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オリーブグリーン(Olive Green)のしらべ
一般的な建築などに使われる石材の御影石と言うのは、地質学上はほとんどが花崗岩で火成岩の一種です。火成岩もいくつかの種類に分けられていますが、ここでご紹介する「オリーブグリーン」は片麻岩(へんまがん)と言う岩石です。磨くと美しい鏡面が得られることから石材としては御影石と呼ばれています。
「オリーブグリーン」の原産地
南アフリカ共和国の北部にある小さな町が「オリーブグリーン」の産地です。首都のケープタウンから約500km北上した所にあるスプリングボックという町です。この町は、北ケープ州と言うナミビアとの国境に近い州に属し、アフリカ大陸南部に広がる広大なカラハリ砂漠の南端に位置します。スプリングボックは、19世紀に銅の鉱脈が見つかった事からこの地域に作られた町です。周辺は一年の大半が乾燥しているので、植物はわずかな数しか生息していません。多肉植物のコーカーブーム(別名、震えの木)と言う木はこの地域だけで見られる植物です。しかし、北半球の冬に当たる時期にはわずかな降水もあります。雨が降ると、何もない荒れ地のような土地から一斉に植物が芽吹き、一面の花畑と変わります。フーハップ自然保護区に咲く様々な花は、この地域特有の種が大半で、他では見る事は出来ません。また、首都ケープタウンから隣国のナミビアへ続く国道が通っていることから、中継地点としての役割のある町となっています。
「オリーブグリーン」の特徴
「オリーブグリーン」は、種類の少ない緑色の御影石です。濃い緑の部分と若干薄い緑色の部分で柄が構成されています。緑色を引き出しているのは、石に含まれている様々なミネラル分の影響です。御影石の大多数は花崗岩ですが、「オリーブグリーン」は片麻岩と言う岩石です。主な構成鉱物は花崗岩と同じですが、石として出来上がる過程が違います。そして、片麻岩の一番の特徴は石が層を成していることです。お菓子のバームクーヘンの様に、濃い色と薄い色が交互に積み重なっています。その為、「オリーブグリーン」は切り出す方向で模様がガラっと変わります。そのまま切り出されると、御影石には稀な模様の平行に流れる線のような柄が現れて、これをラインタイプ(柾目)と言います。この柾目からみて垂直に切ると、フラワータイプ(板目)になります。フラワータイプは、その名の通り次々と花が咲くような、少し薄い緑色の塊が濃い緑の中から浮かび上がる感じの模様になります。しかし、このような層を作る石はキズが多く、層の部分で剥がれやすい弱点があり、若干の吸水も見られます。
表面の仕上げについて
基本的に御影石には表面を研磨した「本磨き仕上げ」と、表面の鉱物をバーナーで高温にして飛ばす「JB(ジェットバーナー)仕上げ」があります。
本磨き仕上げは年月が経っても光沢が落ちにくいため外壁などに適しています。JB仕上げは表面に凹凸があり、ザラザラしているので滑りにくく、床材などに適しています。JB仕上げにすると本磨き仕上げに比べて色味が薄くなります。
この本磨き仕上げとJB仕上げの両方を使用して、壁面や床面をデザインすることができます。
「オリーブグリーン」を取り扱う時の留意点
特性を踏まえて注意することがあります。
模様の違い
同じ時期に同じ採石場から採石された「オリーブグリーン」でも異なる石に見えてしまう事があります。石全体の色の濃淡に違いはあまりありませんが、見た目が全く違う二種類の模様があるため、使う場所や、追加で購入する時には注意が必要です。ほとんどの場合は、板目(ラインタイプ)、柾目(フラワータイプ)の表示があるので、これらも確認したうえで購入する事をお勧めします。
弱点があります
「オリーブグリーン」のように層をなしている石は、基本的に成分の違いから色の違いなどが現れます。従って、特に板目の場合は剥離が起こる可能性があります。また、キズが比較的多いことから吸水する確率も高くなります。鏡面加工の場合は、表面を保護する役割も含めて、撥水加工などのコーティングを施した物を使用されるのがよいでしょう。また、施工時や小型の石造品を移動する際には、比較的割れやすいので、ぶつけたり落としたりしないように注意してください。
「オリーブグリーン」に適した製品
オリジナリティある色と模様を効果的に使う
インテリア系の小物
様々な置物やちょっとした小物が作られています。フラワーポットと呼ばれる、直接花を植えるのではなく、植木鉢を中に入れて飾る物があります。緑の石がとても良く似合う製品です。また、様々なオブジェも作られます。お部屋の中や、庭を飾るよいアイテムです。一風変わった模様の小さな置物一つで、その場の雰囲気を効果的に高めるのではないでしょうか。「オリーブグリーン」のような緑色は、癒しの効果もあると言われているので、穏やかな空間作りの手助けもできるのではないでしょうか。
壁や床などのポイントに
「オリーブグリーン」は石材としては数少ない緑色の石であり、比較的濃い色合いをしているので、薄い色の石と組み合わせて使えば引き締まった空間が作れます。例えば、床面のモザイク模様の一部に使うと、よりスタイリッシュな感じになります。派手な色合いではありませんが、濃い目の色なので、マンションのオートロック操作盤やビルのエレベーターの入り口など、目立たせたい所に使用するのもよいでしょう。
「オリーブグリーン」のまとめ
学問上では御影石と言う岩石はありません。建築や芸術などに使われる、磨くと美しい鏡面が得られる石の多くを指す名称です。石英や長石、雲母など、ガラス光沢のある鉱物を多く含んでいるので、太陽光などの光が当たるとキラキラと美しく反射します。「オリーブグリーン」は、二通りの見た目が違う魅力となっています。違う二種類の煌めきを楽しめるのは、ちょっとした贅沢と言えるのではないでしょうか。
参考価格(㎡単価、消費税込、運賃別)
本磨き、ジェットバーナー仕上げ共
400角…18898円
2022年12月のしらべ
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