「ESOホテル 」のご紹介
世界で一番不毛な土地が南半球にあります。アンデス山脈と太平洋の中間にある砂漠は、降水量が極端に低い地域です。
しかし、水分が無いことが幸いする研究もあるのです。
そんな過酷な土地で働く人々に憩いを提供しているのが、「ESOホテル 」です。
「ESOホテル 」の設計者
アウワー+ウェーバー・アーキテクテンは、アウワー・フリッツとカロル・ウェーバーが中心となっているドイツの建築事務所です。アウワー・フリッツは1933年ドイツの南西にあるテュービンゲンで生まれました。ドイツの大学で建築を、アメリカで美術を学びました。カロル・ウェーバーは1934年ドイツの西にあるザールブリュッケンに生まれ、ドイツの大学を卒業後フランスに留学しました。彼らは共に大学で建築やデザインの教鞭をとりながら、1980年に共同で開設した建築事務所の運営を取り仕切っています。設立当初はドイツ国内での活動が多かったのですが、21世紀に入ってからはヨーロッパの各国や中国などに活躍の場が広がってきました。2002年に「ESOホテル」が完成した後、2013年にはESOの本部も手掛けています。ドイツ国内に二か所のオフィスを構え、140名の優秀な若手建築家と様々なプロジェクトに参加しています。事務所の名称は何度か変えられていて、現在は2014年から使われている「アウワーウェイバー」となっています。
「ESOホテル 」の所在地
南米のチリ共和国の北部にあるアタカマ砂漠に「ESOホテル」が建っています。アンデス山脈と太平洋の間にある盆地状の砂漠で、南北は約1,000km、東西は平均160kmの細長い地域です。世界で最も乾燥した場所として知られ、40年の間降水量がゼロの地点もあります。このような不毛の土地ですが、湿度が非常に低く、標高も高いこの場所は天体観測をする上で最高の条件を持っています。地上からの天体観測を行う世界でも有数の地点で、ヨーロッパや日本の天文台もあります。また、ニッケルや銅などの地下資源が豊富なところでもあり、以前は、世界でも最大規模の硝酸ナトリウム(チリ硝石)が採掘されていました。最近は需要の高いリチウムの産出量が多く、埋蔵量は世界最大を誇っています。他には、ナスカほどではありませんが、多数の地上絵も存在しています。数千の地上絵が見つかっていますが、ナスカのような巨大なものは少なく、コンパクトな地上絵が多くなっています。それでも、「アタカマの巨人」と呼ばれる宇宙人のような絵は85mもの大きさがあります。
「ESOホテル 」の特徴
「ESOホテル」は、ヨーロッパ14か国とブラジルが共同で運営している欧州南天天文台のパラナル天文台のすぐ近くに建てられました。ESOとはEuropean Southern Observatoryの頭文字を繋げた名称です。ヨーロッパ各国による南半球の天体観測と研究を行う機関で、「エソ」と呼ばれています。標高約2,400mに建てられた「ESOホテル」の一番の特徴は、半分砂漠に埋もれているような、平たく見える建物です。若しくは、砂漠から出てきた要塞にも見えます。シンプルなデザインで、砂漠に溶け込むような赤褐色の色をしています。このような形と色には理由があって、過酷な気象条件である乾燥や強い直射日光に耐える為と、地震の多いこの地域の特徴を考慮した結果です。また、天文台の観測を邪魔しないよう、人工照明の明かりが漏れにくいような外観になっています。2002年に完成した「ESOホテル」は正確にはホテルではなく、天文台で働く研究者や技術者のための保養施設です。不毛な外部とは打って変わって、屋内には南国の植物が生い茂る庭や、プール、サウナ、図書館などの設備が整っています。アタカマ砂漠の風景が火星のように見えることから、「火星の下宿屋」と呼ばれる事があります。他にも「天文学者のオアシス」などの愛称もあります。
「ESOホテル 」のまとめ
残念なことに、「ESOホテル 」は一般的なホテルではなく、欧州南天天文台が管理、運営している施設なので、観光客などは泊まることはできません。特定の人達だけが使うことを許されているのです。
しかし、このような厳しい条件の下で働く人々に憩いの場を提供することは、とても大事なことではないでしょうか。
この「ESOホテル 」は映画にも使われたことがあります。
かの有名な「007」シリーズの中で、イメージが悪役のアジトとしてぴったりだったので登場させていたようです。
最後には爆破されたのですが、当然それは模型で撮影されました。
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