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イーグルレッド(Eagle Red)のしらべ
氷河に由来する多数の湖と、タイガと呼ばれる針葉樹の森が広がる北の大地から、灼熱の炎の色を持つ御影石が切り出されています。鷲の名を持つ産地から採石される、鷲の名を持つ燃えるような赤い御影石の「イーグル・レッド」をご紹介します。
「イーグル・レッド」の原産地
赤い御影石の「イーグル・レッド」は、北極圏に近い北欧の国で採石されています。フィンランド共和国の南部にある、バルト海に面したキュメンラークソ県にコトカの街があります。コトカとはフィンランドの言葉で「鷲」を意味します。フィンランド最大のキュミ川の河口にある三角州と本土からすぐ近くのコトカ島からなる街で、フィンランド湾に面した国内でも重要な港湾施設を持っています。19世紀には、製材を生業とする小さな町で、当時は港も整備されていませんでした。現在は木材と製紙業が経済の中心で、それらの輸出を船に頼るための港がよく整備されています。2008年に完成した「ベラモ」と言う海事センターは、この地域のランドマークであり、港湾整備の集大成ともなる建築物です。博物館や美術館、会議場やレストランなどが入った複合施設となっています。ガラスや金属を使った近未来的な外観で、内装は近隣の木材などを使用した温もりのある空間となっていて、建物自体も観光名所となっています。また、対岸のエストニアとの間にフェリーも就航していて、国際交流の一翼も担っています。
「イーグル・レッド」の特徴
「イーグル・レッド」は、濃い赤色の中に黒い粒子を含んだ中粒できめの細かい御影石です。濃い目のグレーの地から赤い結晶が浮かび上がる様な、透明感のある部分もありますが、全体的に濃い色をしています。しかし、バーナー加工などツヤ消しの加工ですと、色が薄くなるのでピンクや薄めの茶色に見えるようになります。花崗岩の赤い色は構成物質であるカリ長石(ちょうせき)の影響です。花崗岩の構成鉱物の大半は長石で、この長石にカリウムが含まれるものがカリ長石で、カリウムの含有量が多いと赤くなる性質があります。加えて、酸化鉄が含まれると更に赤から褐色に発色します。このようなミネラル分の含まれる量が多いと色も濃くなってきます。また、透明感を引き出すのは石英で、綺麗に結晶したものが水晶となりますが、普通は灰色に見える鉱物です。劣化や風化に強く、吸水率も低い良質の石が採石されています。採石場から積み出し港が近いため輸送コストも抑えられています。
「イーグル・レッド」を取り扱う時の留意点
お手入れやお掃除の時に注意したいこと
御影石は酸やアルカリ等の化学作用に比較的強い石材です。とは言っても、濃度の高いものが付着した時や、濃度が低くても長時間にわたり付着している場合は不都合が生じます。最近では希釈タイプの洗剤などが市販されていて、一般家庭でも高濃度の洗剤が置いてあることが増えてきています。適正に使用する場合は問題ありませんが、高濃度のものが付着すると短時間でも御影石にくもりやシミができてしまいます。特に「イーグル・レッド」のような色の濃い御影石の場合は、くもりが白っぽく見えてまだらになる事があります。お手入れは欠かさない方がよいのですが、適正な方法でお掃除して下さい。
色の雰囲気について
「イーグル・レッド」は赤く濃い色合いの石材ですが、深紅をしているわけではありません。基本的に石材の赤い色は少しくすんだ感じになります。自然が創り出したものなので、均一な色になる事もありません。また、切り出される時期や深さによっても色合いが変わる事があります。広範囲で使用される場合や、後で追加される時には、色の雰囲気が変わる可能性がある事を考慮した上で利用してください。
表面の仕上げについて
基本的に御影石には表面を研磨した「本磨き仕上げ」と、表面の鉱物をバーナーで高温にして飛ばす「JB(ジェットバーナー)仕上げ」があります。
本磨き仕上げは年月が経っても光沢が落ちにくいため外壁などに適しています。JB仕上げは表面に凸凹があり、ザラザラしているので滑りにくく、床材などに適しています。JB仕上げにすると本磨き仕上げに比べて色見が薄くなります。
この本磨き仕上げとJB仕上げの両方を使用して、壁面や床面をデザインすることができます。
「イーグル・レッド」に適した製品
濃い赤はインパクトが強いです。
屋外の石造品
記念碑やモニュメント、彫刻に使用されています。また、ビルの会社名を記した銘版や表札、ショップのネームプレートにも使われています。これらは目立つことが重要な役割の一つなので、「イーグル・レッド」の赤い色は華やかさも添えることもできる最適な素材ではないでしょうか。御影石が風化を始めるのは、少なくとも数百年の単位になるので、すぐに品質が落ちることもありません。
建材
「イーグル・レッド」単体でも壁や床に使われることがありますが、白や薄いグレーの御影石と組み合わせることで一段とスタイリッシュな空間を作り出せます。市松に組み合わせたり、モザイク模様の一部にして模様を描き出したりします。また、アクセントとして使う事によって引き締まったイメージも作り出せます。
「イーグル・レッド」のまとめ
イーグルは英語で「鷲」と言う意味です。原産地の名前を御影石に命名することは、この石が産出していることを、その地の人々が誇りにしている左証ではないでしょうか。美しい炎の色を秘めた御影石の「イーグル・レッド」は、様々な空間を彩る素材としてこれからも活用されていくでしょう。
2022年12月のしらべ
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