、約半分の面積を平野部が占めています。山岳部の一部は「ヴァッレサッビア(砂の渓谷)」と呼ばれ、いくつかの小さな自治体でコミューンを形成しています。その中のセルレと言う町の近郊で「ブレッチア・オニシアータ」は採石されています。
町の南側には広大な採石場があり、採石場の中を通る公道には「マルミ(大理石)通り」と言う名前が付けられています。北側はアルプスに続く山岳地帯となり、多くの動植物が生息している地域になります。特にタカやフクロウの仲間などの猛禽類が数多く生息している事で、生物相の豊かさを示しています。また、カルスト地形の特徴である洞窟がたくさんあって、様々な鉱物も採石されています。複数の洞窟には、先史時代の人々が住居として利用していた痕跡も見つかっていて、古来より人が生活していた地域であることを証明しています。
「ブレッチア・オニシアータ」の特徴
本磨き
大理石の「ブレッチア・オニシアータ」は、ベージュの濃淡がある地に、白い線状の模様が入っています。「ブレッチア」とは角礫岩(かくれきがん)を指しますが、「ブレッチア・オニシアータ」には角張った感じの部分は少なく、柔らかい雰囲気を持つ石材です。
透明感もある石種で、日本ではこのような見た目の大理石を「更紗(さらさ)」とも呼んでいます。「更紗」とは日本で古来より使われてきた文様の一つで、「ブレッチア・オニシアータ」の優しい色合いと、ふんわりとした感じの模様がこのような呼び名をされる要因となっているようです。透明感がある物もあり、模様もランダムに入っていて、白い筋が流れる様な模様や、網目のようになった物もあります。その様な事から、柄合わせが少し難しい大理石です。また、瑕の多い石種ですので、補強のための裏張りと言う加工を施した製品が多く流通しています。しかし、この加工をすると、下地からの水分の浸透も防げると言う利点もあります。
「ブレッチア・オニシアータ」を取り扱う時の留意点
均一の色柄は求められません
「ブレッチア・オニシアータ」は、地色に濃淡があって、濃い目の茶色から白に近いクリーム色まで、ベージュ系のあらゆる色が混じっています。模様も白い線模様から、複雑な網目のようになった物まで様々です。このように多様な見た目を持つことが「ブレッチア・オニシアータ」の魅力の一つですが、広い場所に使われる場合や、施工後に期間をあけて補修に使われる場合には、この事を念頭に入れておいてください。
脆弱な点があります
大理石はとてもデリケートな岩石です。「ブレッチア・オニシアータ」は複雑な模様があるので、シミはあまり目立ちませんが、化学作用によってツヤが無くなってしまうことがあります。大理石は、基本的に古代の海洋生物が残した骨や殻が原料となっている石なので、特に酸に弱い性質があります。強い酸が付着すると溶け出してしまう可能性があります。ツヤが落ちるのはこのためです。果汁などでもこう言う事は起きますので、注意が必要です
「ブレッチア・オニシアータ」に適した製品
建築物の内外に使われます
マンションやホテルなど、ビルの床や壁に「ブレッチア・オニシアータ」が使用されています。明るく優しい感じの色なので、ロビーやエントランスなどに、穏やかな雰囲気を作り出せるでしょう。アースカラーと呼ばれる色合いの「ブレッチア・オニシアータ」は、大地を模しているので安定感があり、床材として良い素材となるでしょう。しかし、床に使われる場合は滑りやすいので、水濡れしている時などは足元に注意が必要となります。
天板
キッチンカウンターやテーブルの天板に使われることもあります。鏡面に磨かれた「ブレッチア・オニシアータ」のカウンタートップは高級感があり、グレードの高いキッチンやリビングを演出することが出来るでしょう。加えて、優しい色合いの「ブレッチア・オニシアータ」は、くつろぎの空間にぴったりではないでしょうか。
天然石の特徴である熱を伝えにくい長所もありますが、水分の吸収や化学作用に弱いところもあるので、撥水処理などの表面のコーティングを施した石材を使用した方がよいでしょう。
「ブレッチア・オニシアータ」のまとめ
大理石の「ブレッチア・オニシアータ」は、切り出された大地そのものの色を表している石材です。大理石の高級感と大地の色の安定感を併せ持つ素材と言える石です。石材という硬いイメージを、柔らかい色合いと「更紗」と呼ばれるほどの紋様をこの石に見出したことで覆しているのではないでしょうか。
2022年11月のしらべ
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