ブレッチアダマスカータ イタリアの黄色い大理石のご紹介

ブレッチア・ダマスカータ(Breccia Damascata)のしらべ

中世ヨーロッパで発祥した美しい織物の名前が付いた石材があります。絹で織られたパターン模様が特徴で、基本的には衣服に使う布ではなく、調度品として使われるものです。この美しい模様を、その中に見出した先人が名付けた「ブレッチア・ダマスカータ」をご紹介します。

 

 

 

 

「ブレッチア・ダマスカータ」の原産地

イタリア共和国の北部にあるロンバルディア州、第二の都市ブレシア近郊に「ブレッチア・ダマスカータ」の採石場があります。アルプス山脈に近い内陸の都市です。

イタリア国内でも重要な工業地帯で、鉄鋼業をはじめ、自動車や機械の製造が盛んです。加えて、中世から続く武器製造の地で、現在でも複数の銃器メーカーがここに本拠地を置いています。このような大都市では廃棄物も多く排出されますが、ブレシアは早くから環境問題にも重点を置いていました。大規模な廃棄物焼却場から出る熱を利用して、20世紀後半には地域冷暖房のシステムをいち早く確立していました。

また、3,000年以上前には、すでに街としての機能を持っていたと言われていて、多くの芸術品や古代建築物が残されています。太古から都市としての役割を果たしてきたこの街には、市街地にも多くの遺跡が散在し、ユネスコの世界遺産に登録されている物も複数あります。古代の遺跡と重工業地帯が入り混じったこの街は、過去と現代、未来が融合している街と言えるでしょう。

「ブレッチア・ダマスカータ」の特徴

本磨き

「ブレッチア・ダマスカータ」は、ピンクからベージュの薄い色をした上品な石材です。白いスジがたくさん入っている事が特徴的で、その模様は細く複雑に絡み合っているようなものが多いのですが、太く、くっきりと目立つ部分もあります。この交差しあう白いスジ模様が、中世ヨーロッパで珍重されたダマスク織に見られる模様と似通ったイメージがあったことから、「ダマスカータ」の名前が付けられた理由ではないでしょうか。

地色が徐々に濃くなるようなグラデーションを作り出している物もあり、上品な華やかさを持っている大理石です。「ブレッチア(角礫岩)」の特徴として、比較的濃い色をした塊が入っていることが多く、塊の部分の大きさでも雰囲気が変わってきます。全体ではベージュでも、所々に黄色や濃い茶色の礫が入っているものがあります。また、ガラリと色が変わる場所もあり、様々な表情のある石材となっています。

「ブレッチア・ダマスカータ」を取り扱う時の留意点

優しく取り扱ってください

正確には大理石ではなく、角礫岩(かくれきがん)であることを念頭に入れる事が大事です。礫岩と言うのは、一言で言うと小石(礫)が集まって固まった岩石です。堆積によってできたものや、火山活動によって出来上がったものなど、自然界の様々な要因によって長い年月をかけて作り上げられています。どのような経過で出来た石でも、小石が寄り集まったものなので、接点で割れやすい弱点があります。特に大き目の石が隣り合っているような場所では、尚更注意が必要になってきます。また、薄く、サイズの大きいものほど割れやすいのも気をつける点になります。

 

吸水について

先にも記述した通り「ブレッチア・ダマスカータ」は、礫岩の一つです。目には見えなくてもわずかな隙間が多く存在しています。屋外に於いては、天候によって濡れてしまう事があり、屋内でもキッチンやサニタリーなど水回りに使用する場合になんの処理もしないまま使用すると、水分を吸収してシミになる事があります。特に「ブレッチア・ダマスカータ」のようなベージュ系の石はサビが出る事もあります。水気のある所に使用する場合には、表面をコーティングして撥水できるようにしたものをお勧めします。

「ブレッチア・ダマスカータ」に適した製品

薄い柔らかい色合いは、どこにでも似合います。

カウンター、テーブルなどのトップに

大胆な柄の物もありますが、基本的に全体が薄い色なので室内に使う時に場所を選びません。鏡面に磨きあげられた「ブレッチア・ダマスカータ」のトップは美しく、エレガントな雰囲気を出してくれる良い素材ではないでしょうか。

 

床や階段に

ホテルや公共の建物に床材や階段の踏み板として使われることがあります。薄いベージュ系の色なので、広い場所に使われても威圧感は無いでしょう。同じような模様は一つとしてないので、柄の組み合わせ方次第で多様なイメージを作り出せます。大地の色を写し取った床は、安心感と安定感を作り出してくれるのではないでしょうか。

 

「ブレッチア・ダマスカータ」のまとめ

磨き上げた石の表面に現れる大自然の美しい模様と、昔の人々が時間をかけて作り上げた華やかな布の模様には、どこか似た雰囲気があったのでしょうか。この石を名付けた人は、地中深くに眠っていた岩石の断面を磨いて現れた美しさを目にした時に、ダマスク織のテーブルクロスが目に浮かんだのかもしれませんね。絹で作られたダマスク織と大理石の「ブレッチア・ダマスカータ」は、どちらも自然の贈り物を人の手で磨きをかけた生活空間を豊かにする素晴らしい素材ではないでしょうか。

2022年11月のしらべ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。