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十和田石(Towada Stone)のしらべ
世界には、途方もない大きさのたった一つの岩石が山を形成している事があります。世界で一番大きな岩石は、オーストラリアの西にあるマウントオーガスタスです。
このような岩を一枚岩と呼んでいますが、秋田県で採石されている「十和田石」も一枚岩の一つで、採石されている山は一個の「十和田石」から成り立っています。
「十和田石」の原産地
「十和田石」の採石場は、秋田県北部の大館市比内町にあります。
比内町は、2005年に大館市と合併するまでは、北秋田郡にある自治体の一つでした。町の南部にある薬師山から「十和田石」は切り出されていますが、山全体が一つの岩石で成り立っています。
この地域に人々が暮らしていた痕跡は、縄文時代に遡ることができますが、文献にこの地の名前が残っているのは9世紀頃が一番古く、「火内」と言う名の村が記載されています。
以前は複数の鉱山があって、金閣寺の建立にも金を献上したと言われる山があり、他にも銀や銅、石炭も採掘されていました。
この町の特産品として名高いのが「比内地鶏」で、薩摩地鶏や名古屋コーチンと並ぶ日本三大地鶏の一つとなっています。比内鶏は天然記念物に指定されていますが、食べる事が規制されているわけではありません。
しかし、希少な鶏であったために品種改良され、「比内地鶏」として流通できるようになりました。全国の飲食店などで「比内地鶏」を取り扱っていますが、本物の証として比内町は証明書を発行しています
「十和田石」の特徴
「十和田石」は、いわゆる商品名で学問上は緑色凝灰岩(りょくしょくぎょうかいがん)または、グリーンタフと言います。この岩石は、およそ6,500万年前の海底にあった火山活動によって降り積もった火山灰から出来ていると考えられています。
緑系の大理石として流通している蛇紋岩(じゃもんがん)にも含まれている、緑泥石(りょくでいせき、またはクロライト)によって緑色をしていることが、特徴の一つです。その色合いから「やすらぎの青石」とも呼ばれています。加えて、火山から噴出する軽石が混じっていることから、多くの穴が見られる多孔質(たこうしつ)の岩石であることも特徴の一つに挙げる事ができます。
この穴がある事で、水に濡れても滑りにくいと言う利点があります。石が乾いている時には白に近い薄い緑色の地に濃い緑の塊がいくつも見えます。
「十和田石」を水に浸けると美しい緑色になり、この石の本領を発揮していると言える状態になります。
保温・保湿機能
十和田石は無数の穴を持つ多孔質なので、浴室などでは水分を程よく吸着するので心地よい環境を作ります。多孔質な構造は断熱効果もあり保湿機能も合わせて持っています。
防滑性
多孔質である十和田石は水分を10%程度吸収します。 濡れても、石の表面と足の間に水の幕が出来ないので滑りにくく、水濡れのある浴室床でも利用できます。
防カビ・防塵機能
十和田石はカビが苦手なアルカリ性なので、カビや菌が繁殖しにくい環境を作ります。
遠赤外線放射機能
十和田石の持つ成分によって遠赤外線放射機能だけでなく、蓄熱機能もあります。
多孔質と石の組成により、冬は暖房により暖かく、夏は冷房により涼しく、省エネにも役立ちます。
消臭・シックハウス対策機能
十和田石は多孔質なので、悪臭が発生しても、多くの空間が吸着します。
水質浄化機能
水道などに含まれる消毒剤を多孔質構造の十和田石が吸着します。また、吸着した物質は分解機能により無害化します。十和田石は水質を浄化し、水にはミネラルが溶け込むので、 弱アルカリ性を示します。
「十和田石」を取り扱う時の留意点
多孔質であること
「十和田石」は小さな穴がたくさん開いている多孔質の石です。これは長所でもありますが、欠点にもなります。非常に吸水性が高いのですが、多孔質な為に渇きも早い特性があるので、通常の使用では不都合が発生する事はありません。
しかし、常に水気の多い場所や、湿度の高い場所で使用するとカビが生えたり、苔が生えたりすることがあります。その状態になると、普通のお手入れでは元の状態に戻すことは大変難しくなります。
浴室などに使われる石材ですが、このような事にならない為にもお手入れやお掃除はこまめに行ってください。また、金属製の物を置くと、金属のサビが付着して茶色のシミ状態になってしまいます。
これも染み込んでしまうと取れなくなってしまいます。美しい青い石に茶色のシミが付いてしまうと台無しになってしまいます。
金属製の物を置く時には、「十和田石」の上に直接置かず、下に受けを敷いて使われることをお勧めします。
酸に弱い
耐酸性の性質を備えておりません。酸洗いや酸性洗剤は絶対に使用しないでください。石表面が溶解するなどの症例が現れます。
凍害、雨だれに注意
浸透性の高い石材のために、寒冷地などでは凍害を受ける可能性があります。凍結の恐れのある場所でのご利用は注意が必要となります。
また雨だれも汚れが付着しますので、頻繁に清掃されることをお勧めします。
十和田石の欠点
十和田石の欠点として、大浴場の床や壁で、十和田石にカビが発生しやすいと言われる事がありますが、それは十和田石が原因ではありません。そのカビは十和田石の細かい穴の清掃を十分にしていない結果です。大浴場とかでは何も塗布せず十和田石をそのまま施工することをお勧めします。
保温、保湿、防滑、防カビ、遠赤外線、蓄熱、消臭、シックハウス、水質浄化など他の石材には見られない機能を沢山持っている十和田石は欠点が最も少ない石材と言えるでしょう。
「十和田石」に適した製品
浴室
浴室に石材を使うことはよくありますが、「十和田石」は数ある石材の中でも一番良いと言われています。切り出した「十和田石」を板状にして表面を平らにしただけの物を床材として使用されます。
この石は多孔質の為、とても滑りにくい利点があるので浴室にはぴったりの石材です。加えて、保温性も高いので、石材特有の足を載せると冷たく感じる事がなく、壁にも使うことでヒートショックの予防効果も期待できます。
「十和田石」の美しい緑色は水に濡れる事によって更に鮮やかになるので視覚効果も高くなり、リラックスタイムに最適な空間を演出できるのではないでしょうか。
雑貨品など
タイル状の「十和田石」を一枚から使うこともできます。鏡面加工した平らな表面の石をマウスパッドとして利用できます。また、たくさんの小さな穴が開いていることから吸音効果が高く、コンサートホールの壁にも使用されているので、オーディオボードとしても使えます。石材は絶縁体なので、ノイズも入らず、多孔質である為、振動も吸収してくれます。
とても柔らかい石なので加工が容易である上、美しい色合いも兼ね備えているので、アクセサリーや小振りの置物も作られています。
意外な使用法
オ-ディオボードの素材にも活用されています。これは多孔質の表面が、音を吸収する特性に目を付けたものです。また低音部の音質が向上することから、オーディオルームの壁面にも利用されています。十和田石は、音響周りでも威力を発揮するのです。
「十和田石」のまとめ
「十和田石」は石材としてだけでなく、様々な活用方法が見出されている石です。石材として利用できない端材などを粉砕したものは、土壌改良剤として近年注目を浴びています。
また、採石場のある地域の特産物である「比内地鶏」」の養鶏場にも利用されています。鶏舎に撒くことで高い消臭効果があり、「十和田石」の小さなかけらを食べる事で比内鶏の育成もよくなっているようです。採石が始まってからまだ半世紀ほどですが、「十和田石」はまだまだ様々な可能性の見出せる石材ではないでしょうか。
ブラタモリでも紹介されました。
参考価格(1枚単価、消費税込、運賃別)
ダイヤ挽き
150×150×15mm : 428円
150×300×15mm : 856円
200×200×15mm : 759円
200×400×15mm :1519円
300×300×15mm :1712円
400×400×15mm :3833円
150×150×22mm : 428円
150×300×22mm : 775円
200×200×22mm : 687円
200×400×22mm :1519円
300×300×22mm :1712円
300×450×22mm :2566円
300×600×22mm :4493円
300×900×22mm :6740円
400×400×22mm :4388円
400×600×22mm :6907円
原石対応寸法
330×440×970mm
2023年 9月のしらべ
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