セビリアのキノコ(メトロポール パラソル)Setas de Sevilla(Metropol parasol)

「セビリアのキノコ(メトロポール パラソル)」のご紹介

 

都市の中心地の再開発は様々な要因が重なり合って、なかなか計画通りには進まないことがよくあります。イベリア半島の南部に位置する都市では、中世後期からあった大きな市場を整備して、地下に駐車場を作ろうとした計画が持ち上がりました。しかし、地面を掘り進んで出てきたのは、古代の遺跡でした。たちまち計画は変更となり、遺跡の保存を兼ねた都市中心部にふさわしい建物を作る事になり、出来上がったのが「セビリアのキノコ(メトロポール パラソル)」です。

「セビリアのキノコ」の設計者

 

セビリアの中心部の再開発は建築競技会(コンペディション)で決まりました。そのコンペで見事優勝を勝ち取って「セビリアのキノコ」を実現させたのが、ドイツ人の建築家であり、アーティストのユルゲン・マイヤー(ユルゲン・ヘルマン・マイヤー)です。1965年にドイツ南部のシュトゥットガルトで生まれ、生まれ育った街の大学で建築を学びました。その後、当時のシュトゥットガルトが西ドイツにあったことからアメリカへの渡航も容易で、多くの著名な建築家を輩出しているアメリカの建築学校と、アメリカでも最古の部類に入る歴史ある大学で建築を学ぶことができました。1996年にドイツのベルリンで建築家としての活動を開始し、その時から彼はユルゲン マイヤー H.と名乗り、社名も同じ名称にしています。彼のデザインは有機的な印象を与えるものが多く、人の体と自然と技術が空間を作り上げているとして、たくさんの曲線を取り入れた建物が作り出されています。また、芸術家としての側面も持っているため、空間そのものも表現の中に組み入れられるインスタレーションの数々を発表しています。建築家であり、芸術家である事の利点として、あらゆる最新の素材を利用したオブジェなども創造し、多数の作品をドイツを始めとするヨーロッパはもとより、アメリカやアジアでも発表しています。現在は2人のパートナーを加え、3人で事務所を運営していて、複数の大学で教鞭も取っています。

「セビリアのキノコ」の所在地

 

「セビリアのキノコ」が建設されたのは、スペイン王国の南部に位置するアンダルシア州の州都、セビリアの中心部です。街の西側をグアダルキビル川が流れていることから、交易の拠点として古代ローマ時代より都市が建設されていました。この川は、イベリア半島を流れる川の中では5番目に大きく、大西洋岸からセビリアまで船舶で川を遡って来ることができます。その為、内陸でありながら、古くから港湾都市としての様相を持っている街として発展してきました。そのような街であるからこそ、歴史の中で様々な権力者に支配されてきました。支配者が変われば街の様子も変わり、セビリアは破壊と建設が繰り返されてきました。しかし、破壊を免れた建物も多く、世界でも最大規模の聖堂や、モスクなどの宗教建築や、宮殿、街を守るための監視塔などが残されていて、ユネスコの世界遺産に登録されている建物も複数あり、現在では人気の高い観光資源となっています。また、これらの建物や歴史は芸術家の感性を刺激したようで、この街はいくつもの小説の舞台となり、有名な「カルメン」や「セビリアの理髪師」など150以上のオペラの舞台となっています。他にも、国内で最古の部類にはいる闘牛場や、2年ごとに開催されるフラメンコのフェスティバルには世界中のダンサーが参加して盛大に開催されていて、国の内外から多くの人が訪れています。

 

「セビリアのキノコ」の特徴

 

「セビリアのキノコ」は、正式名称があるにも関わらず完成した直後から市民に「キノコ」と呼ばれています。地上から見た形状は、まさに森に生えるキノコのような形をしています。地上高は20から26mで、地下にある博物館と遺跡を守るために柱はわずかに6本だけとなっています。「セビリアのキノコ」は、ほとんどが木材を使用して建設されていますが、中央の2本の柱だけは鉄骨とコンクリートで作られています。地下には遺跡から出土した様々な遺物を納めた博物館があり、地上部は市民の憩いの場やイベントの為の広場になっていて、強い日差しを遮っています。2階にはレストランが入っていますが、この建物は歩道橋の役割も果たしています。上から見た形は、アメーバのような有機的な形で、周囲の建物よりわずかに高い位置に歩道があるので、曲線を多用した道は見晴らしの良い遊歩道としても使用されています。使用された部品は3,000個以上あり、木材はフィンランド産の白樺の1種が使われ、ポリウレタンと塗装で2~3mmの保護剤が塗布されています。デザインがこのような形になったのは、街の大聖堂と近くの公園に生えているイチジクの葉から思いついたと設計者は言っています。最初はコンクリートと金属だけで建設しようとしていましたが、柱の強度を考慮した結果、上部の傘の部分は木材を使用することになりました。結果的に世界でも最大規模の木造建築物となって、様々な賞賛を受けています。

「セビリアのキノコ」のまとめ

 

「セビリアのキノコ」の正式名称は、メトロポール・パラソルと言います。しかし、完成してすぐに市民は「ラス セタス」(スペイン語でキノコ)と呼ぶようになりました。下から見上げた形は、まさにキノコそのものです。大都市の中心部を覆う巨大なキノコは、出来上がるまでに様々な論争も引き起こしていますが、多くの賞を受けていることも事実です。市民に憩いの場も提供している「セビリアのキノコ」は、街の自慢の一つになっていて、訪れる価値のある場所にも挙げられています。

 

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