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「台湾大学 クー・チェンフー記念図書館」のご紹介
本を読むのに最適な環境はどのような場所でしょうか。静かな図書館や少しの雑音がある公園、夜、寝る前に寝床で読書をする人もいます。明るすぎず、暗すぎず、無音よりはわずかな音のある場所など、好みやその時の心情によって読書をするのに心地よい状況は異なります。近年では電子書籍も増えていますが、ページをめくりながら読む紙の本の根強い愛好者もたくさんいます。「台湾大学 クー・チェンフー記念図書館」は、木々の下で読書を楽しむことを想定したデザインの建物です。
「台湾大学 クー・チェンフー記念図書館」の設計者
「台湾大学 クー・チェンフー記念図書館」を含む台湾大学の社会学部棟を手掛けたのは、東京にある伊東豊雄建築設計事務所を率いる伊東豊雄(いとう とよお)です。現在のソウルで生まれ、長野で育った彼は東京大学で建築に出会い、学びました。彼が建築家として大々的に社会に認められたのは50歳を過ぎてからで、正に大器晩成と言える人物です。しかし、大学で仕方なしにと言った体で建築を学び始めた時から、建築に魅了されるまでに長い時間は掛からなかったようです。前半生は現在の彼を作るための準備期間のようなもので、作品が認められるようになってからは、次々と大きな企画を完成させ、国内は元より、世界的にも権威ある大きな賞を受賞しています。有名建築家と言われるような彼ですが、自分一人では成しえないと考えていて、日本の企業と職人の技術に支えられていると言っています。デザインや図面を書いても、それを実現するには多くの人の手が必要であることを強く感じているのがわかります。彼の建築理念の一つに、その建物を利用する人が使いやすいようにと考えていることが挙げられます。1970年の大阪万博で近代建築の限界を感じ、公共施設の機能主義的で管理しやすい建物に対して反発心を持ち、人が心地よい場所を作ることを考えています。その良い例が東北の震災の後に複数建設された「みんなの家」企画でした。高齢者の域に達した現在も、使う人が使いやすい建物を目指して活動を続けています。
「台湾大学 クー・チェンフー記念図書館」の所在地
台湾大学の所在地は台湾(中華民国)の首都、台北市(タイペイ)です。台湾島の北部に位置する盆地に街が広がり、周囲を火山群や山脈、高原台地に囲まれています。北側には、複数の活火山を含む大屯火山群があり、標高1,000mを越える大屯山や七星山があります。活火山の定義に合致していますが、近年では噴火の活動は無く、暫くは噴火の心配は無いと研究者は言っています。南から東側にかけては、台湾島の主要な山脈の1つ、雪山山脈の北端部分があります。北側は台湾海峡に面する林口台地が広がっています。台湾の首都として正式に決まったのは1967年の事ですが、古くからこの街は地域の中心地となっていました。漢民族が大陸からこの島に移住する前には、原住民族の中のケタガラン族が大きな集落を作っていました。四季がはっきりと表れる気候ですが、緯度が低いので冬季でも氷点下を下回ることは稀です。盆地の地形のため、年間を通して曇りや雨の日が多くなっていて、平均で月の約半分は雨が降っています。そのような気象条件があることで素晴らしい記録があります。2017年に太陽が出ている時間のほとんどで虹が連続して見られた記録です。約9時間に亘って出現していた虹が最も長く観測された虹として登録されました。もう1つこの街由来のギネス記録があります。世界最長寿を樹立したアジアゾウの「林王(リン・ワン)」は、波乱万丈の生活を過ごし、後世をこの街で暮らして86歳の長寿を全うしています。
「台湾大学 クー・チェンフー記念図書館」の特徴
「台湾大学 クー・チェンフー記念図書館」は、隣接する大学の社会学部棟と共に2013年に完成しました。基本的には平屋の建物で、1部は蔵書を納める書庫となる2階部分があります。この建物の一番の特徴は屋根と柱にあります。設計者が木陰で読書をする場面を思い描いてデザインした屋根は、複数の木を繋げた印象を持っています。不規則な円形を繋げた平たい屋根の上には人工芝が設置されていて、樹冠を思わせるような感じになっています。屋根を構成する丸い部分からは、全部で88本の柱が伸びています。直径が約25cmで天井までの高さが約6mの柱は、上部が広がっていて天井から水が流れ落ちているような見た目になっています。その為、柱と天井の境目がはっきりとしない、一体化したような作りになっています。屋根が丸い形状の部品を繋げた形になっているので、隙間が出来ていますが、その隙間には樹脂製の半透明なガラスがはめ込まれていて、日中は太陽の光で明るい室内空間を作り出しています。加えて外壁がガラスなので、透明感のある建物になって、更に木立の印象を強くしています。夜間になると室内の明かりで屋根が浮かび上がったようになって、幻想的に見えます。館内の書棚は近隣で入手できる竹材が使用され、柔らかな空間を作り出しています。また、書棚は木々の間を流れる風のようなイメージで、いくつかの中心から放射状の曲線を描くように配置され、高さも変えられているので、館内がとても広く見えます。建物は白いコンクリート製で屋内も白で統一されているので、少ない照明でも十分な明るさが確保できます。
「台湾大学 クー・チェンフー記念図書館」のまとめ
クー・チェンフーとは、台湾大学の前身だった学校の卒業生であり台湾の実業家で、「台湾大学 クー・チェンフー記念図書館」の建設費用を寄付した財団を残した人物です。この図書館は木立の中での読書をイメージしていますが、俯瞰で見るこの建物は周囲に配置された不規則な円形の芝生に溶け込んでいるようです。街の中に居ながら、森の中にいるような建物が「台湾大学 クー・チェンフー記念図書館」です。
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