パンツリー・トップ・キャビン(Pan Treetop Cabins)

「パンツリー・トップ・キャビン」のご紹介

 

北欧には多くの神話や世界中の人々を魅了する物語があります。その中の一つ、フィンランド人の作家であるトーベ・ヤンソンの作った「ムーミン」の物語は魅力的な世界観があります。その物語から発想を得た山小屋のような宿泊施設が「パンツリー・トップ・キャビン」です。

「パンツリー・トップ・キャビン」の設計者

 

依頼を受けて「パンツリー・トップ・キャビン」を手掛けたのは、ノルウェー人のエスペン・スルネビクです。1973年ノルウェー西部のリフェルケ地方で生まれた彼は、首都オスロの大学で建築を学びました。2011年に自らの建築事務所を開設していますが、10代から20代の頃に様々な経験を積んでいます。10代の終わりに地元にある庭に東屋のような建物を作る機会がありました。そこで彼は、ノルウェーの伝統的な建物の事やそれを作るための素材を知ることが出来ました。更に、20代の頃にも同じような経験を重ねることが出来、様々な知識と実践を身に着けることが出来ました。また、地中海のポンペイやローマ、南米のマチュピチュやペルー、自国の古い伝統を保ち続けている地区など、世界中の古代文明に触れる機会もありました。これらの経験は彼に多くの事をもたらし、建築理念を構築することに大きく貢献しているようです。伝統を重んじながらも新しい構想も取り入れていることは、彼の作り出す建築物に表現されています。彼の様々な研究は評価を受け、母校のオスロ建築デザイン学校で2009年から教鞭をとっています。他にも、トロンハイムのノルウェー科学技術大学で講師や各種の審査員も務めています。

「パンツリー・トップ・キャビン」の所在地

 

ノルウェー王国は、ユーラシア大陸の西に長く突き出たスカンジナビア半島の西側に位置する国で、スウェーデンと長い国境を接しています。「パンツリー・トップ・キャビン」が建設されているのは、南部国境に近いインラント郡(若しくは、県)のフィンスコーゲンと言う広大な自然保護区の森林地帯です。この地区で2番目に大きな街のリレハンメルでは、1994年に冬季オリンピックが開催されました。これは、夏季、冬季合わせても現在の所一番北で開催されたオリンピックです。この地域の経済は農業と林業が担っています。農業の生産量は国の20%ですが、林業は半分に近い、およそ40%の木材生産量を誇っています。以前はコバルトの鉱山も操業していましたが、現在は閉山して博物館や坑道の見学が出来る公園として整備されています。フィンスコーゲンは「フィンランドの森」と言う意味があり、16世紀の終わり頃から約100年の間にフィンランドからの移民に由来しています。フィンランドから焼き畑農業を行いながら移動してきた人々が、最終的にたどり着いたのがこの地域でした。森林を焼き払いながら農地を作っていたことで、当時は批判も多くあったようです。鉱山で使用する木材が必要となった事から焼き畑農業は禁止されました。現在は雄大な自然を満喫できる国の自然保護区となっています。


 

「パンツリー・トップ・キャビン」の特徴

 

北欧の習慣と北米の風習から着想を得た建物を具現化したのが、森の中に建つ「パンツリー・トップ・キャビン」です。木の上に秘密基地を作るのではなく、樹木を傷つけないように木と同じくらいの高さになるように作られています。約8mの高さに作られた小屋のような建物は、北米の先住民族であるインディアンの移動式住居「ティピ」の形から思いついたと、設計者は言っています。円錐のテントの形は、横からだと三角形に見えます。「パンツリー・トップ・キャビン」の居室は、簡単に書いた家の絵の屋根の部分だけのような三角柱を横にした形で、数本の鋼鉄製の柱の上に乗っています。この地域は季節によって強い風が吹きますが、風が吹いても大丈夫なように地下におよそ6mほど鋼鉄の柱が埋め込まれています。華奢に見える柱ですが、組み方も計算されていて実際はかなりの強度があります。部屋に入るために作られている螺旋階段は、網状の金属で覆われた円筒形で、古くからこの地域にあった火の見やぐらの形を取り入れています。家の屋根だけのような形の外壁は酸化亜鉛の黒い金属板で覆われています。屋内の壁は地元産の松材の板が使われ、温もりのある空間に仕上げられています。三角柱を寝かせた形の断面の部分は全面がガラス窓になっていて、森を見下ろす雄大な風景を味わえるようになっています。見た目に反して室内は様々な設備が整い、最大で6人の宿泊客がゆったりとくつろげる広さがあります。

 

 

「パンツリー・トップ・キャビン」のまとめ

 

ムーミンはトロールと言う北欧の妖精をモデルにしていると言われていますが、作者のトーベ・ヤンソンはムーミンを「存在しているもの」と言って、決して妖精とも動物とも言わなかったそうです。「パンツリー・トップ・キャビン」が建つ森の周辺には、ヘラジカや狼、オオヤマネコなどの動物やライチョウなどの鳥類もたくさん生息しています。童話の世界そのままのような時間を過ごせる事は、忙しい現代人には至福の時間と言っても過言ではありません。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。