北木 岡山県笠岡市で採掘される御影石のご紹介

北木(Kitagi)のしらべ

豊かな海の幸に恵まれた瀬戸内海。この海の幸は豊富な魚介類だけではありません。温暖な海に浮かぶ幾つかの島では良質の御影石が産出されています。その中の一つに御影石の「北木(きたぎ)」があります。日本国内の重要な建築物に昔から使用されてきました。

 

「北木」の原産地

瀬戸内海に面した岡山県笠岡市の沖合に笠岡諸島があります。その中で一番大きな島が「北木」の産地、北木島です。笠岡港から船で約1時間の沖合に位置する周囲約18kmの小さな島ですが、いくつかの古墳も発見されていることで、古代から人が住んでいたと考えられています。主な産業は漁業と「北木」の採石です。北木島は島全体が花崗岩で出来ていて、江戸時代から御影石の採石が行われてきました。切り立つ断崖となっている古い採石場には展望台が作られていて、観光名所の一つとなっています。採石した後のくぼみに雨水がたまった丁場池(ちょうばいけ)と呼ばれる、エメラルドグリーンの水たまりは一見の価値があります。また、豊富な海の幸と火山灰を利用した「灰干し」が有名で、漁業と石材技術が融合した特産品となっています。年中行事としては三百年続く「流し雛」が行われています。麦わらで作った船に紙のお雛様を乗せて無病息災を願い海に流す行事で、毎年三月に島の東側にある大浦地区で取り行われています。

 

 

「北木」の特徴

 

本磨き

 

ジェットバーナー仕上げ

御影石の「北木」は、江戸時代から重要な建造物に使用されてきました。一例をあげると、大阪城の石垣や靖国神社の大鳥居、京都五条大橋にも使われています。基本的には白い御影石です。黒雲母花崗岩で、含まれる鉱物によって四種類に分けられています。「中目」「瀬戸赤」「瀬戸白」「サビ石」の4種類に分けられ、現在も採石されているのは「中目」と「瀬戸赤」の2種類となっています。「中目」は一般的な白御影石と同じく、白い長石とグレーに見える石英の中に、黒雲母の粒子が入っているモノトーンの色合いの石です。「中目」とは言っても黒い粒子が多く入っているので、小さな砂粒をまいたような見た目に見えます。「瀬戸赤」は「中目」を薄いピンクに染めたような、優しい色合いをしています。「中目」の灰色の部分がわずかに着色した感じで、名称に「赤」と付いていますが桜色のような雰囲気になっています。緻密な御影石ですが、加工も容易な石質なので様々な石造品も作られています。

 

表面の仕上げについて

 

基本的に御影石には表面を研磨した「本磨き仕上げ」と、表面の鉱物をバーナーで高温にして飛ばす「JB(ジェットバーナー)仕上げ」があります。

 

本磨き仕上げは年月が経っても光沢が落ちにくいため外壁などに適しています。JB仕上げは表面に凸凹があり、ザラザラしているので滑りにくく、床材などに適しています。JB仕上げにすると本磨き仕上げに比べて色見が薄くなります。

 

この本磨き仕上げとJB仕上げの両方を使用して、壁面や床面をデザインすることができます。

 

 

「北木」を取り扱う時の留意点

 

現在は良質の石だけが切り出されています。

戦後の混乱期には、石材の不足から、本来なら捨てられるような、あまり質の良くない「北木」も出荷されていました。基本が白い御影石なので、サビが浮き出たり変色が出たりすると、とても目立ちます。そう言う経緯で「北木」はサビが出ると今でも言われることがあるようです。天然の石ですので、全くそのような事にはならないとは言えませんが、現在では銘石の名に恥じない良質な石だけが切り出されています。白い御影石は汚れも目立ちますので、美しい表面を保つためにもお手入れはこまめに行ってください。

石材は固いものです

御影石のテーブルトップや天板などを利用される時には注意が必要です。当然のことですが、石は固く丈夫な素材です。御影石を使ったテーブルなどに食器を置くときには、優しく扱ってください。ガラスや陶器を置く時にはコースターやプレースマット(ランチョンマット)などを利用して、衝撃を緩和するようにすることをお勧めします。乱暴な扱いをすると、食器も御影石も両方傷つけることになります。

「北木」に適した製品

 

小物使いで生活空間を飾る

 

屋外では

庭に置く手水鉢や灯篭、色々な置物が作られています。「北木」は、緻密な石材ですが、加工がしやすいと言うことで細かな細工を施すことができます。「北木」の石像品は、お庭に高級な雰囲気をもたらしてくれるでしょう。また、表札やネームプレートも、その家の顔としての大役を果たすのに不足はありません。

 

お部屋に

小さいサイズの石板でコースターが作られています。紙や布のコースターと違って結露によるグラスの水滴でくっつくこともありません。しかし、なんと言っても石ですので、グラスなど食器を傷める事もあるので、優しく扱ってください。また、マルチプレートと言って様々なサイズの鏡面加工の石板もあります。お皿の代わりにしたり、細かな柄がマウスパッドにも最適です。アイデア次第で様々な使い方ができるでしょう。

 

「北木」のまとめ

御影石を切り出すためには重機も使いますが、「北木」は職人の方達が長年培ってきた技で、ノミとハンマーによって採石しているところもあります。以前は百以上の採石場がありましたが、今では二つの採石会社によって「北木」が切り出されています。古い採石場は、場所によっては海面より低く掘られている所もあり、意図しない絶景となって、見る人に息を飲ませています。このような景色は、北木島の採石の歴史を語る風景の一つと言えるでしょう。

北木島の丁場では、かつて石切唄という作業歌が歌われていました。
一、北木日本一 大石出どこ きいておくれよ 石屋節
一、浪速名物 大阪城も 北木から運んだ 石でもつ
一、一度は来なされ 北木の島へ 石と魚の 宝島
一、山は宝石 沖きや鯛の群 黄金吹き寄す 北木島
一、嫁に行くなら 石屋の嫁に 右も左も金ばかり

2022年11月のしらべ

 

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