RUCID有機農業大学(RUCID College for Organic Agriculture)

「RUCID有機農業大学」のご紹介

 

地元で生産された農作物を地元で消費する地産地消は、食の安全と生産者の意欲につながっています。建築に於いても同じことが言えるのではないでしょうか。建設地の周辺で入手できる素材と古くから伝わる手法で建設された建物は、長い時間をかけてその地の気候や風土を考慮した結果を伴う建物になります。「RUCID(ルシッド)有機農業大学」は、有機農業を伝えるために設立された学校で、校舎や付随する建物も自然環境を重視した持続可能な建築物です。

「RUCID有機農業大学」の設計者

 

「RUCID有機農業大学」は、2つの建築関係の企業と建設地の人々が作り上げた学校です。中心的な企画などはライトアース デザインズが手掛けています。この会社は、独立した事務所も持つ4人の建築家やエンジニア、デザイナーが共同で様々な問題を解決するために開設されました。ピーター・リッチは、南アフリカのヨハネスブルグを拠点として活動する様々な賞を受賞している世界でも有名な建築家です。マイケル・ラマージはイギリスの大学で天然の素材を研究している研究所を率いています。現在は石組みを特に研究していて、発展途上の国の住宅環境の向上にも力を注いでいます。アナ・ガトーは天然の素材を使用した建築の技術向上と、発展途上国の持続可能な建築に取り組んでいます。他にも彼女は、南米の住宅改善やアジアの災害復旧に於ける住宅再建にも携わっています。ティム・ホールは、オーストラリアにある建築と土木、構造工学や建築デザインを手掛ける事務所を束ねています。彼は、ヨーロッパやアフリカの学校で建築デザインの講義も行っています。建築現場の総合的な監督を行ったのは、ルワンダの首都カンパラに本拠を置くローカル ワークスです。このチームは、東アフリカの持続可能な建築を目指す、多岐にわたる専門家が関わる建築設計の共同体です。彼らは、東アフリカの地理や気候、社会環境や経済など多くの問題を解決するために活動していて、多くの困難があっても、それを言い訳にして質の低い建築物を作ることに妥協しない姿勢を持っています。

ピーター・リッチ(PETER RICH)

マイケル・ラマージ(MICHAEL RAMAGE)

アナ・ガトー(ANA GATÓO)

ティム・ホール(TIM HALL)

「RUCID有機農業大学」の所在地

 

アフリカ大陸の中央、東寄りにウガンダ共和国があります。「RUCID有機農業大学」は、首都のカンパラから西へ約70kmに位置するミティアナと言う街に建設されています。ウガンダは赤道が通る内陸の国ですが、アフリカで最大の湖であるヴィクトリア湖の北に位置し、他にも大小の湖が点在しています。アフリカを縦断する大地溝帯が近くにあることから、多様な地形が見られ、国の東部には火山もあります。内陸の国でありながら多くの湖と河川があることで、豊富な水資源と肥沃な土地が広がっています。このような自然環境で多種多様な野生動物が生息していて、国内には60以上の自然保護区や国立公園があります。赤道直下の地域ではありますが、平均の標高が1,000mを越える高原地帯なので、熱帯性気候の割には非常な高温にはなりません。首都近郊では、年間の平均気温が30℃前後で、降水量は年間を通して平均的な量になっています。ミティアナは地域の中心で、首都から西へ向かう幹線道路が通っています。街の南西にはワマラ湖があり、湖の周辺には湿地帯が広がっています。ワマラ湖は、この地域にあった古代の王国に属していた人々にとって重要な意味を持っています。また、絶滅危惧種を含む多くの生物が生息しています。

 

「RUCID有機農業大学」の特徴

 

「RUCID有機農業大学」は、1994年に4人の有志によって開校した有機農業の技術を教える学校です。当時は知名度が低く、少数の人々が細々と有機農業を実践していましたが、イギリスの団体から援助を受けて、2017年に新しい校舎や寮が完成しました。近年よく叫ばれる持続可能な建物を目指し、古くから受け継がれてきた建設地の建設技術と、地元の職人の手によって完成しました。建物の本体は、建設地で採取された土を固めて作ったレンガのようなブロックを組み合わせて作られています。圧縮ブロック同士を繋いでいるのは、同じ土で作られた漆喰のような材料が使われていて、漆喰が乾くと、ブロックと1体になって、とても頑丈になります。木材も使用されています。天井や強い日差しを遮るために設置された軒の下から縦に並ぶ桟には、近隣で伐採されたユーカリの木が使用されています。屋根は亜鉛メッキの板が使用されています。日光を反射して太陽熱をそらすことが目的の屋根板ですが、とても眩しくなることから、屋根の傾斜は緩やかになっていて、反射光が周囲に影響しないように考えられています。鋼鉄製のドアノブや窓枠は、修理が必要になった時にすぐに対応できるよう、地元で製造されたものが採用されています。

「RUCID有機農業大学」のまとめ

 

「RUCID有機農業大学」の「RUCID(ルシッド)」は、発展途上の農村共同体と言う意味の英単語の頭文字を繋げた名称です。新しい建物を建設することが決まった時に、有機農業を専門にした学校であることから、自然環境に配慮した建物を作ることが重要だと依頼されました。建設地で採取された土で作られた圧縮ブロックの分厚い壁と、熱を反射する屋根があるお陰で、寮の部屋はとても涼しいようで、赤道直下のこの地でも「寝室が寒い」と言っている学生がいるようです。「RUCID有機農業大学」の建設のために使われた地元の素材と古くから伝わる技術は、その地で快適に暮らすために受け継がれてきた先人の知恵と言えるのはないでしょうか。

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