目次しらべ
マイカリソスインペリアルグレー（Mykalissos Imperial Grey）のしらべ
皇帝の名を戴くシックな色の大理石があります。マイカリソスインペリアルグレーはヨーロッパの地を治めてきた古代の皇帝たちにも好まれて、その居城を彩ってきた様々な建築材の一つとして使われてきました。
「マイカリソス・インペルアルグレー」の原産地
ギリシャ共和国の中央部にエヴィア県があります。エーゲ海に浮かぶ国内で2番目に大きなエヴィア島がほとんどを占める県で、県都はハルキダ市です。大理石の「マイカリソス・インペルアルグレー」は、この街の近郊で切り出されています。
太古から様々な王朝が栄えては衰退してきましたが、その時々で主要な都市として栄えてきました。古代に於いてこの街は「ハルキス」または、「カルキス」と呼ばれていました。この地域に人々が暮らしていた一番古い時代は、約3,500年前に遡る事ができます。古代ギリシャの最古の文明と言われる、エーゲ文明の内の一つ、ミケーネ文明の痕跡がこの地域で発掘されています。中世ヨーロッパの時代には、一王国の首都を務めたこともある歴史深い街です。地中海沿岸で交易のための港湾設備が昔から整っていたことが、この地を栄えさせた要因でしょう。また、哲学者のアリストテレスが母親の出身地であるこの街で晩年を過ごし、生涯を終えたことでも有名です。
「マイカリソス・インペルアルグレー」の特徴
本磨き
大理石の「マイカリソス・インペルアルグレー」は、大部分がグレーの大理石で、サビ色に見える金茶色と入り混じった所もあります。茶色の部分は地色と一体化したような所もありますが、太く幅の広い帯のように模様を作り出している所もあります。白いスジ状の線が細かくたくさん入っていて、クモの巣の様に密になっている部分もあります。
また、グレーの部分は見る角度によっては透明感があり、奥行きを感じることができます。加えて、グレーの地色と金茶と白の線模様を覆うように、全体を薄いレースの布地を置いたような霞んだ感じになっているものもあります。「マイカリソス・インペルアルグレー」はグレーの大理石と紹介されている場合が多いのですが、この石の様な見た目の大理石は他に類を見ません。その理由は、グレーの地色に、白い線やグレーの濃い色の線が入って模様を引き出しているものは多く見かけますが、「マイカリソス・インペルアルグレー」のように金茶色の部分も加わって大まかに3色の色が入っている為でしょう。
「マイカリソス・インペルアルグレー」を取り扱う時の留意点
堅固なイメージがありますが、弱い所もあります
大理石は石灰石が由来の岩石で、元々白い色をしています。石灰岩がマグマの熱などの作用を受けて長い年月をかけ出来上がった岩石です。その過程で含まれた様々な鉱物によって色が付きます。「マイカリソス・インペルアルグレー」の基本となる色のグレーは黄鉄鉱です。模様を作り出している金茶色は鉄分が出しています。このように構成物が異なるので、接点となる場所は他に比べて弱くなります。割れ目が生じたり、はがれたりすることもあります。また、水が浸み込む場所にもなります。美しさを長持ちさせるためにも、このような弱点もあると言う事をよく知ることが重要です。
化学作用にもデリケートです
大理石の起源は、太古の海洋生物が残した骨格や殻です。炭酸カルシウムが基本的な構成物質なので、酸やアルカリなどの化学作用にとても弱い性質を持っています。お手入れの時は中性以外の洗剤や薬剤は絶対に使用しないでください。また、日常的な使用時に於いても、特に酸性のもの（果汁やワイン等）を付着させないようにしてください。
「マイカリソス・インペルアルグレー」に適した製品
古代の皇帝も好んだ品のある色合いを生かして
内装、壁材
「マイカリソス・インペルアルグレー」は比較的濃い色の大理石なので、アクセントに使われることがあります。白や薄い色の大理石をメインに使い、ポイントを置きたい所や、デザインによって「マイカリソス・インペルアルグレー」が使われます。また、色や模様の変化を利用して、タイル状の石板をランダムに組み合わせる施工例もあります。いずれも、「マイカリソス・インペルアルグレー」の色や模様などの魅力を最大限に生かした使用方法と言えるでしょう。
階段
「マイカリソス・インペルアルグレー」を使った美しい階段があります。大理石の表面を鏡面に磨くのは、ほとんど機械で行います。しかし、手すりなどの形としての装飾部分は、今でも職人による手作業で行われることが多いようです。大理石は加工が比較的容易とは言っても、岩石ですので模様を形作るのは大変な作業ではないでしょうか。
「マイカリソス・インペルアルグレー」のまとめ
太古の昔から珍重されてきた大理石のマイカリソスインペルアルグレーです。その落ち着いた上品な色合いと磨かれたツヤのある美しい表面が、厳粛な空間を作り出すために使われてきました。古代の権力者達が威厳を示すための良い素材であったのでしょう。現代でも建造物や調度品など、高級なイメージを作り出すための最高の材料となっています。
2022年11月のしらべ
コメントを残す