シャリフィ ハ ハウス(Sharifi-ha House)

「シャリフィ ハ ハウス」のご紹介

 

古い歴史のある街には、長い時間をかけて育まれた特有の文化を持つところがたくさんあります。アジアとヨーロッパの境目に位置するカスピ海沿岸にも伝統的な物事がたくさんあり、人々が暮らす家にもそれらが表されています。近年では利便性だけを求める傾向がありますが、地域性や土地柄によって培われてきたことには意味があると考える建築家が手掛けた家は、奇想天外とも言える建物です。「シャリフィ ハ ハウス」は、部屋が飛び出る建物です。

「シャリフィ ハ ハウス」の設計者

 

「シャリフィ ハ ハウス」のデザインや設計と仕組みを考案したのは、イランの建築家、アリレザ・ダガボーニです。1977年にイランの首都テヘランで生まれ、カスピ海沿岸の都市、ラシュトの大学で建築を学びました。その後更にテヘランの大学でも建築の研究を重ね、博士号を取得しています。大学を卒業してからの数年はいくつかの事務所で経験を積み、2007年に自らの建築事務所「ネクスト オフィス」を開設して本格的に建築家として活動を始めました。彼は、古い歴史のあるイランで新しい風を吹き込もうと考えていましたが、それは伝統をないがしろにすることではありませんでした。そして、伝統であっても疑問があり、新しい西洋建築をそのまま受け入れることでもありません。宗教建築ではない普通の人が住む家は、長い歴史の中で育まれたものがあって、気候や風土を踏まえた上での住みやすい工夫があります。彼が提唱する住宅は、伝統を取り入れて近代の西洋建築と融合する家です。また、より快適に過ごせるような工夫を考えて最新の技術も取り入れ、全く新しい、誰も思いつかなかった方法を生み出しています。彼のこのような考えは多くの人の興味を引き、建築家に授けられる国の権威ある賞や、ヨーロッパでの新しい賞を受賞しています。現在彼は、多くのスタッフを抱え、後進のための講義や出版物を出して、イランの近代建築をけん引しています。

「シャリフィ ハ ハウス」の所在地

 

「シャリフィ ハ ハウス」はイラン イスラム共和国の首都テヘランに建っています。800万人以上の人口を抱える大都市で、1,000m以上の標高がある高原に都市が広がっています。北にカスピ海、南にペルシャ湾とオマーン湾に挟まれたイランの北部に位置する内陸の街です。国名にもあるように大半の住民がイスラム教徒ですが、多様な宗教の教会や寺院もあり、西洋と東洋の文化が融合するところでもあります。5,000mを越える山々が連なるアルボルズ山脈が街の北側に聳え、その山々の向こう側にカスピ海があります。比較的乾燥した気候で、年間降水量も少なくなっています。夏は30℃を上回り稀に40℃を越えることがありますが、乾燥しているため夜間には気温が下がります。冬季には氷点下を大きく下回ることもあって、雪が降る日もあります。都市としての歴史は古く、いくつもの王朝が栄えては衰退していきました。その時々の王族が住むための宮殿も建設されて、現在もそれらの建物は残されています。観光資源にもなっていますが、博物館や美術館、公園としても活用されています。また、王族が楽しむ為のものから大衆向けのものまで、多くの劇場が建設されていて、現在も使われている所もあります。特筆すべき建築物としては、2007年に完成した435mのミラドタワーがあります。国内で1番高い搭ですが、最上階にあるレストランは世界最大規模の回転レストランです。

 

「シャリフィ ハ ハウス」の特徴

 

2014年に完成した「シャリフィ ハ ハウス」は、建設用地が狭かったことから設計者が新しい事を思いついた住宅です。地下2階、地上5階の内、上の3階分には動く部屋があります。街中に家を建てることは世界のどの国でも敷地に制限があります。「シャリフィハ ハウス」の建設用地は、奥行きは十分ありましたが、幅が少し狭かったようです。設計者が思いついたのは、部屋を回転させて建物の外に突き出せるようにしたことです。加えて、古い伝統的な邸宅のアイディアを現代の技術で、1つの部屋が夏でも冬でも心地よく過ごせるようにしました。建物の表側3分の1には、コンクリートで作られ、木材で覆われた箱のような回転する部屋が作られています。回転の方法は、劇場の舞台や自動車などの展示場で使用されている方法が使われています。夏は部屋が90度回転して半分ほどが外に出て、部屋の半分があった場所はテラスとして使用できます。冬は完全に閉じた状態にして寒い外気が入らないようにしています。閉じたときに室内が暗くならないように、建物の中央部が吹き抜けのようになって太陽光は上から差し込みます。同じく1階部分の外にはガラスがはめ込まれた床があって、地下の2階分に陽光を提供できるようになっています。

「シャリフィ ハ ハウス」のまとめ

 

「シャリフィ ハ ハウス」の名称は、シャリフィの家族の家と言う意味で、シャリフィとはペルシア語で「気高い」ことを表します。イランの古い邸宅には季節に応じた部屋があります。夏の暑い時には風を通し、日陰を作って涼しくなるようにできた「夏の居間」と、陽光を取り入れて、寒い外気が入らないようにした「冬の居間」と言う部屋が作られていた屋敷がありました。「シャリフィ ハ ハウス」は、先人の知恵と設計者のひらめきと現代の技術が融合した住宅と言えるのではないでしょうか。

 

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