上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY(Kamikatsu Zero Waste Center)

「上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY (ワイ)」のご紹介

 

使わなくなった建物や、老朽化して危険となった建物を取り壊すときには多くの廃棄物が出るのは当然と思われています。新しい建物を建設するときにも多少の廃棄物が出ます。それらを含む廃棄物は、焼却、若しくは埋め立てによって処分されていますが、それも限界に達している所が世界中にたくさん存在しています。近年ではゴミを減らそうと言う意識も高まっていますが、全ての人や企業が協力しないと、ゴミをゼロにすることは難しいようです。四国の山間部にある小さな町は、全国で初めてゴミをゼロにしようとする「ゼロ・ウェイスト」を宣言した町で、その中心となるのが「上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY」です。

「上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY」の設計者

 

「上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY」を手掛けたのは、東京に事務所を構える中村 拓志(なかむら ひろし)です。1974年に東京で生まれ、子供の頃は石川県の金沢市や神奈川県の鎌倉市と言った古都と呼ばれる街で育ちました。明治大学で建築を学び、卒業してすぐに日本の著名な建築家である隈 研吾の建築事務所に入社して3年間ほど実務を重ねました。2002年に独立して、NAP建築設計事務所を開設しました。都市計画などの大規模な構想から、家具のデザイン等の小さな企画まで幅広く手掛けていて、現在は複数の会社が所属するグループ企業になっています。彼は学生時代にはすでに建築デザインの賞を受賞していて、早くから才能を花開かせています。彼の建築に対する理念としては、人と自然に融合できる建築を目指しています。地域に根付いた文化や伝統を取り入れて、そこで古くから使われてきた素材を活用することを大事にしています。そのような事柄を踏まえたうえで、そこでしか作れない建物を作り出すことを目指しています。また、風の流れや水の輝き、陽の光が彩を添えられる作品が生み出されています。事務所開設から20数年の若い建築家ですが、すでに数多くの賞を授けられていて、いくつかの大学で後進のために教鞭も取っています。

「上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY」の所在地

 

徳島県の山間部にある勝浦郡上勝町(かみかつちょう)は、2003年に全国で最初にゴミの排出ゼロを目指す「ゼロ・ウェイスト」を宣言しました。その中心的な施設が「上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY」です。上勝町は、県庁所在地の徳島市から南西におよそ40kmで、四国を横断する四国山地の東に位置しています。県内で1番人口の少ない町で、町の面積のうち9割以上が山林で、その中の3割以上が杉林です。以前は林業が主な産業でしたが、後継者が無く、担い手の高齢化も進みほとんどが手入れもされない放置林と化しています。標高の高い山間部のこの町は平地が少なく、農業も古くから行われてきましたが、多くが棚田や段々畑でした。しかし、その田畑は現在では残すべき風景として全国棚田百選にも選ばれています。また、2006年に設立された「日本で最も美しい村」連合にも所属していて、全国各地の農村や漁村などと連携して活性化を目指しています。他にも全国に誇れる特産品を生み出しています。「葉っぱビジネス」と呼ばれるもので、日本料理に欠かせない彩を添える、木々の葉や山野草の葉を特産として流通させています。料理に必ず必要とされるものではありませんが、日本の古くからの伝統のようなもので、様々な料理を格段に引き立たせられることができ、季節の移り変わりを感じることもできる素材です。高齢者や力の弱い人でも従事できるこの産業は町の活力を上げています。

 

「上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY」の特徴

 

「上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY」は、廃棄物をゼロにすると宣言した町の理念に添って作られた施設です。建物を作るための資材の内ほとんどが廃棄される予定の物や、新しい資材であっても、その資材を作る段階で極力廃棄物が出ないように考えられています。建物の骨組みは建設地に豊富にある杉の木が使われています。木を角材にするとかなりの量の廃棄物や端材が発生しますが、丸太を使うとそれの発生が抑えられます。しかし、丸太は建設資材として使うには、伐採してから使えるようになるまでに乾燥のための時間がかかると言った短所があります。丸太そのものや、縦に3分割された木材が柱や梁に使われています。屋根は数少ない新品の材料が使用されていますが、これは火災などに対する防災の為です。軽量で錆などの腐食に強い、アルミニウムと亜鉛でメッキされたレンガのような赤味のある鋼板が使用されています。1番目を引くたくさんの窓やドアは、地域住民や企業などから供出された物が使われています。700枚以上の形も大きさも違う窓枠やドアは、1枚1枚大きさが計測されてコンピューターを使って組み合わせられています。屋内の床は、割れたり欠けたりして使えなくなったガラスや陶器を砕いた物が混ぜ込まれていて、見た目もよく、滑りにくい床になっています。上から見た「上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY」はセンターの通称である「なぜ(WHY)」を表す「?」の形をしています。大きく湾曲した部分は廃棄物の集積所になっていて、容易に45種類の分別ができるようになっています。

 

「上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY」のまとめ

 

2020年に完成した「上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY」より少し前に同じ概念で建設された建物があります。設計者が最初にこの町で手掛けた、レストランやビールの醸造所がある建物で、2015年に完成しています。その建物の建設に関わったことが「上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY」を手掛けるきっかけになりました。この建物は、様々な物を作る人、売る人、買う人全ての人に「それは本当に必要なモノですか?」と問いかけています。

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